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my X  作者: 黄昏のマオ
なんでも屋と三月の訪問客
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なんでも屋と事後の様子と戦闘狂

ズズズ…


「落ち着きました?」僕がコーヒーを飲む音を聞いて、水仙が訪ねてきた。


「あぁ… ごめんな。つい荒ぶっちまった。迷惑かけたな…」


リューグナーが去った後、依頼がうやむやになった事と、僕が疲れていたということもあり、事務所に戻っていた。


「それと、陳にもお詫びの品を入れねぇとな。」


「そのことなら多分心配いらないですよ。」水仙が笑う。「『六木の事任せたヨ。あと、我に悪いと思ってるかもだかラ、お詫びはいらないと言っておいてくレ。』だそうですよ。」


マジか… あいつ気配りの天才なのかな?今度マジでお礼しよ。


ピンポーン


「ん?誰だろ。」


「依頼者じゃないです?」


「じゃあ、切り替えていくか。」


そう言いつつ、ドアの前まで行って、ガチャリとドアを開けた。


「アンタがあそこの中華街でドンパチやってたのか?」ドアを開けるなり、訪ねてきた男はそう聞いてきた。


「あ、あぁ。確かに俺だが…」


そう言うと、男はファイティングポーズをとって叫んだ。


「勝負だ‼」


「「はぁ?」」


僕も水仙もあっけにとられた。






「俺の名前は”谷宵八馬土(やよいやまと)”。強いやつが好きだ!よろしくな!」


「あぁ、はい。」何こいつ怖い。戦闘狂じゃん。


「んで、急に何ですか?いきなり勝負だって言われても意味わかんないんですけど。」水仙が言う。いきなり自分の要望を言い放ってきたところは君たち一緒だけどね。


「俺は強いやつが好きだって言ったろ?どっかに強ぇ奴いねぇかなと思って、二日ぐらい当てもなくブラついてたんだけどよ。」


そこまで強者に飢えてんのかよこいつ。こっわ。


「そしたら偶然!海辺の倉庫でドンパチやってんのが聞こえてきてよ。しばらくして出てきたのがアンタだったんだよ。あん時、すぐにでも勝負したかったんだけどよ。アンタ、クッタクタで出てきたじゃん?さすがに全力だせねぇやつと戦うのは無理だなと思って、しばらく外で待ってたんだ。」


「「……………………」」


「どうしたんだ?俺の顔になんかついてっか?」


こっコイツ、もしかしなくてもバカだ‼‼


「じゃ、じゃあ、純粋に勝負したいがためについてきたってこと?」水仙が驚きと呆れを同時に顔に浮かべた。


「おう!」八馬土はニカッと屈託のない笑顔でうなずいた。


「じゃあ、ちょっと待ってくれ。そこまでして戦いたいと思ってくれてるなら、こっちも全力で相手してやりてぇんだ。ちょっとチャージさせてくれ。」


「あぁ!互いに全力出してえからな!準備ができたら言ってくれ!」八馬土はあっさりと了承した。やっぱりただの戦闘狂?






「じゃあ、始めるか!」


町から離れた、誰も近寄ってこない広場で僕たちは向かい合っていた。


彼に許可をもらった僕は、水仙に「悪いが、ちょっとした何か食べ物作ってくれねぇか?水仙が作りやすいもので構わない。」と言って、塩むすびを4つほど頬張った。チャージには十分だ。


「こっちも全力出させてもらうけど、思ってたより弱かったとか言うなよ?」


「あぁ!そりゃ礼儀が欠けてるからな!」


「じゃあ行きますよ!」水仙が手を挙げる。「始めっ!」


「”うねり飲み込め”【大蛇(だいじゃ)】‼‼」水仙の合図と同時に八馬土が仕掛けてきた。


「”盛れ猛火 あらゆる物を貫き通れ”【貫通銃炎球(ごじゅうえんだま)】‼」


ドォォォン!


僕の放った火球が轟音を発しながら、八馬土の繰り出した土の蛇の様な技と激突した。

その直後、煙の向こうから土で出来たドリルが飛んできた。


「”回り貫け”【土竜(もぐら)】!」


「うわっと!?」僕はギリギリでそれを避ける。


「これを避けるのか!やるなあアンタ!」空に上がった土ドリルが人型に戻って、八馬土になった。


自分を土にして突進する技か。なかなかスキルを練ってるな。


「じゃあこれはどうかな!?」空中で八馬土が僕の方に両手を出す。「”追いかけ頭突け”【黒犀(くろさい)】‼‼」


彼の掌から、とがった土の角の様なものが飛んできた。遠距離持ちかよ!


「”起これ灯火 彼のものを守り給え”【護炎球(ごえんだま)】!」僕はとっさに球状の保護膜を展開して、防御態勢に入る。


バキィィン‼


土の角と僕の保護膜が同時に砕けた。安心したのも束の間。着地した八馬土は次の技を出す態勢に入っている。


「”鋭くひっかけ”【山猫(やまねこ)】‼」


詠唱を唱えると、彼の両腕が土でおおわれて鋭い爪が出現した。そして大きく地面をけって接近してきた。


「なるほど、接近技か。よかった。これで終わりだな。」


「何言ってんだ!まだまだ行くつもりだぞ!俺はぁ!」


「自分の得意分野で戦うのは悪くない。でも…」


僕はそう言いながら、手刀で刀を腰にある鞘に納める動作をした。


「その得意分野が、自分より相手のほうが強い場合を考えたほうがいいぜ?」


ッダァァン…!


「ガハッ…!?」八馬土がうつぶせに倒れる。


「【閃炎刹(せんえんさつ)】」


僕は音が発生するより早く鋭く踏み込んで、八馬土の背後に移動した。


「すれ違いざまに手刀を腹に叩きこんだんだ。威力を抑えたとはいえ、あと十分は立てねぇんじゃないかな。」


「す、すごい…!私、そんな技初めて見ました!」水仙が近寄ってきて、キラキラした目を向けてきた。


「どう?カッコ良かったでしょ?」


「技はまあまあ。でもあの挙動。カッコつけてましたよね?多分ですけど、もっと早く出せますよね?」


「ウッ…ソコを突いてくるとは、鋭いね… 君のどの技よりも鋭かったぞ、今の…」


「それで、前にも聞いた気がしますけど、自己強化の詠唱破棄と技の詠唱破棄って、どう違うんですか?」


「あぁ、そうだな。あれ、めんどくせぇもんな。」僕は掛けていない眼鏡をくいっと上げる仕草をした。「まず、自己強化の詠唱破棄は、効果が上がる代わりに強化成功率がぐっと下がる。強いやつだったら大体、効果が3倍になって、強化成功率が10分の1になるぐらいだな。」


「それで、技の詠唱破棄がその逆なんでしたっけ。」水仙が僕に続いた。


「そう。自己強化の逆で、威力が落ちてしまう代わりに、成功難易度が上がるんだ。ついでに技を出すのも早くなるしね。」


「じゃあ、さっきのはそれを逆に利用したんですね。」


「そうだよ~?本気でやっちゃうと胴体真っ二つだからね。」


「ンンンンン~~~~ぬあああ‼‼‼」


二人で話していると、いきなり雄叫びを上げて八馬土が起き上がった。


「がぁああ~~!効いたぜ!」彼は笑顔でぴんぴんしている。


「「……………うそやん。」」僕らは二人で唖然としていた。あぁあぁ、水仙の口が開いて塞がらなくなってるよ。


カクッと水仙の口を無理やり閉じてから僕は尋ねた。「僕本気出してないとはいえ、思いっきり腹にあてたんだけど。何で動けてるんだよ。」


「いやぁ~痛かったぜ!しかも、本気じゃないってさっき言ってたよな?本気じゃなくてあれなら、全力出したら俺なんて消えてんだろうな!ハッハッハ!」


いや笑い事じゃないって。まぁ、やろうと思ったらやれるけど。


「まぁ大丈夫ならいいや。んじゃ、これで解散かな?フィ~疲れたぁ~!」クルッと踵を返して、水仙と事務所へ帰ろうとした時、


「待ってくれ!」と八馬土が言った。


「なんだよ。まだ何か用?」僕が振り返って言う。


「六木さん…いや、アニキ!俺を雇ってくれ!」


「「はぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!?????????????」」

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