力の測定③
「次の者」
測定が終わり俺が、戻るのを確認すると父様は次の人を呼んだ。
「雫、次でしょ?」
戻ると、絢香が雫に聞いていた。
「あぁ。じゃあ行ってくるか」
「うん。期待しないで待ってるからね」
「いや、期待してくれても構わないぞ」
「ほら早く行って」
絢香と雫はまるでコントのように会話をする。
その様子に母様は笑いを堪えているようだった。
雫が絢香とのコントを終え水晶に触れた。
名前 シズク・コウサカ
レベル 7
年齢 十六歳
種族 人族
職業 ?
魔法属性 水
固有スキル 全言語理解 水龍刀
加護 女神ルルーユの加護 刀剣加護
称号 女神の寵愛を受けし者 異世界人
転移者 刀もたらし者
雫の力はみんなの想像の斜め上を行った。
これまで鳴宮を除いてそれぞれが女神ルルーユからとんでもない加護や称号、スキルを貰っていたが、雫のは少し違った。
「刀をもたらし者か。刀とは一体?」
この世界に日本刀と呼ばれる片刃で反りがあり、薄くて細身の刃は切れ味が良く、反りを活かすことで斬ることに特化しているものはないが、 両刃で直刀で叩き斬ることを目的としているため重量があり肉厚な刀身を持つ西洋剣は存在する。
地球に、日本に住む住人からすればお馴染みのものかもしれないがこの世界の住人からすれば訳がわからないものだ。
「え?刀って日本刀だろ?あれ、普通の剣と何か違うんだろ?」
「う〜ん、なんだろね。真っ直ぐか、反ってるか、とかじゃないの。先生わかりますか?」
雫は不思議そうに絢香に聞くと、絢香はほとんど答えを言っているがどこか不安そうだった。
「先生もよく分からないわ。そもそも日本刀と西洋剣の違いなんて考えたことないもの」
先生はごめんね、と言いながら絢香の質問に答えた。
「悠弥は分かるか?」
「え?なんで俺?」
「なんでって。お前こういう雑学みたいなの得意そうじゃん」
会話を見守っているといきなり雫が聞いてきた。
雑学が得意そうって‥‥‥。
まぁ、前世での知識とかあるから多少は知ってるけどさ〜。
「で、知ってんの?」
「ん〜、俺も詳しくは説明できないけど、多分、日本刀は片刃で反りがあり、薄くて細身の刃は切れ味が良く反りを活かすことで斬ることに特化しているけど、西洋剣は両刃で直刀で叩き斬ることを目的としているから重量があり肉厚な刀身を持ってるものだったはず」
「「「「‥‥‥」」」」
俺が頭から引っ張り出した知識で雫の質問に答えると聞いていたみんなは口を開けポカンとしていた。
「え、どうした?」
「め‥‥」
「め?」
俺がわけが分からず、みんなを見ながら呼ぶと雫が絞り出すように言った。
「め、めちゃ詳しいじゃんか!何が詳しく説明できないけどだ。この上ないほど詳しいんだけど?」
雫は俺に向かって捲し立てるように言うと、周りもそれに同調するかのように頷いていた。
「あ、ありがとう?」
なんで返したらいいのか分からず取り敢えずお礼を言った。
なんか出たお礼の語尾が疑問系だった気もするけど、誰も何も言わないからセーフだ。
「刀というものの形状がよく分からないのだが、現物を出したりは‥‥出来ないか」
父様が俺たちの会話が一段落したタイミングで聞いてきた。
どうやら俺の説明だけじゃ想像しきれなかったらしい。
現物を見たことないんだから仕方ないよね。
でも現物を見せることは出来ない。
あ、でもイメージだけなら念写でなんとかなるよな‥‥でも今はみんながいるから出来ないし。
難解だ。
「陛下、ジングリアに頼むのはどうです?」
俺がどうしたものかと悩んでいると、母様が冷静に父様に言った。
「ジングリアか。うむ、確かにそうだな。しかし何か問題を起こしそうでな」
「ふふ、そうですわね」
父様はジングリアのことを考え頭を抱え、母様はその様子に微笑んでいた。
「あ、あの、私、やってないです」
「「「「え?」」」」
母様と父様の会話を見ていると、小さく春川がカミングアウトした。
「え、やってないの?春川さん」
「あ、はい。あはは、やっぱり忘れられてましたか」
先生が驚いたように言うと、春川は乾いた笑いを浮かべながら言った。
「あ〜、ごめんなさい。国王様、もう一人大丈夫ですか」
「あぁ、構わない」
先生は父様に確認をすると、父様は了承して、再び水晶の横に立った。
「さ、春川さん。いってらっしゃい」
「あ、はい」
先生は春川の背中を軽く押すと春川の足は一歩踏み出した。
水晶の前に立つと、恐る恐る水晶に触れた。
名前 アキ・ハルカワ
レベル 5
年齢 十六歳
種族 人族
職業 ?
魔法属性 無属性
固有スキル 全言語理解
加護 女神ルルーユの加護 獣加護
称号 女神の寵愛を受けし者 異世界人
転移者 動物に愛されしもの
「動物‥‥‥っ!やった‥‥‥!」
現れた加護に春川は小さく喜んでいた。
春川は動物が好きなのだろうか?
「まぁ!珍しい」
「マユリ様、珍しいとは?」
母様の驚きに先生は不思議そうに尋ねた。
「これは動物刺激ですわ」
「動物刺激ですか?」
「えぇ」
動物刺激は動物を刺激することで、仲間にすることが出来るものだ。
動物刺激自体は珍しいものではないが、春川のように〝動物に愛されしもの〟と言う称号を受ける者はとても珍しい。
「これで終わりか?」
父様は俺たちを見渡しながら言った。
「はい、春川さんで終わりです」
「そうか」
先生の言葉を聞き、父様は再び俺たちを一周見渡しながら口を開いた。
「それぞれ望まぬ力を望む力もあったと思う。だがここで終わってはいけない。我が国はきみたちの教育を全面的に支えよう。魔法師は魔法を剣士は剣を、個々の能力を伸ばすことを頑張ってくれ」
父様は威厳たっぷりの声で激励を言った。
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