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やさしいところ  作者: 英金瓶
7/11

冬美

~これまでのあらすじ~

 ある夜、千成かずなりのもとに姉の冬美からLINEが入った。

それは、大好きなおばあちゃんの逝去を報せるLINEだった。


千成は次の日おばあちゃんちへと向かい、そこで懐かしい思い出とともに今までの自分の愚行を悔いた。


やがて十数年ぶりに再会した従姉の亜妃に「わたしにも後悔していることはあるよ。」と告白され、千成はその後悔『おもうところ』を聞いた。




『カクヨム』様にて投稿させて頂いております短編小説“やさしいところ”の長編編集作第7話となります。

お読みいただけましたら幸いです。


英金瓶


 あきねーにも後悔おもうところはあった。


一昨年からここに帰っておばあちゃんと一緒にすごしていても、その後悔おもうところは未だなんの応えも示さないまま心のどこかで燻っていた。


それでもあきねーは、いまでもここで笑顔でいられた。



なら僕はどうだろう。


これからもここに来てちゃんと笑えるだろうか。


それともまた、ここからは足が遠退き逃げることになってしまうのだろうか。


 いや、僕はもう逃げない!逃げたくない‼


あきねーの曇りない笑顔を見てそう思った。


僕も、あきねーのように笑いたいと。

また、あきねーたちと一緒に笑いたいと・・・・・・。




あれから僕は、いつの間にか日付が変わっていたことに気づくと、おばあちゃんに「また来るからね。」と約束をして帰り支度を始めた。


僕がそうして帰ることをあきねーに伝えると、あきねーは少し不安そうな表情かおをして

「おばあちゃんの御通夜と告別式、明日と明後日なんだけど・・・・・・来るよね。」と、念押ししてきた。


大好きなおばあちゃんとの最期のお別れだ。

僕が来ないはずがない。


なのに、あきねーは・・・・・・。


だから僕は「明日はさ、おばあちゃんの大好物だった季乃家きのやさんの塩えんどう持ってくるからさ。」と約束をして、あきねーの笑顔をいざなうつもりで笑顔を贈った。


するとあきねーは、ほんの少しだけ笑顔を見せて「うん。」と小さく返してくれた。


そうして僕は、おばあちゃんちをあとにした。




~翌日~

僕はおばあちゃんの大好物だった季乃家さんの塩えんどうと、みんなの大好物、特にあきねーとあきねーの伯父ちゃんがとても喜んでいた栗甘納豆を手土産におばあちゃんちへと向かった。



昼前ぐらいに近くまで来ると、僕はあきねーにお昼どうするのかと電話をかけた。


「あ、もしもし?あきねー・・・・・・・。」


すると電話の向こうからは「ちょっと!冬美ちゃん!!」というあきねーの声に被って、聞き覚えのある声が応えてきた。


「もしもし。どちら様でしょうか?」


この毒気が強い嫌味な言い方。


声の主は、予想外の姉ちゃんの冬美だった。


僕は即座に電話を切ってやろうと思ったけど、あとでどんな因縁を吹っかけられるかわかったもんじゃないから、テキトーにあしらうことにした。


「あれ?この電話は小林亜妃さんの携帯電話ではありませんか?わたくし、坂本千成と申します。亜妃さんの従弟いとこなんですけど、間違えてしまったみたいなので改めてかけなおさせていただきますね。バッハッハ~イ。」


ブチッ・・・ツー・ツー・ツー・・・・・・・。


やった!

やってやったぜ!!


切れる間際の向こうでは、冬美のチッ!という舌打ちが聞こえた。


僕は可笑しくてその場で腹を抱えて笑った。


すると、すぐさま折り返しの電話があきねーの番号でかかってきて、僕は冬美の報復を薄っすらと予感しながら電話に出た。


「・・・・・・もしもし。どちら様ですか?」


「あ、もしもし?ごめんね。」


かけ直してきたのはあきねーだった。


「あ、なんだ~あきねーか♪」


あきねーは電話の向こうで笑いながら、冬美に携帯を奪われたと話し「ごめんね。」と謝ってきた。


 そんなこったろうと思ったよ。


「大丈夫、大丈夫。それよりごめんねこちらこそ。いい歳してお子ちゃまな姉ちゃんの相手してもらっちゃってさ・・・・・・。」


僕がそうして姉ちゃんを小馬鹿にしたような言い方であきねーに話すと、電話はいつの間にかスピーカーになってたらしく、向こうでは冬美が「なんだとー!」と息巻いてきた。


 あきねースピーカーになってるならそう言ってくんないと・・・・・・。


するとあきねーは、僕と姉ちゃんのやりとりに高らかと笑い「あんた達ってほんと仲いいね。」と、少し羨ましそうに言ってきた。


 僕らのどこが仲いいものか。


冬美あのひとは隙あらば突っかかってくるし、そうなったらなったで僕も負けじとやり返すし・・・・・・。


僕らこそまさしく犬猿の仲だ。


ちなみに猿は冬美の方だが。


僕がそういったことをあきねーに話すと、その後ろからはふゆみが罵声を浴びせてきた。


「誰が猿だ!このスズムシが‼」

「ス、スズムシ?!スズムシってなんだよスズムシって。それ馬鹿にされてるのかよ!」

「はんっ!そんなことも分かんないのか!だからあんたはスズムシなんだよ!」

「はぁ?!だからわかんねぇっつーんだっ!」

「あっはっはっはっはっは。」


そんな僕らのバカバカしいやり取りに、再び声を高らかにして笑うあきねー。


僕はそんな楽しそうに笑っているあきねーに「もう姉ちゃんはほっとこう。」と本題を切り出した。


「あのさあきねー、いま近くまで来てるんだけどさ、お昼ごはんとかどうした?あれだったらさ、僕買ってこうかと思って、昨日は御馳走になっちゃったし。それで電話したんだ。」


電話の向こうからは、大笑いしていたあきねーが呼吸を整えている息づかいが。


すると、そのあきねーの隙をついて、またもや冬美が割って入ってきた。


「ケンタ!うちの子ケンタ好きだからケンタ買って来てよ!・・・・・・ケンタ好き―フライドチキン!なんちって。」

「・・・・・・・・・・・・。」


しゃしゃり出てきたうえ、最後にはダジャレまでぶち込んできたふゆみ


僕は返す言葉なく無言でいた。


「お、おい!放置かよ!それはやめろよ恥ずかしいからよー!」


その本音に、僕は思わず吹いてしまった。


「わかったわかった。どれくらい?10ピースぐらいあれば足りる?」


すると姉ちゃん、調子に乗ってとんでもない数を注文してきた。


「バケツ二つ!」

「バ、バケツ二つ?!・・・・・・。」


姉ちゃんの言うバケツとはバーレルのことだ。


「うん、そう。バケツ二つ。あとポテトもね。二箱。」

「は、箱ぉ?!それも二箱ぉ?!」

「うん。そう。うちの子ポテトも大好きだから。よろしくねー、カーズーイーツ。」


ブチッ・・・ツー・ツー・ツー・・・・・・・。


姉ちゃんはそう言って電話を切った。


あきねーの電話なのに・・・・・・。


僕は『会社から車借りてきてよかったー・・・・・・。』と心底思った。


バイクで来てたらバーレル二つもなんてとてもとても・・・・・・。


ま、問題はそこじゃあないんだろうけど・・・・・・。



こうして僕は、フライドチキンをバーレルで二つとフライドポテトをBOXで二箱。そしておばあちゃんに塩えんどうと栗甘納豆を手土産に再びおばあちゃんちへと向かった。



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