表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

変化

 


 目が覚める。

 どれくらい寝ていたのか。

 目覚ましを見ると、1時間近くが経っていた。


 何だったんだあの眠気は。

 手術前の麻酔があんな感じだろうか。

 とても抗える物じゃなかった。



 しかし、妙に気分が良い。

 フワフワと体も軽い気がする。

 一度ノビをしてベッドを降りる。



「っと、その前に」



 念じてステータスを呼び出す。

 ブンッ、という謎の音と共にボードが現れた。


 念の為に確認してみた。

 夢じゃない••••••。

 そのことに少し安堵しつつ、ステータスを詳しく見てみる。



『ステータス』


 容姿10


 ポイント1




 ちゃんとポイントが割り振られている。

 残りポイント1。

 ••••••やっちまったか?


 い、いや、1ポイント有るだけマシなんだ。

 本当なら10ポイント全部割り振りたかったのに。

 俺の慎重な性格に感謝しよう。


 容姿10


 容姿が元の数値の10倍。

 つまり10倍イケメンになったって事だよな••••••。


 ••••••ど、どうなんだ。

 元が悪すぎて全然ピンとこない。


 俺が考えた法則だと5が平均だから、少なくとも平均的な顔の2倍はカッコいいはず。


 き、気になる••••••!


 高鳴る鼓動を抑えつつ、俺は部屋を出た。





 ###





「こ、これが俺••••••」



 洗面所。

 鏡に写った自分の姿を見て、俺は呆然とした。



 細い肢体、真っ白な肌。

 鏡の中のそいつは、中世的な顔立ちをしていた。

 優しげな目元と困り眉、整った鼻筋に桜色の唇。



「10倍とか2倍なんてレベルじゃねぇ••••••100倍だ」



 可愛いとカッコイイの両立。

 男でも女でも、この顔で微笑んだらイチコロだろ。


 これが容姿10。


 貴重なポイントの大部分を失ったが、微塵も後悔が湧いてこない。

 理想以上の容姿になってしまった。


 これ以上ポイントを割り振ったらどうなっちまうんだ。

 ちょっと想像がつかない。

 少し気になるけど、流石に勿体ないか。


 いや、逆にこの顔すげー気に入った。

 これが変わるくらいなら、もう容姿に割り振らなくてもいいな。



 鏡の前でいろんな表情を浮かべて遊んでみる。


 笑った顔に怒った顔、悲しい顔、悪戯っぽい笑み。

 そのどれもが自分でもキュンキュンとしてしまう。

 特に悪戯っぽい笑み。

 こんな顔他人に見せたら押し倒されるんじゃねぇか?



「俺、エンジェルすぎる••••••」



 頬に手を当ててウットリ。

 側から見たらクソナルシストだが、仕方ないと思う。


 だってあの腐った目をしたゲロ不細工が、今や世紀末美少年にビフォーアフターしたのだ。

 なんなら一日中鏡を見て過ごしたいくらいだ。



「うぅぅ、猫の神様、アミーゴ、ありがとうぅ••••••」



 両手を合わせ祈祷。

 天国にいるアミーゴ、俺カッコよくなったよ••••••。





 ###





 一頻り鏡で楽しんだ後、部屋に帰ってきた。

 まだ物足りなかったが、家族に遭遇しても面倒だ。


 というか今の見た目だと完全に別人なんだが••••••。

 そういえば元の面影が微かにあるかな?程度だ。


 かなりやばい気がするけど、後悔は微塵もない。



 ちなみに俺の家族構成は俺含めて4人。

 クソ親父とカス義母にゴミ義妹、そして俺。

 親同士が再婚してできた仮初の家族だ。


 俺は親父の連れ子で、義妹は義母の連れ子。


 家族仲はすこぶる悪い。

 親父は家政婦欲しさに再婚、義母は完全に金目当てだった。

 その親父もここ最近は家に帰らず、何処ぞで遊んでいる。


 義母は基本的に俺の存在を無視し、自分の娘だけを可愛がっている。

 義妹は義妹で俺に容赦がなく、気に入らないことがあったら殴ってくる。


 殴り返してもクソババアがヒステリックに叫ぶだけだ。

 なので俺の方も基本的に干渉しないようにしている。



 まぁいいさ。

 生活費はちゃんと渡されるし、金にゃ困ってない。

 アイツらは一緒に住んでいるだけの他人なんだ。

 そのうち家を出て、完全に縁を切るつもりだ。



 とまぁこんな感じの家族だが、流石に今の俺を見られたら通報されかねない。

 面影があるとは言え、見知らぬ男が家に居るんだからな。

 どうするかな••••••。



 そんなことを考えていると、ガチャ、と部屋のドアが開いた。

 顔を覗かせたのは義妹ーーー梓だった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ