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my X  作者: 黄昏のマオ
なんでも屋と二月の助手
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なんでも屋と出会いの追憶と最初の依頼

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コノ世界ニハ”すきる”ト云ウモノガアル。

マァ端的ニ云エバ”わん〇ーす”の”悪〇の実”ノヨウナモノダ。

種類ニ限度ハ無イ。小生(オレ)ノ思イツク限リ種類ガ出テクル。

ソチラ側ノ人類ガ、最初カラ集団行動ガデキテイタヨウニ、コチラ側ノ人類ニハ、初メカラ”すきる”ガ使エタ。ノデ、”すきる”ガ原因ノ差別ヤ争イハ起コラナカッタ。

使イコナシテイル奴ノ認識ハ、ソチラノ大〇翔平ミタイナ感ジ。ソレデモ小生(オレ)ノ”五百分の一”ナンダケドネ。小生(オレ)メチャ強イノ。

マァトリアエズ、”すきる”ガ使エル人類ノ話ダト覚エテクレタマエ。

エ?小生(オレ)ガ何者カッテ?ソリャ後々ワカルカラ。ソウ焦ラズニ。

今ハ小生(オレ)ノオ気ニイリノ人間ノ生活ヲ見テ楽シンデイテクレタマエ。


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僕のことについて少し話そう。


僕は町一番の大通りにある事務所でなんでも屋をやっている。

客は少ないが、評判はいいほうだと思っている…んだけどなぁ。

肝心の事務所がなぁ。小さくてぼろくてなぁ… とても自慢できたもんじゃない。

うちの自慢できる点といえば……


「『自分のこの容姿』、ですよね。六木(むつき)さん」


「なんで君はそうやって毎度僕をナルシストにしようとするんだい?あと、僕の心読めるの?如戯(きさらぎ)君」


コーヒーを持って現れたカノジョは”如戯水仙(きさらぎすいせん)”。僕の初めての依頼者で、僕の助手だ。

自慢できるのは、僕の助手の可愛さしかない。なんて口が裂けても言えないんだけど。


「だって六木さん、かっこいいこと好きで周りのことはめちゃめちゃ褒めるくせに、自己肯定感低いんですもん。その分私が褒めちぎってあげようと思って。せっかく”六木火垂(むつきほたる)”っていうかっこいい名前があるのに。」


この娘、俺のこと好きなのか?あと、心を読む云々は無視ね。ボケたつもりだったんだけど。悲しっ。


「はぁ… 本人の許可なく個人情報の開示どうもありがと。」


「いえいえ」カノジョは笑った。


「皮肉ってんだよ。そもそも職業柄、情報の開示は常に周りに注意してって言っただろ。僕のいう事をちゃんと聞けないと、次はクビにしちゃうぞ~」


「ああ!ごめんなさいごめんなさい!クビだけはしないでくださいお願いします!気を付けますから~!」


カノジョは泣きながら僕に抱き着いてきた。正直心臓バクバクしてるからやめてほしい。でもやめないでほしい。ああやばい。すぐに話変えないと心臓が破裂して爆シしちゃう。


「そ、そういえば、前から思ってたんだけど、なんでそんなにクビを嫌がるの?君だったらここをやめても引く手数多だろうに。」


「それは…」カノジョは涙を拭って少しうつむくと、含みのある笑顔で「秘密です♡」と言った。


「察しろってこと?」と聞くと、カノジョは大きくうなずく。

仕方ないなぁと笑って口を付けたコーヒーは、なぜだか少し甘酸っぱかった。


「ねぇ水せ…」

ピンポーン


レモンでも入れた?と言いかけて、チャイムが鳴った。この部屋に来る人なんて依頼者しかいない!


「よっし!切り替えていくぞ!はーい、今行きまーす!」


ガチャっとドアを開けたらその男は立っていた。「郵便でーす。」


その日は一日中ソファで寝込んだ。ソファは安物だったから硬かったけど、水仙が膝枕をしてくれていたから、そこは気にならなかった。幸せすぎて明日シぬかもしれない。

そういえば、あの時も膝枕してくれてたなぁ…


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~~~~~二年前~~~~~

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その時は嵐にさらされたのもあってひどくやつれて見えていたかもしれない。


「どこもかしこもダメだった… ここで無理なら、この世とさよならしなきゃいけないかもなぁ…」


大通りにあるビルの、とある一室の前でわたし、如戯水仙はつぶやく。

今まで頼ったところは、途中で匙を投げたり、解決する気が毛頭なく、お金を取られるだけ取られてトンズラされたりした。本格的に覚悟しないとなぁ…


ピンポーン

ガチャッ


「はー……いぇ!?」と、驚きながらその男は出てきた。

見た目はわたしとあまり変わらないくらいか?

初対面でその反応は少し失礼じゃないかと思ったが、主観的に見てもわたしは幽霊のように見えただろう。

まぁとにかく要望を伝えないと。


「助けて…ください…」

「OK!」男は笑顔で言った。






「シャワーありがとうございました。でも…よかったんですか?服まで貸してくださるばかりか、私の服の洗濯まで…」


その部屋の主、六木と名乗る男に借りた服を着てわたしは彼に尋ねる。


「良いの良いの。」と彼は笑った。「こんくらいお人好しじゃないと、これからのこの仕事が長続きしないし、何よりここで放っておくのは僕のポリシーに反する。」


「ポリシー?」


「『何があってもカッコ良く依頼を遂げる』!これが僕のやり方さ!」


「へぇ… あ、えと、本当に依頼を受けてくれるんですか?」


「うん。OKっていったよ?僕」


「そんなに軽くでいいんですか!?」と聞くと彼は大きくうなずく。


「そ、そうですか…… それで、依頼料のほうなんですが…」


「あぁ、後払いでいいよ。僕の仕事ぶりに満足しなければ、払わなくていいし。」


「いいんですか!?あ、ありがとうございます!」


「それで?詳しい依頼内容は…」


ダンダンダン‼‼「ちょっと開けてくれねぇかぁ!?」


そう彼が言いかけたところで、ドアがたたかれた。耳のすぐ近くで言われたと感じるほど威圧感のある怒鳴り声もある。


「なんでここがわかんのよ…!」


恐怖に染められ切ったその言葉を彼は聞き逃さなかったのだろう。

「僕の後ろに下がってて。」彼は優しく言ってくれた。

今までされたことが頭によみがえり、恐怖に埋め尽くされていたわたしにはうなずくことしかできない。


ガチャッ

「はー…」

「女はどこだぁ!」彼が返事を言い切る前に、おそらくドアをたたいていたであろう黒服が怒鳴った。そして私を見つけると、笑顔のようだが絶対にそうは見えない凶悪な歪んだ顔を浮かべて、「ガハハハッ!いるじゃねぇかぁ…!」と蛇が獲物を睨むように言う。


ヒッ…!

声にならないような声を漏らす。

足が動かない…!またあそこに連れていかれる…!あの地獄に!


すると彼はわたしをチラリと見て、すみません。と言った。「この部屋、借りたばっかで汚したくないんで、外でお話しできませんか?彼女もつれていきますので…」


チッと彼を睨みながら大きく舌打ちをして、黒服は「早く連れて来いよ。」と大通りに出ていった。

それから彼が近寄ってきて、

「ちょうどいい機会だし、僕が信頼に足るってとこを見てもらおうかな。」と爽やかな笑顔を浮かべる。


何を考えているのこの男!?自分の二倍以上大きな背丈をした人間と張り合う気!?

「バカ言わないで!あれには絶対に勝てない!シャワーと服を貸しただけの女に命を懸ける価値なんて…」


言い終わる前に彼は私の肩にポンっと優しく手を置いた。

「大丈夫!」

その笑顔には妙な安心感があり、気づけばわたしはうなずいてしまっていた。






「おせぇなぁ!待ちくたびれちまったよ!確かに女は連れてきてるようだがなぁ!」

黒服は歪んだ笑みを浮かべて言う。


もちろん。と彼は笑う。「僕は約束は守る男なので。」


「それなら、女をすぐによこしてもらおうか!傷つけやしねぇから安心しな!」


嘘をつくな。わたしに散々ひどいことをしておいて。どの口が言っているんだ。

…と、私は声を出しそうだったが、彼に制止された。


「それはできない相談ですねぇ。いくら何でも初対面で、信用できない人に依頼人を受け渡すことは…」


ドカァァァン‼‼‼‼

言い終わる前に響く衝撃音。

「じゃあシねや」と土で出来たハンマーを持って黒服は笑う。


…が、土煙が晴れると彼とわたしはそこにはいなかった。


「はぁ!?どこ行きやがった!?」


「穏便に済ませたかったんだけどなぁ…」街灯の上でわたしを抱いて、彼はつぶやく。瞬きの後には黒服と道路を挟んだ反対側にわたしたちはいた。いつの間にか傘とタオルを持っている。


あまりに一瞬の出来事に私が驚いていると、

「ここで少し待っててね。」と彼がわたしの顔を拭いながら笑いかけてきた。

そして黒服のほうへ歩いていく。


「おい」


その声に黒服は振り返る。そして戦慄する。

明らかに彼の雰囲気が先ほどと違うのだ。

「さ、さっきまでホワホワしてたんじゃねぇのかよ…!?」


その反応に彼は返す。

「先に手ぇ出したのはそっちだからなぁ…!覚悟しやがれ!」


言い終わると同時に彼は消えていた。そして、

黒服は空に打ちあがった。と思えば地面に叩きつけられている。遅れて衝撃音が九つ大通りに響く。


「仲間はこれで全部か?全員裏路地にいたんだが…殺気ダダ漏れだったんでわかりやすかったぜ。やる気あるなら全員で来なきゃなぁ」


そう言って、いつの間にか現れていた彼は同じような格好をした黒服を七人地面に転がす。


「ひぃぇっ…!?」


黒服は心底おびえ切った表情で悲鳴を漏らした。

「な、何でも言うことを聞く!だから助けてくれ!」


「じゃあ、さっさと帰っててめぇのご主人様に伝えろ。『次僕の依頼者に手ぇ出したら容赦しねぇ』ってな…!」


彼は拳を炎で包んで黒服を睨みつけた。


「は、はいぃぃゃぁぁああ!?」と黒服は一目散に逃げていく。


そして彼は、クルっとわたしのほうに振り返って笑った。

「うっし。そんじゃ詳しく依頼を聞かせてもらおうか!」


彼の笑顔につられてたぶんわたしも笑顔になっていたと思う。

いつの間にか嵐は過ぎ去って、暖かな陽光が彼を照らしていた。


「は、はい…」

グゥゥゥゥゥ…


わたしの感謝と驚きが混じった返事と同時に、彼のおなかが鳴った。

すると彼は顔を赤らめて、


「ごめん、その前にご飯食べてもいい?」


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