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転生なの?召喚なの?  作者: 陽真
第二章
26/36

過去と現在

俺たちは王城を出て、念願の街へ来ていた。

それぞれ行きたい場所を護衛に尋ねると、流石は知り尽くしていて、おすすめのところへそれぞれを案内したので、俺たちは各々好きなところへ行くことになった。

‥‥‥そう言えば姉様見かけなかったな。


「ナーマ、街の様子はあまり変わってない?」

「そうですね。ハルヤ様がいた頃とほとんど変わっていませんよ」

俺とナーマは目的地も決めず街をぶらぶらしていた。

そもそも、絶対に行きたい場所はなくてただ俺がこの世界から地球へ行っていた五年間の間に何か変わったのか、それを知りたかったのだ。

「そうなんだ。あ、メイファお婆さんは元気?」

「元気にしてますよ、それはもう元気すぎるくらいに。この間、第二師団のヘルプに入った時なんか盗み食いしていた猫を追いかけてましたよ」

ナーマはその時のことを思い出し、笑いながら話してくれた。

「相変わらずか」

メイファお婆さんというのは街の名物お婆さんだ。

確か俺がここにいた時は七十五歳ぐらいだったから、御歳八十歳近くになるはずだ。

メイファお婆さんには二人の孫がいてよく、メイファお婆さんの家に行っては遊んでもらっていた。

優しくて、お転婆なお婆さんは街の皆んなから愛されている。


「そうです、ハルヤ様」

「どうした?」

「目的地を決めていませんでしたよね?」

「うん。特に行きたいところは思い当たらないし」

「でしたら、メイファお婆さんのところへ行きませんか?」

ナーマの提案に俺の心は一人盛り上がっていた。

メイファお婆さんに会えるのがすごく嬉しい。

覚えていてくれているか、少し不安ではあるけど会えるものなら会いたい。

‥‥けど、あの時会っていたのはこの国の第二王子のハルヤ・シーリスであって異世界から召喚された篠宮悠弥ではない。

本当に会っても大丈夫なのだろうか。


「———ヤ様、ハルヤ様!」

「え?」

「大丈夫ですか?」

「あ、うん。‥‥‥メイファお婆さんのところへ行くのはやめておこうかな」

「宜しいのですか?」

立ち止まった俺をナーマは心配するような表情で俺を見る。

「今の俺はメイファお婆さんの知っているハルヤ様じゃな無いからな」

「‥‥そうですか。ハルヤ様、お考えを否定してしまいますが、やはり会われるべきです」

「どうして?」

「確かに今のハルヤ様はこの国の第二王子ハルヤ・シーリス殿下ではありません。ですが、それがなんですか?違うのなら今のハルヤ様のままで会われればいいではありませんか」

ナーマがそんな事を口にするとは思っていなかったので、反応に戸惑ってしまう。


「でも、今までのように接することが出来ない」

「それでいいじゃないですか。先ほども言いましたが、今のハルヤ様でいいんです。今までと同じように接することが出来なくても、メイファお婆さんとの関係は変わりませんよ。‥‥ハルヤ様が第二王子の立場として行きたいというのならば止めはしません」

「‥‥‥なんか変わったな」

俺の知っているナーマは少なくともそんな事を言うタイプではなかった。

何も発言しないと言うことではなくて、人に対してその人の考えを肯定するタイプで覆そうとはしなかった。

今のナーマが嫌なわけではないけど、急な変化に頭が追いつかない。

「変わったのはハルヤ様ですよ。俺の知っているハルヤ様は何事にも突っ込んで行くタイプで、それが困難かもしれないと分かっていても、行動されていました。俺はそんなハルヤ様の事をお護りしたいと思ったんです」

「ナーマ‥‥‥‥」

今まで抱えてきた想いを全部吐き出すようにナーマは言葉を出す。


変わったのは俺か‥‥‥。

自分ではそんな気はしない。

でもわかるのは、確かにあの頃は転生して魔法があって、何もかもが未知で仕方がなかったのに、『異世界渡り』で地球に行って、この世界にまた戻ってきた時には、雫や絢香、地球から共に召喚された人たちに正体がバレないように、そして第二王子のハルヤ殿下だと周囲に悟らせないように大人しくなっていたのかもしれないな。

それがもし微々たる変化でも、この世界で誰よりも一緒に過ごしてきたナーマにとっては大きな変化だったとしても不思議ではない。


「ごめん、ナーマ。俺は慎重になっていたのかもしれない」

その場で頭を下げるとナーマはあたふたする。

「あ、あ、頭をお上げください。俺の発言は今のハルヤ様の置かれている立場を無視したものでした。どうか忘れてください」

「いいや。大事なことに気付かされた感じがする。メイファお婆さんのところへ行こうかな。今の俺の姿で」

空を見ながら、色々な事を思いナーマに言うと、ナーマは嬉しそうに笑った。

そして、目的地も決まり、メイファお婆さんの家へ向かう。


「ハルヤ様、ヒマリとレイトの事を覚えてらっしゃいますか?」

「もちろん。メイファお婆さんの孫で、お転婆な二人だろ」

「はい。その二人なんですけど、今、王立学園に通っているんですよ」

「それは凄い!平民枠での入学って事は‥‥相当勉強したんだよな」

ナーマの話に思わず大きな声が出てしまい、慌てて声のボリュームを下げるとメイファお婆さんの孫二人に感心する。


王立学園はシーリス王国最大の学術機関だ。

魔法や剣術、言語学など様々なジャンルの学問を学べる。

けど、入学生の過半数が王侯貴族で平民出身者は殆どいない。

それは王立学園にある平民枠という物のせいでもあり、平民枠というのは名前の通り平民出身の者専用の受験枠だ。

その枠は王立学園の定員八百人に対し、たったの五十枠のみ。

それでも毎年、定員枠の約二倍から三倍の人が受験をするらしく、平民枠から王立学校に入学するには相当の学力や魔法、剣術などの才がなければいけない。


「はい、二人とも頑張っていました。俺も微力ながら勉強の手伝いをさせてもらいました」

「そうなんだな。そう言えばナーマは王立学園へは通わないのか?確か、入学基準年齢は十三歳以上だったはずだけど」

「俺は専属の家庭教師がいましたし、十歳の頃にはハルヤ様の騎士としての任に就いていましたので、そのまま騎士師団加入を」

「学園へ入学しようとは思わなかったのか?」

「そうですね、ハルヤ様が入学せれるのなら、学園へ入学を希望したでしょうが、実のところ剣術に関しては父に指南してもらった方が色々と学べましたので」

ナーマはそう笑いながら言う。

確かに学園にも剣術に関して学べるけど、王国の騎士団長の父に比べればそりゃな。


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