女神ルルーユの加護
「ーや、悠弥!起きろ」
「雫?」
女神ルルーユとの話し合いが終わり、現実 戻った俺は大声で雫に起こされた。
「やっと、起きたな」
「ごめん。なんか寝たりなくてさ」
「やっぱ、ちゃんと眠れなかったんじゃないのか?今日はベットで寝ろよ」
「あ、うん。ありがとう」
雫は心配そうに俺を見た。
雫って少しお母さん気質あるよな。
本人の前じゃ言えないけど。
「あ、これ、着替えな。メイドさんが持ってきてくれた」
「ありがとう。そういえば鳴宮と華深はどうしたんだ?見当たらないけど」
俺が聞くと雫は辺りを見まわした。
「え、いないな。どこ行ったんだよ。あいつら」
「どこに行く、とか聞いてないのか?」
「聞いてない。と言うか、部屋を出ていたこと自体知らなかった」
「そうか」
まぁ、鳴宮はともかく華深は余計なことしないだろうから大丈夫だとは思う。
俺が頭の中で納得していると、扉の外から慌ただしい音がした。
「た、大変だ!」
扉を勢いよく開けたのは華深と鳴宮でその顔は興奮を抑えきれないのか真っ赤にしていた。
「華深と鳴宮どうしたんだ?」
「そ、それが‥‥‥」
「逃げなくても良いではないですか?」
雫が二人に聞き、華深がそれに応えようとすると後から追ってきたナーマがやってきた。
ナーマは困ったように華深達を見ていた。
「えっと、どういう状況?」
「ハルヤ様、私もよく分からないのです。お二人に話しかけたら突然、逃げていかれて」
「なるほど。で、二人はなんで逃げたの?」
「し、篠宮はこの不思議な状況に気付かないのか?」
興奮冷め止まぬ様子で聞いてきた。
不思議な状況って言ったって。
場所が異世界になったとか?
でも、これは昨日から周知の事実だし。
あと何がある?分かんないな。
「本当に分からないのか?香坂はどうだよ」
「どうって言ったって。お前らの真っ赤の顔と異世界ってこと以外不思議でもなんでもないぞ」
雫も分からないのか、怪訝な顔をして華深と鳴宮を見て言った。
「嘘だろ?なんで気付かないんだ?俺達異世界の奴と普通に会話してんだぞ」
「ん?何言って‥‥‥。あ、本当だ!」
雫は怪訝そうな顔から驚いた顔に変わった。
百面相みたいだな。
「今更か」
にしても、異世界の言葉が分かるようになったって、女神ルルーユの加護によるものだよな。
今更気づいたけど、言語理解は雫達にとっては生活上で重要なことなんだけど、俺にとっては姉様や兄様、そしてナーマがペラペラと俺の秘密を喋らないか心配だ。
そんなことしない人達だと分かっているけど、何があるか分からないし。
「なぁ、篠宮。なんでお前この人に名前知られてんの?異世界来たの昨日だよね。言語も違うから理解出来なかったはずだし」
不思議そうにナーマを見ながら華深が話しかけてきた。
「ん?なんでだろうな~。俺に聞かれても全く分かんないかな」
若干棒読みになりながらも分からない振りで通すことにした。
「じゃあ、そこの騎士さんはどうなの?」
「え?俺ですか?あ、えっと、何ででしょう?」
ナーマはナーマでテンパって訳わからないことを言っている。
「あ~、多分、雫が誰かが俺の名前呼んだからじゃないのか?」
「え、えぇ。きっとそうですよ」
「なんか怪しいな。何隠してるんだよ」
鳴宮と華深が俺とナーマをじっと見つめながら聞いてくる。
完全に気付かれる寸前じゃん。
ナーマはテンパって何か言ってはいけないことを口に出しそうだし。
「まぁ、良いだろ。本当にただ耳にしただけかもしれないしさ」
何か言わなければと思っていると、雫が華深と鳴宮の方に手を置き言った。
「で、でも‥‥‥」
「あれ、まだ部屋にいらしたんですか?ナーマ様!皆様を食事の間にお連れするように言いましたよね」
「あ、悪い。メアリー」
華深の反論を遮ったのはメアリーだった。
俺の部屋付きだったメアリーは当然、ナーマとも顔見知りだ。
俺も含めて幼馴染と言っても良いのかもしれない。
「お前、ナーマって名前だったのか」
「えぇ。まぁ」
メアリーの登場でナーマの名前のことに興味が移った鳴宮はナーマに対して質問していた。
華深の方は不満そうな顔をしていたが、なんとか落とすとこに落とし込んだらしかった。
「では、行きましょう。陛下がお待ちです」
メアリーのその言葉で俺達は父様が待つ食事の間に向かった。
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