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夢の中でムラムラを探す王子様とそのお手伝いをするお姫様 

作者: 恵京玖
掲載日:2023/12/16

 空にはドランゴンが飛び、森の中には小さな妖精が住んでいて、海には人魚達が泳ぐ、不思議な国に、フレイヤと言う王子様が住んでいました。


 フレイヤは王様になるために、魔法の勉強や剣の練習などを毎日やっていました。フレイヤ自身も頑張ってやっていたため、魔法の先生が驚くほど大きな魔法の虹を作ったり、剣の先生が唸るくらい強くなりました。

 他にもドラゴンの子供が迷子になっている所を見つけて助けてあげたり、森が火事になったら妖精たちを守り、魔法で雨を降らして火事を消したりしてあげるなど、とても勇敢で優しい王子様だったので、国民やドラゴンや妖精達には評判はとっても良かったです。ある人を除いては。


「フレイヤ! お前はこのままだと王様にはなれない!」


 そう宣言するのは今の王様でフレイアの父の弟、シファンです。フレイヤの叔父にあたる人ですが、王様と年が離れていて、まだまだ少年の年頃でした。

 さて、突然王様になれないと言われてショックを受けたフレイヤは「どうしてですか?」と聞いた。

 するとシファンは「お前には足りないものがあるんだ」と言いました。


「なんですか? それは?」

「それは、ムラムラだ!」

「……なんですか? それは?」

 

 聞き慣れない言葉にフレイヤは首を傾げながらもう一度、尋ねました。シファンはフフンと笑いながら説明をする。


「王様になれるためのものだ!」

「うーん。それは分かりましたけど、どういう形なんでしょうか? 生き物ですか? それとも剣とかでしょうか?」

「それは王様になるお前にしか見えないのだ! だから俺には見えない!」

「じゃあ、お父様は王様だから見えるのですね。それならお父様に聞いてきます」


 フレイヤはお父様である王様に聞きに行こうとすると、シファンは「ちょっ、ちょっと待った」と慌てました。


「あのな、これは試練なんだ。だから人に答えを聞いたりしてはいけないんだ」

「そうなんですね。でもムラムラと言う名前だけでは何なのか分かりませんね。そもそもどこにあるんですか? ドラゴンのいる山ですか? それとも人魚がいる海ですか?」

「いやいや、そんな場所にはない」


 シファンはニヤリと笑って、こう言いました。


「お前の夢の中にあるんだ」


 フレイヤは再び首を傾げて「夢の中?」と聞き返すとシファンは満足そうに頷きました。


「そう! 夢の中にあるんだ! しかもお前だけでムラムラを探すことはできないんだ。そうだな、お前の友達で人魚のお姫様のリーフがお手伝いしないといけないんだ」

「そうなんですか。早速、探しに行きます」

「でもまずは準備が必要だ」


 そうしてシファンは意地悪な笑みを浮かべながら、フレイヤに夢の中でムラムラを探す準備と方法を教えました。




 シファンから夢の中でムラムラを探す方法を教えてもらったフレイヤはすぐにリーフの所に行きました。

 リーフは陸にいると人間の姿になり、海に入ると人魚になるお姫様です。お母様が海の女王様で五人姉妹の末っ子でのんびり屋さん、そしてフレイヤのお友達です。

 フレイヤが海岸に着くとリーフを呼びました。


「リーフ!」

「あ、フレイヤ! どうしたの?」


 リーフはすぐに水面に現れて、砂浜に着くと人魚のヒレを人間の足に変えてフレイヤの所にやってきました。


「リーフ、実はシファンから王様になる試練を与えられたんだ」

「まあ、大変。どんな試練ですか?」

「夢の中でムラムラを探すんだ」

「……ムラムラ? それは生き物ですか?」

「うーん、それが分からないんだ。王様になる人間だけが見られるらしい。そしてリーフの力が必要なんだ」

「分かりました。フレイヤがムラムラを見つけられるように頑張ります!」


 こうして早速フレイヤとリーフはムラムラを探す準備をして、夢の中に入るためフレイヤはお城にある綺麗な庭にシーツを敷きました。

 

「まずは夢の中に入るために気持ちよく寝る事」


 そう言いながらフレイヤは眠り始め、すぐに夢を見ました。フカフカとした雲に乗って空を飛ぶ夢です。フレイヤはきっとこのままムラムラの所に行くんだと思い、ワクワクしました。

 一方、リーフはフレイヤから教えてもらったムラムラを探すためのお手伝いを思い出していました。


「えーっと、まずはフレイヤにバターを塗る……。うーん、バターって食べ物に塗るものだよね。フレイヤは食べ物じゃないからバターを塗るのはおかしいかも」


 そう言いながら、バターは塗らないで片しました。でも夢の中でフレイヤはバターの香りに気づきました。


「ムラムラはバターの香りがするのかな?」


 フレイヤは夢の中でそんな事を考えながら雲に乗ってどんどんと進んでいきました。

 一方、リーフはフレイヤが世話をしている犬と猫を連れてきました。


「そして寝ているフレイヤに犬を放つ、ついでに猫も」


 放した犬たちは寝ているフレイヤの匂いをかいでいましたが、次第に眠くなったのか犬たちもフレイヤの傍に横になりウトウトし始めました。猫はフレイヤの胸の上で眠り始めました。

 その頃、フレイヤの夢では乗っていたフカフカした雲がどんどん大きくなりました。雲を触るとモフモフしていて気持ちがよさそうでした。


「ふわあ、フカフカで気持ちいいな。モフモフだし、ポカポカする」


 このままムラムラの所まで行くぞと意気込んでいましたが、途中で寝ちゃいそうと思いました。そして夢の中でまた寝るとどうなるのかな? とも考えていました。


 気持ちよく寝ている事を確認してリーフはフワフワな毛が付いた草を持って来ました。


「えっと、このフワフワな毛でフレイヤをくすぐるっと」


 リーフはフレイヤの耳や顔、首を草でくすぐりました。すると夢の中でフレイヤは雲にくすぐられて笑ってしまいました。


「もう、くすぐったいな。これはコチョコチョだな」


 クスクスとフレイヤは笑うのを見て、リーフはうまくいっていると思いました。

 でも気持ちよさそうに眠っているフレイヤを見て、リーフはあくびをしました。


「うーん、私も眠くなってきちゃった。私も寝ちゃおうかな……、いや、ダメ。フレイヤは王様になるための試練をしているんだから」


 気を引き締めてリーフはタライの中にいる友達の海の魔獣でもあるタコとイカに計画を話しました。彼らはお話しが出来る生き物です。


「いい、フレイヤがムラムラを探すためにはタコさんとイカさんの力が必要なの!」

「分かった」

「頑張る」

「ありがとう! あのね、イカさんとタコさんをフレイヤの身体に置くから踊ってね」

「分かった。でも僕達は海の生き物だから、すぐに海水の入ったタライに戻してね」


 タコさんとイカさんの言葉にリーフは「もちろん」と言って、二匹をフレイヤのお腹に置きました。

 夢の中ではお腹に冷たいものが降ってきてフレイヤは不思議に思います。


「何だろう? ムニュムニュしている?」


 フレイヤが不思議に思っていると、冷たい塊は突然激しく動き出しました。


「それそれ! タコおどり!」

「よいよい! イカおどり!」


 そうです。タコとイカがフレイヤのお腹の上でダンスをしていたのです。突然動き出してびっくりした上にくすぐったくて、フレイヤは「うひゃ!」と叫んで飛び起きてしまいました。


「うわ! 冷たい! くすぐったい!」

「あわわわわ、ちょっと待って!」


 びっくりしてのたうち回っているフレイヤのお腹にいるタコとイカをタライに戻しました。

 飛び起きてしまったので傍で寝ていた犬とフレイヤの胸で寝ていた猫はびっくりして逃げ出しました。


「あー、驚いた」

「大丈夫?」

「うん、大丈夫。夢の中で雲に乗ってムラムラの所まで行ったけど、途中で冷たくて激しく動き回る奴が来て起きちゃった」


 その時、「何をやっているのですか?」と落ち着いているが威厳のある声が聞こえてきました。フレイヤのお世話や教育係をしている婆やがやってきました。


「犬と猫たちが慌てて逃げていきましたよ。それにフレイヤ、服が濡れてますよ」

「あ、婆や。えっと、リーフと一緒に夢の中でムラムラを探しに行っていました」


 婆やは眉間にしわを入れて「ムラムラ?」と聞き返します。フレイヤとリーフは怒られるって思いましたが、きちんと説明しました。


「なるほど。フレイヤは王様になるための試練で、ムラムラを探すために夢の中へ。そしてリーフはそのお手伝いを」

「でも見つける前に起きちゃいました」

「大丈夫です。別にムラムラを知らなくても王様にはなれますよ」


 フレイヤもリーフも「そうなんですか?」と言って、首を傾げました。


「夢の中で王様になる試練なんてありませんから。だって、夢の中に国民は居ますか?」

「居ないです」

「そう! 王様は国民のためにお仕事をするのです! 夢の中は本来、休むための場所ですよ」


 婆やは厳しい声でフレイヤとリーフに言い聞かせました。


「それじゃ、リーフは犬と猫を捕まえに行ってください。フレイヤは着替えてきなさい」

「はーい」

「はーい」

「あとフレイヤ、王様の試練と言って夢の中でムラムラを探せと言ったのは誰ですか?」

「シファンです」


 フレイヤがそう言うと、婆やが「やっぱり」と苦い顔をしました。でも二人は気が付かないで、リーフは逃げていった犬と猫たちを探しに、フレイヤは着替えに行きました。

 リーフが全部の犬と猫を捕まえて小屋に連れて行った後、フレイヤはタコとイカが入ったタライを持って来ました。


「リーフ! 犬と猫たちを捕まえてきてくれてありがとう」

「いえいえ、大丈夫ですよ」

「あと、この子達を海に帰さないといけないね」


 タライの中のタコとイカが「リーフ、忘れていたでしょ!」とちょっと冗談交じりに言いました。


「僕がタライを持って、海まで送るよ」

「ありがとう。でも残念でしたね。夢の中に王様の試練が無かったなんて」

「でも途中まで面白かったよ。フカフカした雲に乗っていて気持ち良かったんだ。夢の中で眠りそうになっちゃった」

「へえ、私も見てみたいです」



 そんな話をしながらリーフとフレイヤは楽し気に海へと歩いて行きました。






 一方、シファンは婆やと王様にこっぴどく怒られました。



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― 新着の感想 ―
[一言] 健全なお話で良かった! 目が覚めなかったらムラムラに辿り着いていたのかな^_^
2024/01/04 13:28 退会済み
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