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青春

 


 入学式までまだ少し時間がある。

 なのでしばらく西と話しをする事にした。


 ••••••というか俺たち以外誰も会話してない。

 不自然な静けさ。

 全員俺と西の会話に注目しているのは気のせいだろうか。



「猫守ってどこ中?」


「白峰中」


「へー知らないなあ」


「遠いからね」



 ッチ、いきなり中学の話かよ。

 萎えるぜ、西。



「西くんは?」


「俺はフジ中。ちなみに帰宅部だった」


「はぇー、それは意外。てっきりスポーツとか何かしてるのかと思った」


「ハハッ、よく言われる」



 西は少し苦笑いをしている。


 ていうかコイツ、こう見えてガリ勉かよ。

 そっちの方が意外だわ。



「ちなみに僕も帰宅部だったよ」


「ほう。高校では何かするのか?」



 うーん。

 部活ね。


 ハッキリ言って今の俺ならかなりいい線行くだろうな。

 というか普通に一流くらいには直ぐなれる。


 なんたってステータスオール10ってのは人類の到達点なんだから。


 だもんで、部活というのも全然アリだな。

 中学の頃は全く興味なかったけど、部活で無双するというのも夢がある。



「そうだね。部活動見学で良いところがあったら入ろうかな」


「へえ?スポーツ?文化系?」


「スポーツで」


「おお、マジか。マネージャー希望とかすげー事になりそうだな」


「確かに••••••」



 ったく分かってんじゃねーか西。


 この俺が入れば全国優勝間違いなし。

 学校中の女も俺の勇姿を目に焼き付けようとマネージャーに成りたがるだろうなあ。


 そんなくだらない妄想をしていると、西が半笑いで俺を見ていた。



「ハハッ、マジメに答えんなよ。面白いヤツ」



 なんだよ、クソッ。

 早速ボロが出ちまった。

 誤魔化すっきゃねえ。



「••••••なーんて、冗談だよ」


「嘘こけ、さっきのは素だね」



 ッチ、ハメやがったな西。

 舐めやがって••••••。



「なぁ、これからヨウって呼んでいいか?俺のことは宗一でいいぞ」


「••••••西で」


「おいおい冷たいな」



 ククっ、と笑う西。

 それに釣られて俺もニヤけてしまった。


 下らないやり取り。

 だが、これが意外に楽しかったりする。


 ••••••そうか。

 そういえばこんな会話をするのも生まれて初めてだったな。


 小中とイジメられ、俺には友達と呼べる奴がいなかった。

 そもそも周りも俺と関わろうとする理由がない。

 元々の俺はデブでブスだし、性格もお世辞にも良いとは言えない。

 まさに最悪だ。


 うん。

 イジメの標的くらいにしかならねーわ、こんな奴。

 俺も俺で環境も人間も周りの全てを恨んでいた訳だ。



 まあ、それもステータス操作を手にする前の話だが。

 今となってはどうでも良い過去だ。

 ••••••まぁ偶に思い出してイライラするくらいだ。


 しかし、そういう訳で俺は青春ってのに飢えていたりする。

 そう考えると、この下らない会話も良いスパイスだ。

 マジで高校ではアオハルしてやるぜおい!!




 その後も西と下らない話を続けていたが、すぐに中断することになった。

 教室のドアが開き、スーツを着た女が入ってくる。


 ••••••えぇ?



「はーい皆さん揃ってますね。これからこのクラスの担任を務める黄崎千尋(きさきちひろ)と言います。皆さん黄崎先生と呼んでください!」



 先生••••••先生?


 壇上に立ち、黒板に名前を書いている黄崎と名乗る女。

 その女は、どう頑張っても小学生くらいにしか見えない少女であった。


 ••••••おかしい。

 日本に飛び級の制度は無いはずだが。


 だが、そんな疑問を無視して少女は挨拶を続ける。



「まずは皆さん、入学おめでとうございます。この高校の試験をクリアしたという事は、皆さんとても優秀な生徒だと思います。

 私は皆さんがより大きく育ってくれるように厳しく指導していくつもりなので、頑張って着いて来て下さいね?」



 黄崎はウィンクをしたつもりなのか、両目を瞑っていた。


 ニワカに騒がしくなる教室。

 当たり前だ。

 教師と名乗る少女がどこからどう見ても教師に見えないのだから。


 しかし、黄崎はそれからストンと無表情になった。



「••••••ちなみに皆さん、先生の見た目を揶揄うと、反省文になります。これでも歴としたあらさ••••••大人のレディですから」



 ••••••アラサー?



「••••••そうなんです。実は先生、未だにお酒買おうとすると年齢確認されるんです。

 ですがコレからですよ?先生は今にアダルトなティーチャーに成るんですからっ!」



 フンスと鼻息を荒くしている黄崎。

 聞いてて悲しくなって来た。

 アラサーでそれだともう無理なんじゃ••••••。



「と・に・か・く、皆さん。先生に接する態度には十分気をつけましょうね〜」



 いや、笑顔だけど結構ヤなこと言ってんな。


 黄崎千尋。

 見た目的にはランドセルを背負っていてもおかしくない。

 いや、むしろ背負ってなきゃオカシイくらいだ。


 どこからどう見てもまごう事なきロリである。

 とにかくスーツが絶望的に似合ってない。

 可愛らしい顔をしてるけど……将来に期待もくそもねえな。


 ••••••いや、一部の界隈では絶大な支持を得そうではあるけど。



「おい見ろよヨウ、あの子先生だって!小学生にしか見えね〜」



 西が身体だけ振り返り、俺の肩をバンバンと叩く。


 全員唖然として西を見ている。

 ••••••声でけーよコイツ。

 バカなの?



「はいそこの2人、後で職員室に来てくださいね〜」



 黄崎は目の笑ってない笑顔でこちらを見ている。

 ••••••え、俺もなの?




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