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転生なの?召喚なの?  作者: 陽真
第二章
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断崖の出会い③

「話し合いは済んだのかな?」

「はい。それで何か御用ですか?」

「警戒しないで欲しいな。僕はきみに危害を与えるつもりもないし、手玉に取るつもりもないんだからさ」

飄々とした態度でイエヤスさんは言う。


「そのことは心配していませんよ」

「本当に?まぁ、嘘だったとしても僕は構わないけど」

「それで、俺を呼んだ理由はなんですか?」

「まぁまぁ、焦らず。‥‥‥きみ、女神の加護持ってるよね?」

「‥‥っ!どうしてそれを?」

耳元で呟かれた言葉に俺は思わず息を潜めた。

「僕には見えるんだ。人のことが」

「俺が女神の加護持ちだからどうするつもりですか?この世界に女神の加護を持つ者はごまんといます」

「まぁね、それを言われちゃ辛いけど。けど、きみが隠しているのはそれだけではないよね?」

「‥‥‥‥」

「別にそれに関してどうこういうつもりはないよ。その代わり、僕のことも詮索しないで欲しい」

俺を自分の元へ呼んだのはこのことを伝えるためだったのか。

自らを詮索しない条件としていくともの隠し事をしている俺に目をつけたということなんだろうな。


「もし、俺が断ればどうするつもりですか?」

「全てばらす」

質問の答えは簡潔だった。

飄々とした様子ではなく、真剣味を帯びたそんな雰囲気だった。

俺たちの間の幾分かの沈黙が流れる。

イエヤスさんは俺の出方を伺い、俺はイエヤスさんの表情から言葉の真意を読み取ろうする。

「‥‥‥分かりました。でも、少しだけ譲歩してもらいます」

「具体的には?」

「俺の質問に答えてください。この質問に対する解答は要約して俺の友人に伝えます」

「それはきみが一方的に利益を得るようだけど?」

「いいえ、あなたが不利になるような答えは秘密にします」

「それを信じろと?」

「はい」

俺の真意を見極めようとしているのかじっと俺の目を見つめてくる。


「きみの発言が馬鹿げていることは分かっているようだね。今きみが言っていることは譲歩ではない。僕の不利益を誘うものだ」

「はい、確かにそうかもしれません。しかし、俺の質問に、あなたが解答を拒否した場合は敵とみなします。それでも良いのですか?」

イエヤスさんが俺の秘密を握り、脅すような行為をした理由、それは‥‥俺を引き止めたいのだろう。

具体的にどうしてか、それは分からないけどそんな気がする。


「‥‥‥僕がきみとの繋がりを作りたいということに気がついているみたいだね。詮索はして欲しくないけど‥‥‥きみとはきっと繋がっていなくてはならない」

「それはどういう‥‥」

「ハルヤ様、大丈夫ですか?」

意味不明なことを呟いたイエヤスさんに聞き返すがちょうど俺の帰りが遅く心配したナーマが声をかけてきた。


「心配しているよ。きみの‥‥側近くん‥‥かな?」

「‥‥ナーマこっちは大丈夫だ!そこで待っていてくれ」

俺の正体を知っているからこそ、ナーマが側近だとわかる言葉に俺は若干動揺しつつ、心配そうに見つめるナーマに声をかけた。


「はぁ、上手く逃げられちゃったか。話を逸らす絶好の機会だったんだけどなぁ」

残念そうにイエヤスさんは息を吐いた。

「俺と繋がっていなくてはならないってどういうことですか?」

「さぁね。けど、これだけは覚えていて欲しい。とりあえずの間だけ僕はきみの、いや、きみたちの味方をすることにした。何かあったら僕の名前を呼んで。呼んでくれたらくるから」

「どうして、そんなことが」

「秘密」

イエヤスさんの言葉の真意が全く掴めずにいたところに、名前を呼んだら来る、という約束にどうしてそんななことが出来るのかと聞こうとすると途中でイエヤスに遮られてしまった。

簡潔に一言で。


「まぁ、ともかく、僕がここに留まる理由はないかな。偶然だったとはいえ、きみに出会えた。僕の目的は達成されたも同然だ。しばしの休暇をこんなところで潰すわけにはいかないからね」

そう言ってイエヤスさんはゾウもどきのナオトラに跨り、空へ羽ばたこうとする。

「あの、俺の質問に答えてください」

「分かった。良いよ、正し二つまでね。何でも聞いて」

「あなたは異世界の、地球の住人だったんですか?」

「そうだよ。いや、正確には僕は地球の住人だよ、今でもね」

「えっ?」

イエヤスさんの思いもよらぬ発言に俺の脳は理解が追いつかなかった。


この世界にいるということは転生者か転移者の可能性が高い。

限りなく低い可能性はこの世界の住人ではあるが、なんらかの方法で地球と関わっているか。

これらの可能性しかないのだ。

しかし、これらは全てこの世界の住人ということを仮定している。

転移者にしてもだ。

だからこそ、今での地球の住人だということに対して理解ができなかった。


「理解が追いついてないみたいだね。僕としては好都合だけど。あと一つは?」

「‥‥‥あなたの能力は?」

「随分と深いところを聞くんだね。何でもと言ったからには答えるよ。僕には大した能力はない。鑑定と地球から動物を呼び出すことくらいさ」

「本当に?」

「おっと、その質問には答えられないよ。きみが僕に聞けるのは二つまでだからね」

「はい、か、いいえでもだめとかないですよ」

「だめ。これ以上は話さないよ」

徹底して二つまでの質問にしか答えないイエヤスさんに抗議をしようとするが、意味はなかった。

「分かりました。これ以上の質問はしません。でも、いずれしっかりと話してもらいますから」

「いずれね。じゃあ、僕は行くことにするよ。‥‥そこのお嬢さんと騎士くん!じゃあ、またどこかで!」

「‥‥おいっ、待てっ!」

「待ちなさい!逃げる気?卑怯だわ!」

イエヤスさんが羽ばたく前にナーマとヒマリに別れの挨拶を言う。

二人は突然の言葉に動揺しつつも、引き留めようと声を張り上げた。


「逃げないよ。いずれまたきっと相間見えるから。だから、その時まで待っていてね」

「あ、イエヤスさん!いつかきっと正体を教えてもらいますから!」

「その時がくれば分かるさ。じゃあね!」

俺の言葉に笑いながら返すとイエヤスさんは空の彼方へ飛んでいった。

結局、彼が何者で、何の目的で俺に会いたかったのか、繋がりを作りたかったのかは分からずじまいだったけど。

いつか、また会えるという言葉を信じよう。


「ハルヤ様、お怪我はありませんか?」

「何か痛い思いをしていない?」

「大丈夫。何もされてないよ」

二人の心配に微笑んで返すと、安心したようにホッと胸を撫で下ろしていた。

「そう言えば、レイト遅いね」

村へ戻ったはずのレイトが遅いことを気にしていると、森の奥からカサカサという音が聞こえてきた。

「みんな~、村長連れてきたよ~」

「レイト!」

「お、お、皆そこにおるのか?」

森の中から出てきたのはレイトとレク村の村長だった。

名前は‥‥‥だめだ、思い出せない。

急いできたと分かるくらいに息をみだしていた。


「村長!来てくれたんだ」

「謎の生き物が現れたそうじゃないか。その生き物はどこじゃ」

「それが———」

レイトが村長を連れてくるまでにあった事を簡潔に説明をする。

「すみません。村長、せっかく来ていただいたのに」

「気にするでない。しかし、異界の生き物とな?」

「はい。ここに来た人物が異界の生き物を連れていました」

「ふむ。この事は国に報告をあげるべきかのぉ」

俺の説明に思案するように村長は唸っていた。


「では、俺からも陛下に報告をあげておきます」

「ナーマくん、そうか、きみは第一騎士団所属だったのぉ。それでは頼めるか?」

「はい。この事について詳しいことを聞きたいんじゃが、良いか?」

「もちろん」

村長の言葉に俺たちは村へと移動し始めた。


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