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my X  作者: 黄昏のマオ
なんでも屋と二月の助手
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なんでも屋と結晶と六木の因縁

「お、お前が作ったのか!?あの不可視のゲート!?」僕は驚きのあまり大きな声を出してしまった。


「ウン。でも別にそんなにむつかしいことはしてないヨ。効果対象を絞っテ、対象が近づいてきたら発動させるだけだヨ。」陳は何でもないような顔で言った。


まじかよ。対象の選択とそれによる効果時間の延長を涼しい顔でやってやがる…

それ結構むずい筈なんだが。ちょっと自信無くすなぁ。


そんな僕の心境も知らず、彼女は淡々と説明を続けた。


「そんであそこハ、この中華街全体を守る結界の大本があるから守らなきゃいけないノ。」


「だから許可なく近づいたら宇宙に飛ばされるんだな… システムには納得した。けど、なんで宇宙?」


「そりゃフトドキモノをどうにかするのに一番手っ取り早かったからだヨ。あと出口の座標を考えるのめんどかっタ。」陳は笑いながら言った。


実際にそれでシんだ人いるんだよな… 処理がめんどくさいからって宇宙に飛ばされたのはドンマイとしか言えねぇ…。


「じゃあちょっとご飯食べ終わったらあの中確認させてもらっていい?信用ならなかったらついてきてもらっていいから。」


「オッケー!」


軽っ。






ゴロロロロ…と重低音を鳴らして扉を開くと、部屋の奥で異世界ものに出てきそうなきれいな結晶が浮いていた。あれが結界の大本か?


「あれにハ、防護系のスキルを持つ奴に術式を書いてもらってるノ。」


「エネルギーはどうしてるんだ?」


スキルを使っているのなら、エネルギーの問題はどうしても出てしまう。僕がスキルを使った後、ものすごくお腹が減るみたいに、基本的にどんなスキルでも何かしらのエネルギーを代償にして効果を得るものだ。四六時中、防護結界を張り続けるのならそれなりに消費するはずだが…。


「そこはエネルギーを変換できるスキル持ちのやつがいるからネ。ソーラーパネルでの充電とかこの町で出たごみを燃やした火とかを変換してるから問題ないヨ。ちなみにエネルギー変換の時もしっかり使い手が持ってるエネルギーを消費するかラ、あいつ今めっちゃ痩せてるヨ。」


といいながら、陳はスマホの写真と少し色褪せた一枚の写真を取り出した。

色褪せた写真のほうには、なんとも怖そうなおじ様たちと力士のような男が手を後ろに組んで並んで映っていた。

スマホの写真には、陳と肩を組んでピースしているヒョロヒョロした男が映っていた。


「え、まさかこの人とこの人、同じ人ですか!?」水仙が驚きのあまり口をあんぐり開けて言った。


ウンウンとこの反応が欲しかったかのように陳がうなずいた。重労働なんだな…。


「まあそこは後でいい。問題はなんで例の恋人さんがこの近くで目撃されてるのかってとこだ。本来、用なんざない筈だけどなぁ…」


そこで全員考え込んでしまった。一回事務所に帰るのも視野に入れなきゃいけないかもしれないなぁという考えが頭をよぎった時、どこからともなく全身が真っ黒な謎の生物が出てきた。こちらに敵意むき出しだ。


「な、なぁ陳?これもそこの結晶を守るためのシステムだよな…?」


「残念ながら違うネ。敵襲ダ~!」そう言いながら陳は戦闘態勢をとっている。


「マジかぁ… せっかくエネルギーチャージしたばっかなのに… だる…」


「弱音吐く前に動いてくださいよ!これくらい省エネモードで行けるじゃないですか!」

水仙に一喝入れられた。こりゃ頑張んないとな。


「はいはい。やりますよっと。いっぱい打ち込むから、余ったのよろしくね。二人とも。」


「了解!」 「知道了(ジーダオラ)!」


「いい返事。そいじゃ、行くぜ。」そう言って僕は手を謎生物に向けてエネルギーを集め、圧縮する。


「”燃えよ烈火 眼前の一切を撃ち払え”【灯焼炎球(ひゃくえんだま)】‼」

ドドドドドドドドドドォォン!


名前を叫んで、無数の火球を手のひらから拡散させて打ち込む。火球にあたったり、爆発に巻き込まれたりで、8割は処理できたかな。


「そんじゃ、後は頼んだよ~。」


「頼まれましたけど、技名もうちょっとどうにかならなかったんですか?」水仙が突っ込んできた。


「ならん!」これで体が覚えちゃってるから、変えようにも変えられないんだよね。一回変えようとしたけど、調子狂うんだもん。


「そうですか。まあいいですけど!」そう言いながら、水仙も手を上に掲げる。


「”流れて滝つぼ 形成せよ水の(もり)”【激流槍(ストリーム・ランス)】‼」


ゴバッシャァァァン!


次の瞬間、空中から槍状に形成された水が謎生物に向かって降り注いだ。

やっぱそこそこ威力あるなぁ。あの人に鍛えてもらったら化けそうだな。


バヂュンッ! バヂュンッ!


「お前ラ、いいナ!技名あっテ!」陳はそう言いながら謎生物のいた空間を切り取っている。多分宇宙とかに飛ばしたんだろうな。能力的に雑魚狩りに適してんな。


「技名は大事だぞ?技名を言うことで気合が入って、効果が高まるんだからな。ウラァ!」

会話しながら、各々謎生物を撃破していく。


「気合入るのは知らないケド、効果については嘘だロ!」


「あ、バレた?」僕はいたずらがバレた子供のように、舌をペロッと出して笑う。「でも、出力は上がるぜ。マジで。」


「ちょっと!私一人残してイチャイチャしないでください!私もイチャイチャしたい!おりゃあ!」


急に水仙がワーワーと言い出した。かわいいやん。


「後でしっかり甘やかしてあげるから!集中してくれ!ドリャァ!」


「お前が始めたんだロ!?あとイチャイチャはしてなイ!」







「「「つ、つかれた・・・」」」

戦闘開始から1時間くらい動き続けていた僕らは、倉庫の真ん中で座り込んだ。


「何だったんだ結局…」発生源がわからない以上、全滅させるまでたたき続けるしかなかったんだけど、普通に多すぎる…

その時、


パチパチパチパチ…

「あの数を3人がかりとは言え、さばききるとは。情報以上ね。」


拍手の音と共に声が響いた。そして、物陰から出てきたのは、例の恋人さんだった。


「え…?なんであなたがここに…?」


「……あなた達は騙されてたのよ。最初からね。」


彼女がそう言った後、瞬きの間に彼女の姿が変わっていた。

そこに立っていたのは依頼者の樋口さんだった。


「どういうことですか…?」


「悪いな。樋口は偽名だ。本名を言うつもりはないが、取り敢えず”リューグナー”とでも呼んでくれ。」

そう言ってリューグナーは近づいてくる。


「急な問いかけで悪いが、お前は俺を信じることはできるか?」


「信じるも何も、僕はあんたのことを何一つとして知らない。結論を出すのはあんたのことを知ってからだ。」僕は正直に答えた。


その答えにリューグナーは、驚いた後一瞬だけうれしそうな顔をした。


「そうか。お前はいいやつだな。気に食わないやつなんじゃないかと思ってたが、良かったよ。それじゃあ、小さなこととはいえ、俺の質問に答えてくれたんだ。お礼に一つ情報を渡してやろう。」


「あ、ありがとう…?」


「Break downは5年後、この国全体を巻き込んで、『落陽』を再演するつもりらしいぜ。」


は…?


「あの、何言って…」

「何だと…!?てめぇ、本気で言ってんのか!?」

水仙が言っているのを遮って僕は叫ぶ。


「あぁ。」とリューグナーは笑った。「俺は嘘つきだが、気に入った人間には真摯なんでな。」


「てめぇ何でそんなこと知ってやがる…!」僕は続けて質問を投げかける。


「そりゃあ俺が、Break downに雇われた人間だからな。」


ボンッ!


リューグナーの発言を聞いて、僕は高速で走り出した。

「【自己強化(炎)】‼‼」


身体強化の詠唱破棄は本来、効果が強まる代わりに、強化成功率が10分の1まで落ちる。

だがそんなこと言ってる場合じゃねぇ。

これで一瞬でリューグナーとの距離を詰める。確実に捕まえて情報を吐かせる!


「フンッ 詠唱破棄か。本気だな」リューグナーが不敵な笑みを浮かべる。「だが、残念ながらお前は俺を捕まえることはできねぇぞ。」


「うるせぇ!そりゃ俺の勝手だろうが!」リューグナーに向けて拳を振りかぶる。


「じゃあな六木。また会おう。」リューグナーは僕に背を向けて、「”~~~~~~~~~~~”」何かをしゃべった後、奴の姿は忽然と消えていた。まるで元からそこには何もなかったかのように影も形もなくなっていた。


「クソがぁっ!」僕は地面を殴りつけた。地面にヒビが入るほどの強さで殴り続けた。「あ”あ”あ”あ”あ”ぁ……………‼‼‼‼‼」


僕の叫びを陳と水仙は静かに見つめていた。




倉庫の扉の隙間からは、きれいで鮮やかな陽光がさしていた。

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