お遊び番外編:大宴会! その3. アルファードのキャベツ
里菜の甘い夢想は、ローイのがさつな大声で破られた。
「う~ん、うまいことはうまいけどよ、なんか、お上品過ぎて、食ったんだか食ってないんだか分かんねえな、これ。いくら食っても食った気がしなくねえ? 俺はもっと腹が膨れるものがいいなあ。ま、女の子にプレゼントするにはいいかもな。……お、アルファード。遅せーよ!」
ローイの視線を追って振り向いた里菜は、こちらに歩いてくるアルファードの姿を見て、思わずあんぐりと口を開けた。
いつもと同じ質素な普段着のアルファードは、下葉に泥が付いたままの大きなキャベツを両手で一山抱えていたのだ。ごつい革の長靴にも、キャベツ同様、泥がついている。たぶん、今の今、裏の畑でキャベツを獲って来たのだろう。
大またでずんずんと歩いてきたアルファードは、
「遅くなってすまなかった。行こう」と言って、そのまま立ち止まらずに、道端で立ち止まっている三人を追い越して行った。三人が後からついてくると確信して、振り返りもしない。
三人は顔を見合わせて、慌てて後に続いた。
里菜は小走りにアルファードに追いついて、こわごわ尋ねた。
「アルファード、それ――キャベツ、どうするの……?」
アルファードは表情も変えずに平然と答えた。
「煮る」
「そ、そう……」
里菜は、それ以上尋ねる勇気が無かった。たぶん、これが彼の宴会への手土産なのだろう。むこうで厨房を借りて自分で調理するつもりだろう。それにしたって、泥付き・虫食いだらけの丸ごとのキャベツが一山……。
里菜の気持ちは、ローイとヴィーレが背後でひそひそ声で代弁してくれていた。
「なあ、こいつと一緒に行くの、恥ずかしくねえ? 俺、他人のふりしようっと……」
「あ、あたしも……」