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出会い

 



 人間、やっぱり顔なんだよな••••••。

 香苗も梓も、俺が最初からイケメンだったらここまで拗れる事は無かったかもしれない。


 ••••••まぁ意味のないIFか。

 むしろアイツらのクズな本性が知れて良かったですわ。




 俺はあれから部屋へ戻り、一旦着替えてから外へと繰り出していた。


 ちなみに梓は部屋から消えていた。

 恐らく自室だろう。

 今ごろどんな様子なのか、気になるような、どうでも良いような……。


 あ、そういえば俺の服も全てこの身体用のものにサイズが調整されていたな。

 自然すぎて全然気づかなかったけど、改めて猫の神様ってすげーなと思った。



 見慣れた街並みを歩く。

 とはいえ向けられる視線は全くの別物だ。

 道ですれ違うたびに二度見される。

 それのすごい事すごい事。


 流石に声をかけられる事はまだないが、逆ナンも時間も問題かも。(笑)

 モテ期到来かな!?



 10分ほど歩き、駅に近づくにつれ活気も大きくなって来た。


 3月の末という事もあって、春休みの学生たちで賑わっている。

 みんな束の間の休日をエンジョイしているのか。


 俺にとっては新しく始まる高校生活という地獄へのカウントダウンだが。

 しかし、それも昨日までの話。


 今はそれ程嫌じゃない気がする。

 いや、むしろちょっと楽しみだ。


 正直、新しいこの見た目で高校生活を始められる事にワクワクしている。


 高校ではモテちまうんだろうなぁ。

 っっっったく面倒くせーなおい!(感激)



 そんな事を考えていると、あっという間に目的地に到着した。


 やって来たのはペットショップだ。

 俺はいつもここでアミーゴへのお供えチュールを購入している。


 本当なら毎週末に通っていたが、今朝猫の神様のご加護も頂いたこともあり、予定を変えて今日やって来た。



「おお、いらっしゃい葉くん」


「あ、どうも」



 店に入り、顔見知りのおじさん店長とあいさつを交わす。

 常連ということもあって、いつの間にか世間話までする間柄になってしまった。

 ……ちなみに俺の唯一の会話相手でもある。



「珍しいな、土曜日以外にくるなんて」


「そうですね、猫ちゃん見るついでにいつもの買いにきました」


「そうか、そういや今は春休み期間か。相変わらず猫一筋ってかんじだな」



 おじさんはハハッと笑った。

 俺もつられて笑う。


 ……俺の唯一の会話相手である。



 俺は挨拶もそこそこにペットショップ内を巡る。

 にゃーにゃーと耳に優しいBGMのほうへ足を進めた。

 猫ちゃんコーナーはやはり人気があって、人もそれなりに居る様だった。



「うへへ~、かわええのぅ」



 俺がしゃがみ込み、柵越しに指をやると、子猫たちが群がってぺろぺろと舐めてくる。


 昔から、なぜか猫にだけは異様に好かれるんだよな。

 名前も猫守ネコガミだし、なにか波長があうのかもな。


 しかし、その中でも一匹の真っ白な猫が懸命に俺の指をぺろぺろしていた。

 ……どことなくアミーゴに似ている気がする。

 すげー可愛いなぁこいつ。


 そんな呑気なことを考えていると、



「すごい!それどうやってるんですか?」


「うひっ」



 背後から突然、女が声をかけてきて変な声を上げてしまった。

 猫たちもビックリして逃げて行った。



「あぁ……」


「あっ、申し訳ありません。急に声をかけて……」



 白猫が行ってしまった。

 残念だ••••••。

 まぁ次の機会にしようか。

 今日はお参りが本筋だし。


 俺は苦笑いしながら振り向いた。



「大丈夫ですよ。もう帰るところなので」


「えっ、あ、はい……」



 しかし、女は俺の顔を見て固まってしまった。

 なんだ?と思ったが、すぐに気が付いた。


 俺、すげーイケメンじゃん。

 この女見惚れてんな絶対。

 クケケ、運命感じちゃった?

 まぁしょうがないと思うよ、俺でもそうなるもんきっと。



 徐々に顔を赤く染めていく女を観察する。


 歳は同年代くらいか。

 真っ黒の長い髪、透き通るような白い肌。

 品のいい整った顔立ちをしていた。

 上流階級というかそんな感じの、落ち着いた雰囲気がする。

 そういえば言葉使いも丁寧だしな。

 ゆったりした服を着ているのでスタイルこそ分からないが、これは相当いい体をしていると見た。


 というか、今まで見てきた中でもとびっきり可愛い気がする。



「ではこれで」



 とはいえ別にこれからの人生で関わり合いになるとは思えない。

 俺はさっさとチュールを買ってお参りに向かうことにした。



「ま、待ってくだひゃいっ!」



 ガシッ、と腕をつかまれた。

 驚いて真っ赤な顔の女を見る。

 ……ってか腕痛ぇ!

 馬鹿力かこの女!?



「う、あ、ね、猫のアレ、スゴかったです!」


「は、はい、ありがとうございます••••••」


「よ、よかったらどうやったのか教えて頂けませんか?」


「わ、分かりました。お、落ち着いてください」


「いっ、あっ、す、すみません……」



 女は申し訳なさそうに手を離した。


 ってかマジ痛ぇ……服に隠れて見えないが、これ絶対跡になってるやつ……。


 クソッ、なんなんだこのゴリラ女。

 自分が可愛いと思って調子に乗りやがって。

 もし俺が飼育員だったら3日は飯抜きだぞ、これ。



「あの、本当にすみません……。もし医者に受診されるようでしたら、全額負担させていただきますので」


「い、いやいや、大袈裟ですよ。全然大丈夫ですから」



 ……な、なんか怖いぞこの女。

 関わったらヤベー匂いがプンプンしている。

 ここはさっさとやること済ませてトンずらしよう。



「えっと、猫ちゃんが指舐めるやつですよね?実は僕もどうやってるのか分からないんですよ。こうやっておいでーってすると、ほら!」


「わ、ほんとだ、すごい……」



 女は俺の指に集まる猫に目を丸くしていた。

 そう素直に感心されるとちょっとくすぐったいな。


 しかし、さっきの白猫がまたやって来て熱心にぺろぺろしだした。

 なんこの子かわゆぅ。



「ね?」


「は、はひ……」



 俺が微笑むと、女はまた顔を赤くした。

 もう反応するのも面倒だな。



「じゃあこれで失礼しますね」



 俺は白猫と離れることに少し名残惜しく感じつつも、本来の目的に戻ることにした。



「お前もまたな」



 最後に白猫の顎を撫でて立ち上がる。

 しかし、俺の行く先に女が立ちはだかった。



「あ、あの、よかったら先ほどのお詫びも兼ねて、お、お茶させてくれませんか……?」


「すみません、ちょっとこれから用事があって」


「じゃ、じゃあ、用事が終わってからでも、何なら後日でもいいので!」


「い、いや、そこまでのことじゃないですから。本当に気にしないでください」


「いえっ、気にします!お願いです、お茶してください!」



 女はガバッと頭を下げる。

 このまま土下座しそうな勢いだ。


 ……もうヤダこいつ。

 周りの目もすごいことになっている。



「わ、分かりました。じゃあまた今度お茶しましょう。だから頭を上げてください」


「ほ、本当ですか!?やったぁ!えへへ……」



 女は心底嬉しそうにニヤけている。

 ま、まぁここまで喜んでくれるなら悪い気はしないな。



 しかし、改めて思うわ。

 人間てやっぱり顔だよなぁ、と。




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