義妹
客観的に見て美少女だと思う••••••認めたくないが。
歳は俺の一つ下で14。
色白の肌にスレンダーな身体つき。
勝ち気そうな目をしているが、クラスに居たら絶対に一番か二番手にはなるだろう綺麗な顔立ち。
サラサラの黒髪をツインテールにしており、ガキっぽいが確かに似合っていた。
だが、性格に関しては最悪の一言。
顔を合わせるたびに俺を下に見ては、悦に浸っている。
罵詈雑言は当たり前、人のオヤツは勝手に食べ、仕舞いにはそのせいで太ったと殴ってくる。
理不尽の塊。
俺が手を出せばヒステリックババアが飛んで来る為、耐え凌ぐしかない。
それが俺の義妹、梓だった。
なぜ••••••?
なぜ梓が突然やって来たのか。
俺に容赦ない奴だが、これまで流石に部屋に入ってくる事はなかった。
それが、よりにもよってなぜ今やって来るのか。
てかノックしろよクソが。
いや、それよりも落ち着け。
今大事なのはこの場をどう乗り切るかだ。
客観的に見た現状はこうだ。
兄の部屋へやって来た妹。
しかし、そこに居たのは見知らぬ不法侵入者だった。
••••••クソッ、マジで何しにきやがった。このアマ!
通報でもされたらどうする?
警察沙汰は死ぬほど面倒そうだ。
俺が葉であるという証明をしないといけない。
てか出来んのか?そんなこと••••••。
俺が対応に困っていると、梓は俺を一瞥し、すぐに視線を逸らした。
そして当たり前のように部屋へ入ってきて、俺のベッドへと座った。
「••••••」
「••••••」
お互い無言。
だが、挙動不審な俺に対して、梓に焦ったような素振りはない。
というか、普通にベッドに寝転んで、スマホを弄り出した。
••••••どういう事だ。
なぜ叫ばない?通報しない?
そのベッドさっきまで葉が寝てたんだぞ、気持ち悪くないのか?
疑問が溢れて口から出そうになる。
だが、パクパクするだけでだけでうまく言葉が出ない。
「••••••なに?」
マジマジと梓を眺めていると、急に振り向いて俺を見据えた。
俺の視線が不快なのか、若干不機嫌そうだ。
「別に••••••」
俺は目を逸らして答えた。
くそ、なんで俺がヤキモキしないといけないんだ!
というか、だんだんと俺もムカついてきたぞ。
そもそも、なに?は俺のセリフだ。
お前こそ何だいきなり、部屋にやって来て当たり前みたいに過ごしやがって。
ここは俺の部屋だっての。
本当なら叩き出してやりたいが、ババアもうるせーし後のことを考えると面倒だ。
深呼吸を一つ。
俺は思い切って核心をついてみた。
「なんの用だよ」
梓を睨む。
本当に顔だけは良いんだよな••••••クズだけど。
「フンっ、別に用なんて無いし」
しかし、梓はツーンとそっぽを向いて答えた。
プッツーン、なんだこのクソガキ。
いちいち人の神経を逆撫でするのが上手いな!
「用がないなら俺の部屋から出てけよ!」
「私の勝手でしょ、バカヨウ」
「グギギ••••••」
落ち着け、冷静になるんだ葉。
こんなのいつもの事じゃないか。
THE・理不尽の塊。
この前も俺が楽しみにしてたアイスを勝手に食べられた挙句、違う種類を買っとけと殴られたんだ。
••••••酷くないか?
だが、それに比べたらなんて事はない。
フーッ、大丈夫だ、大丈夫。
俺はできる子。
••••••落ち着いてきた。
しかし、なんだ。
やはり俺を葉だと認識できているのか。
安心安心。
猫の神様のパワーが働いて認識が変わったとか、何かしらのご都合主義的なアレかな?多分。
まぁ一瞬で美容整形なんざ屁じゃないレベルの進化をしたんだから、今更驚くようなことじゃないか。
俺に都合が良すぎて笑えるな。
後でもう一度猫の神様に祈祷しておこう。
ただ、せっかくの上気分もコイツがいたら台無しだ。
俺は立ち上がり、部屋を出ようとした。
しかし、
「あ、待ってよ!••••••ヨウ」
それは梓の焦ったような声で止められてしまった。
梓は身体を起こしていた。
心なしか頬も赤く、目をキョロキョロさせている。
あー、うー、と口から呻き声も漏れていた。
な、なんだ?
今までに見たことのない反応だ。
本当に何の用だ?
そもそも、コイツは用があるなら簡潔に、なおかつ高圧的に伝えてくるはずだ。
それが、このしおらしいメスガキはいったい誰?
「ど、どうした?」
なんだか俺まで吃ってしまった。
「••••••遊んでよ」
「••••••」
••••••。
••••••••••••。
••••••••••••••••••。
••••••はぁ?