本音トーク?
そして、一通りの説明が終わり俺達は夕食を食べ、与えられた部屋で話していた。
「はぁ、なんでお前らと一緒なんだよ」
「仕方ないだろうが、じゃんけん負けたんだからよ。そもそも、じゃんけんしたのお前だろうが」
雫が鳴宮を見ながら呆れたように言う。
「お前ら、異世界の初めての夜なんだぞ、意外と落ち着いんてんだな」
俺が聞くと三人はシンクロしたように俺の方を見た。
「まぁな。確かに色々あったし訳わからないこともあったけど怖い、楽しいとかそう言う感情超えて〝無〟になったからかな。言葉も補助がなければ全くわからないし、帰る手立ても一日、二日じゃ見つからないだろうし。心が放心状態みたいな感じかな」
考えながら雫が言う。
感情が〝無〟になったか。
突然召喚されて、勇者とかそういうものはないけど、住み慣れた国、世界を一瞬にして離れなければいけない、そう、聞いたことも見たことも言ったこともないような別次元の世界へそれがどんなに辛くて、怖いか想像もつかない。
俺は死んでからこの世界に転生できた、今もただ故郷に帰って来ただけ。
外面的にはどうもなくても、内面はまだ現実逃避しているのかもしれない。
「何言ってんだよ香坂。俺達は選ばれた人間なんだぞ、嬉しいことじゃん。あ、そうかママに会いたくて寂しくて現実逃避してるってか?ウケるんだけど」
鳴宮が雫を嘲笑うかのように言う。
こいつはどうにもならない、楽観的に捉え過ぎている。
こういう奴は自分の力に溺れて死んでいく、そんなタイプに成り下がる。
「酷いな、鳴宮。そりゃ、現実逃避したくもなるよ。突然異世界連れてこられてさ訳わかんないじゃん。まぁ、僕はここに来て良かった分類の人間だけど、香坂は違うだろ。周りからモテて人気で美人と幼馴染でイケメンと友達で。そんな、陽キャには分かんないかも知れないけど。でも、僕は別にそのことに対して恨みつらみを持つつもりはない。それは、人それぞれだし、僕は今地球にいた頃より自分が生き生きしている気がするんだよ」
華深が珍しく饒舌に話す。
確かにこの世界に来て華深の雰囲気が変わったかもしれない。
「悠弥はどうなんだ?」
「えっ?俺?」
急に雫に振られたのでビックリした。
「あぁ、だってお前この世界に来てなんか変だぞ。急に一方向見つめて固まってるし、この城の内部を妙に行き慣れてるし。髪色はなんか変わるし。お前何者?」
「‥‥‥‥」
あまりに想像もしていなかった言葉をぶつけられ戸惑い口を噤んでしまった。
うまく誤魔化さないと。
俺がこの世界の出身者でこの国第二王子なんて知られたら面倒な事になりそうだし、そして、なにより、変に態度を改められるのが怖い。
今まで地球で一緒に幼馴染としていたのに急に離れられるのが怖い。
俺はこの世界でそれなりに高い身分にいる。
この国では王族、最も高いの身分にいる。
貴族は擦り寄りばかり、集まってくる子供は親の息がかかった操り人形ばかり。
この世界で信じられるのは極少数。
そんな中で雫達には一生、仲のいい幼馴染でありたい。
「俺が何者かって?分かってるんだろそんなこと。俺は雫達と一緒に異世界に召喚されてしまった不運な男、篠宮悠弥だよ」
「でも、香坂の言葉借りる訳じゃないけどおかしいよ篠宮。この世界に来てから、挙動不審っていうかなんか、こう、この世界を昔から知っていたみたいな感じ」
華深が痛いとこを突く。
流石はこの世界に来てなんか生き生きしている華深だ。
って、そんな事言っている場合じゃない。
誤魔化さなければ。
どうにか、苦しい言い訳でもいい、納得出来るような何か決定的な‥‥‥。
ああもう!思いつかない、くそっ!
「そんな訳ないだろ。挙動不審にもなるよ知らない場所に来て訳分かんないんだ。この世界を知っているって思ったのは気のせいだろ。華深も混乱してんだよ。きっと」
「‥‥‥そうか。そうだよな。俺達が混乱してるだけだ。この世界に召喚されたこと自体信じられないのに、この世界を昔から知っているなんてことあり得ないよな」
自分を納得させるように雫がに頷きながら言った。
「で、でも!混乱してたってだけじゃ説明が付かない。篠宮は何か隠してんだろ」
華深が食いかかるように言う。
「その根拠は?」
「それは‥‥‥、ないけど。でも、隠してないって証拠もないだろ!」
俺が聞くと、やはり食いかかるように言う。
今、言い争っても、結果は目に見えている。
「はいはい、二人ともストップ。今は、争っても結果はでないだろ。もし、本当に、悠弥が何かを隠しているんならいつか話してくれるさ」
雫が俺と華深の間に入り言い争いを止め、華深を宥めるようにゆっくりと優しく、でも、説得力がある声で言った。
「そこ、どうでも良いけど、早く寝てくれない。俺、眠たいんだけどお前らのせいで寝れないじゃん」
ようやく落ち着いて、部屋がシーンとしている時に鳴宮が欠伸をしながら眠たそうな顔を俺達に向けて言った。
「プッ、ハハハ。そうだな、もう寝なきゃいけないな。明日、何があるか分からないし」
あまりの突然のことに雫は笑いを堪えきれず吹き出しながら言った。
「そうだな、寝ようか。鳴宮のおかげでなんか馬鹿らしく思えてきた」
苦笑いをしながら華深が答えた。
「あ、でも、ベッド二つしかないから。お前らが三人で一つ使え。じゃあ、お休み」
「「「えっ?」」」
寝るということで纏まりがついた途端、鳴宮が言い、それに対して俺達はものの見事に声がハモって出た。
「いや、おかしいだろう。ここは平等に二人ずつが妥当だろうが」
「俺もそう思う」
「僕も同意」
雫が鳴宮に物申したてそれに俺と華深は乗っかるように賛同した。
「なんでだ。俺は鳴宮財閥の御曹司だぞ!もっと敬えよ」
「いや、異世界に鳴宮財閥の力は届かないだろ。この世界は、俺達の常識は通用しないんだと思うぞ」
雫が冷静に言い放つ。
「‥‥‥ッ!それでも、お前らは俺と同じだろ、異世界の住人じゃない。だったら通用するだろう、いいか、俺は一人で寝たいんだ!だからお前らは三人で寝ろ‼︎」
結局、鳴宮は一歩も譲らず布団に包まり寝てしまった。
「俺、そこのソファで寝るから、華深と雫はベッドに寝て」
「あぁ、でも、良いのか?」
「僕も流石にそれは気が引けるよ」
二人は申し訳なさそうに眉を下げた表情で聞いてきた。
「大丈夫だから。それに、そこのソファ、デカいから寝るのには十分すぎるくらいだよ」
「悠弥がそういうなら」
「でも、キツくなったらこっちに来いよ」
俺達はそのままベッドに入るとさっきの言い争いが嘘のように静かになり、みんなすぐに眠りに落ちた。
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