異世界転生して、地球に戻る
俺、ハルヤ・シーリスは地球から異世界に転生した。
今の俺は小国、シーリス王国の第二王子。
前世で黒髪、黒目だった為転生してからの青髪、碧目には慣れない。
そして現代の進んだ技術の中で生活してきた俺には少しだけ慣れない部分もあったけど、この世界には魔法がある。
その為十二分にはこの世界を楽しめている。
俺が十歳になった時起きた事件の前後までは‥‥‥。
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この世界に転生して十歳になった頃、王国では何百年、何千年かに一度の一大事に陥っていた。
それは、『異世界渡り』と呼ばれるこの世界を創造した女神ルルーユと異世界を創造した神が互いの世界の者を一人送るというものだった。
異世界から送られてきた者は記録がない為確認出来なかったらしい。
文献に前例はあっても実際に知っている者は生きていない為、分からない。
だからこそ、シーリス王国は大慌てで対応に追われていた。
誰が選ばれるか分からないし、世界を渡った者は文献には帰ってきたらと思われる記録もない。
誰もが複雑な気持ちだった。
女神を信仰する者として喜んでいいものなのか、それとも選ばれれば二度と家族にも友達にも大事な人にも会えない、そんな苦しみを受け入れなければならないのか。
そして、数日が過ぎ異世界に行く者が決まった。
誰もが待ち望んでいた。
ある者は安心し、喜びで涙を流し、ある者は異世界に行く者への感謝の気持ちを抱き、幸運を願ったという。
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『異世界渡り』に行く者は俺だった。
俺が住む城では、悲痛な空気が流れていた。
兄のナリアスが俺を抱きしめ父のダグラスに泣きながら聞いていた。
「なぜ、なぜです、父上。どうして‥‥」
「そうですわ、どうしてハルヤが選ばれたのですか」
それに続くように姉のサーナも言った。
「女神ルルーユがお決めになった事だ、私達にはどうする事も出来ない」
兄様と姉様にキッパリと言うと父様は口をギュッと結び悲しみに耐えているようだった。
それを見る母のマユリは涙を流している。
「父様、大丈夫です。姉様や母様達の事忘れる訳ではありませんし」
俺が笑顔を見せると母様はハッとしたように涙を止め、笑顔を見せた。
「ハルヤ、貴方は覚悟ができているのね。それなのに私達がこんな雰囲気にしてしまっては貴方の覚悟を踏み躙る事になるわね」
「そうだな、私達もハルヤを見送る覚悟を決めなくてはな」
父様も悲しみの表情は見えるものの笑顔でいた。
しかし、兄様や姉様は未だ俺に縋りつき泣いている。
「兄様、姉様、笑顔で送って下さい。そんな顔では心残りが出来てしまいます」
「心残りがあって良いじゃない。いつまでも至って良いの」
優しく二人を落ち着かせるようにいうも、姉様には逆効果だったようだ。
一方、兄様はそんな俺の心情を悟ったのか涙は流しているが、笑顔が見えせていた。
姉様は、まだ十三歳。
前世の記憶がある俺からすれば、まだまだ子供だ。
そんなのかで、弟と一生会えないかもしれないという事実を突きつけられたら納得出来ないよな。
「サーナ、ハルヤの気持ちを尊重してあげて、ね。記録が無いだけで会えないと完全に決まった訳じゃないわ。いつか会えるそう信じなさい」
「お母様‥‥‥」
優しく語りかけるように姉様に話しかけると泣きじゃくっていたのが嘘のように涙が止まっていた。
流石は母様だ。
姉様の気持ちをあっという間に落ち着かせてしまった。
「分かりました。ハルヤ、またいつかどこかで会いましょうね」
「そうだな、ハルヤどんな困難があるか分からない。だけど、自分だけは大切に」
姉様が決めたように、お別れの挨拶をした。それに続いて兄様も笑顔で言った。
母様や父様もそんな二人を優しく見守っている。
そんな風景を見ていると俺の体が突如として光出した。
足元を見ると魔法陣が現れ、広がり輝いていた。
「なっ⁉︎」
俺が驚いていると父様が何かが分かったように話し始めた。
「これが『異世界渡り』の始まりか。行ってしまうのだな、ハルヤ。どうか、生きていてくれ。望むのはそれだけだ」
「えぇ、自分の体を大切にね」
「寂しいけど、また会えると信じてるわ」
「この世界のこと、私達の事どうか忘れないでいてくれ」
『異世界渡り』が始まり、父様、母様、姉様、兄様が順々に言葉を掛けた。
そして、兄様の言葉を聞いてすぐ俺は光の中に包まれた。
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