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転生なの?召喚なの?  作者: 陽真
第二章
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発見

夕食が終わり俺たちはそれぞれの部屋でのんびりしていた。

「サーナ様ってあんなキャラだったんだな」

「そ、うだね」

雫が意外そうな顔をしながら言った。

俺は昔の幼い姉様を知っていたからなんか兄様より俺に対する内面が大人っぽくなっていたと思ったら、そうでもなかったようだ。

姉様が本当に僕が目的じゃないのならとんだおてんば娘だ。


「でもさぁ、王族だからって自由に外にも出れないとか、なんか辛そうだよな」

「え?」

雫はフッとしたように言った。

その言葉に俺は思わず聞き返してしまった。

「え?って‥‥。だってさ俺たちが地球にいた頃は好きに外出が出来てただろ。行きたい場所に行って好きなことして。それに電車とか車とかいろんな交通手段があったからさ行きやすかったしな。けど、この世界ってそういうの発展してないし、魔法を使ったとしても空を飛ぶとか一瞬で場所を移動するなんて、普通の人にはそうそう無理だろ」

俺は雫のことを聞きながら今までのことを振り返っていた。


この世界に転生した時、俺は前世の記憶を持っていたし、この世界でちゃんとハルヤ・シーリスとして生活していたのはほんの僅かで、王族が好きに城下に行き、好きに遊ぶっていうことしたことがなかった。

だからか姉様と父様の話を聞きながら理不尽だと思いながらもそれ以上の感情は生まれては来なかった。

辛いとか、悲しいとかそういう感情はなかった。


「「え?」」

感傷に浸っていると、ベッドの方から大きなお腹の音がした。

「鳴宮の腹か?」

「それ以外になくない?」

「僕って可能性はないの?」

「「うわぁ!」」

二人でコソコソと言っていると、背後から突然、華深の声がし、俺たちは二人揃って叫んでしまった。

さっきから大声出してばっかりだ。


「か、華深‥‥‥。急に声をかけないでくれ。驚いて心臓止まるかと思っただろ」

「そんなに?でも、心臓止まったらすぐに蘇生魔法試しまくろうかな。あ、一応言っておくけど効果あるかは分からないから」

雫の絞り出した言葉に華深は何のことないように言った。

「魔法って言えばさ華深、夕食までずっと魔法の勉強してたのか?」

「あ、うん。楽しかったよ。ジングリアさんとめっちゃ気が合うから話しすぐちゃってさぁ~」


「悠弥、お前も華深と一緒に魔法勉強してんだろ?どうだ?」

「どうって?」

「いや、楽しいのかなって。お前、まったく話さないだろ。二ヶ月も経ってるのに」

雫の質問にどう返すべきなんだろうか。

魔法の勉強は確かに楽しいが、この世界に転生して、過ごしたい十年間の間にこの二ヶ月で習ったことはすべてすでにし終えている。そのためかジングリアが俺を見る目は少し怖い。

「う~ん、楽しいよ」

「そうか?ならいいんだけど」

これ以上喋ると、感情を華深に悟られる可能性しかない。

出来るだけ、簡潔に感情を極限まで抑えて話すと、雫は少し不思議そうな顔をした。


「お前らなんか食べる物持ってないか?」

三人で話していると、鳴宮がか細い声で聞いてきた。

多分空腹に耐えきれなくなったんだろう。

にしても鳴宮の格好‥‥‥。

布団に包まりなんか引きこもりみたいだ。

「いや、持ってるわけないだろ。不貞腐れて夕食を食べなかったお前が悪い」

「うるさいっ!不貞腐れてなんかないっ!」

鳴宮はくいかかるように雫に言うが、全く威勢がない。


なんか見ているのが忍びなくなってきた。

「俺、誰かに頼んで来るわ」

「えっ?でも‥‥普通にあいつのせいだろ。悠弥が行く必要ないだろ」

「いや、なんかな、可哀想になってきたというか、なんと言うか」

俺の歯切れ悪く言うのを見ると、雫は深いため息をした。

「分かった。でも、本当は悠弥がしなくていいことなんだからな」

「分かったって」

念を押すように言う雫に若干苦笑しながら頷き、俺は部屋を出た。


♦︎♦︎♦︎♦︎


「えっと、厨房に行けばあるかな」

俺は部屋を出て食材があるであろう場所に見当をつける。

「ハルヤ?」

「えっ?あ、兄様」

厨房に向かおうと、歩いていると後ろから兄様に声をかけられた。

「どうしたんだい?あっ、何か困りごと?なんでも相談してくれていいんだよ」

兄様はニコニコと笑いながら俺の顔を覗き込んで来る。


「じゃあ、えっと、なんていうか‥‥‥」

俺が部屋であった一部始終と俺がここにいる理由を兄様に話すと、少し驚いた表情をしたが、またニコニコとした顔に戻った。

「そうなんだね。確かにガストン騎士団長は厳しいからね。あ、でもね、ここだけの話、かなり子息を溺愛してるんだって」

「えっ!子息ってナーマのことですよね?」

「そう、意外だよね。でもこの話は内緒だ」

兄様はちゃめっ気に言った。


「分かりました。二人だけの秘密です」

「ふ、ふ、二人だけの秘密‥‥っ!なんたる幸運でしょう。女神ルルーユの寛大なる計らいのものでしょうか」

俺が言った言葉がまずかったのか、いや、間違いなくまずかった。

二人だけの秘密なんてワード、兄様には絶対に言ってはならないものなんだよな。

兄様は俺が言った言葉を何度も復唱しながら、天を仰ぎ悶えていた。

王太子の威厳も何も無いな。


「に、兄様。戻って来てください」

流石に誰かに見られてはまずいと俺は慌てて兄様を現実に引き戻した。

「済まない、つい。それよりハルヤの用事は良いのかい?」

「あっ!」

俺は兄様の疑問に大事なことを忘れていたのを思い出した。

鳴宮にグチグチ言われそうだな。

「では兄様、俺はこれで」

「あ、ハルヤちょっと待って」

「はい?」

「今から鐘が二回鳴る頃に〝あの場所〟へ来てくれるかい?」

「はい。分かりました」

兄様の誘いに俺は微笑みながら返事をした。


兄様が言った〝あの場所〟というのは団欒の間のことで、誰かに聞かれてはまずいと父様がこの言葉を言うことを決めた。

兄様と言っている時点で手遅れな気もするが、誰も聞いていないことを祈ろう。

雫たちがいる時は普通に異世界の王太子として接しているから大丈夫だとは思うけど。


「じゃあ、また」

「はい。また」

兄様が手を振りながら俺と逆方向に歩いていくのを見ると、俺も厨房へ歩くのを再開した。


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