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ソレイオス教聖典  作者: なうかん
リディアの冒険
7/10

 ルキウス・ソレイオスとエルフ族の女リリシアの子ルシェル、ルシェルの子ルーク、そのルークの娘リディアの冒険。

 この時代、多くの国が戦争を繰り返し、迷宮は放置され魔獣による被害が拡大していた。そこで3代目ギルド長、ワゴン・バイエルは各国の王や長老と会談を重ね、全ての国が国内にギルド支部を設けること、その支部は国に属するのではなくギルドに属していること、ギルドの戦士達の自由を保障し戦争への参加の強制をしないことを取り決めた。

 ワゴンは元戦士で、その強さは一国の軍隊にも並ぶと評された男であったのでほぼ全ての国がこれに従った。

 リディアは15歳でギルド本部、つまりヴァルムントのギルドに魔法士として所属した。ヴァルムントはエクリプスが最初のギルドを作った地であり、リディアの生まれた街である。ヴァルムントはギルド本部の街だけあって、周辺には迷宮が複数あるにも関わらず、魔獣の被害はない。それどころか戦士が迷宮から持ち帰る魔獣の素材や魔石で潤っていた。

 リディアはエルフの血が流れているため精密な魔力操作が得意であった。そのため魔法士となった。魔法士とは近接戦闘から遠距離攻撃までの全てを魔法で戦う戦士である。簡単な魔法は全ての人に使えるが、攻撃魔法を使う者は多くはない。さらに接近戦すらも魔法で戦う魔法士には、神の恵みである魔法に精通し、精密な魔力操作が出来る者のみがなることができる。

 リディアの最初の仕事はヴァルムントに最も近い迷宮、ヴァルム迷宮の探索である。これは仕事とは言っても迷宮の上層のみを周回するだけであって、新人の戦士の実力を確かめつつ、新人に迷宮や魔獣とはどういうものかを教えるためのものだ。

 リディアに同行した戦士は、ランス、タリア、イヴァルの3人。ランスはギルドに所属して5年の若い短槍使い、タリアは老齢の魔法士、イヴァルは熟練の大剣使いである。

 ヴァルム迷宮の地上階層は大きな洞窟になっている。ここはギルドの戦士達が魔獣を狩り尽くしており、魔獣の姿はない。4人は第一階層に繋がる階段を降りた。先頭はイヴァル、続いてリディア、タリア、ランスの順である。迷宮は地下にあるが、なぜか明るい。魔力が何らかの作用を起こしているのだ。

 しばらく進むと膝くらいまでの大きさの蜘蛛型魔獣が出た。イヴァルが剣を振るうと蜘蛛は真っ二つになって死んだ。イヴァルに言われてランスが魔石の取り方をリディアに見せた。この蜘蛛は小さい上に使える部分はあまり無いので素材は取らなかった。それ以降一階層では魔獣に遭遇しなかった。二階層へ進むとそれなりに魔獣が出たがしばらく、リディアが手を出すことはなかった。ほとんどイヴァルの剣の一撃で死んだからである。少し大きめの蛇の魔獣が出た時、イヴァルはリディアに戦うよう言った。ここまでリディアは魔法を撃つことすらなかったのでもどかしさを感じていた。魔獣まであと十歩のところでリディアは魔法を放った。

「<火球(ファイアボール)>」

 うっかり火力を乗せすぎた<火球>は魔獣の全身を焼き、跡には煤けた魔石のみが残った。やりすぎである。だが3人がリディアの強さを認めるのには十分だった。この後からはリディアに迷宮を体験させるためではなく、本格的な探索となった。素材が取れなくなるほどの火力の攻撃は禁じられた。4人は昼時までに四階層に進み、そこで昼食を取った。五階層に出る魔獣は昆虫型のみでその殻は鎧や武器の素材になる。

 五階層では新しい巣がいくつかできているようで、頻繁に虫に遭遇した。倒しては殻を剥ぎ魔石を取った。五階層の途中まで進んだ時、いきなり四方から大量の昆虫型魔獣が飛来した。タリアは<土壁(アースウォール)>を発動させた。魔獣は現れた壁に飛ぶ勢いそのままに衝突し、さらに後ろから味方の突撃に挟まれて死ぬ。リディアは複数の<水刃>で虫を切り裂く。ランスもイヴァルも自分の間合いに入った虫を叩き落とし、突き刺し、斬っている。しばらくすると魔獣はかなり少なくなった。リディアは<水刃>、タリアは<石弾(ストーンショット)>で残りを全て倒した。大変なのは素材取りである。百匹以上の魔獣から素材を剥ぎ取り魔石を取った。倒した時の20倍ほどの時間をかけて素材を全て剥いだ。損傷が激しく、使えない素材もたくさんあった。それでも探索用に持ってきた荷物入れがいっぱいになった。探索はここで終わり地上へと帰った。

 階段を登る時タリアがリディアに話しかけた。

「リディア、<水刃>には水筒の水を使ったのかい」

 <水刃>を放つには水が必要なのだ。

「いいえ、<創水>を先にしました。」

「普通、<創水>は集中して時間をかけるものだろう。それをあの短時間でやって攻撃してたのかい。すごいねえ。あんたは強くなるよ。」

「ありがとうございます。でもまだタリアさんには到底及びませんよ。<土壁>は<創水>よりも時間がかかるはずなのに私の水より早く壁ができてました。」

「虫に気づくのが早かったのさ。いかに早く敵を見つけられるかが生きるか死ぬかを決めるんだよ。」

 あの生成速度はそれだけのものではないとリディアは思ったが地上に着いたので話はここで終わった。

 リディア達はギルドで素材を売却して報酬を得た。リディアの報酬は銀貨4枚、初仕事にしては高い方である。百匹もの昆虫の素材のおかげであった。

 リディアは家に帰って、寝た。

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