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水の亡霊  作者: マルコ
2/12

第2章: 沈黙の記録

翔太は、村の古い記録を掘り下げることに決めた。彼が見つけた日記には、川にまつわる恐ろしい事件が記されていたが、内容が不完全で断片的だった。それでも、何か重要な手がかりが隠されているに違いないと感じていた。


村の図書館にある日記や書物は、ほとんどが古びており、湿気を含んだ匂いが漂っていた。翔太はそれらの書物を丁寧に扱い、ページをめくるたびに、川の呪いに関する不気味な記録がちらつく。最初に目にしたのは、数十年前に起こった「川の大事故」のことだった。


その事故は、村の祭りの夜に起こった。村人たちは川で儀式を行っていたが、その儀式の最中、強い嵐が川に迫り、川の水が一気に増水した。数人の村人が流され、命を落としたと言われている。だが、それに続いて奇怪な出来事が村で続発するようになった。水の音が聞こえたと言って、村人たちが夜中に川に引き寄せられたり、川で流されそうになった者が助けを求めて奇声を上げたりしたという。


翔太は、さらに日記を読み進め、次第に一つの共通点を見つける。事故の翌年から、川に関連した異常な現象が頻発し、村の老人たちが次々と不審な死を遂げていた。そして、最も不気味なのは、村の若者たちの間で「水の声」が聞こえると言う者が増えていたことだった。


翔太は心の中で、これが単なる偶然ではないと確信していた。川の呪い、そして亡霊のような存在が、村の人々に何かを伝えようとしているのだ。


次の日、翔太は川に再び足を運ぶことに決めた。彼はただ見ているだけでは、この恐怖から解放されることはないと感じていた。川が示す何かに直接触れ、真実を暴かなければならない。


昼間の川は、夜の恐怖を感じさせるものとは全く異なり、静かで穏やかな流れを見せていた。しかし、翔太はその静けさの中に何か不自然なものを感じ取っていた。水の流れが微妙に変わったような気がしたのだ。


「今日は、何かが起きる気がする。」翔太は思わず口にした。その瞬間、川の水面が突然、激しく揺れた。そして、何かが水面に浮かび上がったのを見た。


それは、無数の手が絡み合ったような形だった。手が水面から伸び、まるで翔太を引き込もうとしているかのように感じた。翔太は足元がすくみ、全身に冷たい汗がにじみ出た。


「まさか…」翔太は息を呑みながら、その手を見つめていた。手は徐々に水面に沈み、再び静かな水面に戻ると、何事もなかったかのように川は流れ始めた。


翔太はその光景に深い恐怖を覚えながらも、川の流れに引き寄せられるような感覚を覚えた。この川には、何かがある。そして、それを解き明かさなければ、彼自身が呪いに巻き込まれてしまうことを感じていた。


その後、翔太は村の中で水に関する怪奇現象がさらに増えていることに気づいた。夜になると、水の音がいつまでも聞こえ、村人たちが次々と不安そうな表情で川を見つめているのを目にした。何かが近づいている。そして、その恐怖は彼を逃れることなく、どんどん彼の周りを取り囲んでいく。


ある晩、翔太は再び川のほとりに立っていた。その時、水面に浮かび上がったのは、ただの手ではなく、顔が見えた。それは、翔太がかつて夢で見た顔そのもので、死者の顔だった。


顔は無言で翔太を見つめていた。その瞳は、まるで過去の罪を訴えているかのようだった。翔太は恐怖とともに、もう一つの真実を悟った。川に沈んだ者たちの意識が、今も水面を通して村人たちに語りかけている。彼らは、翔太に呪いを解いてほしいと訴えているのだ。


「どうすればいい?」翔太は心の中で呟きながら、決意を固めた。川に沈んだ者たちの魂を解放する方法を、探さなければならない。



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