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天下一の向日葵  作者: 茶眼の竜
第一章 転生天下人
8/50

七日目 家族揃って

一五三九年(天文七年) 八月 我が家


  俺が特訓をし始めてから数日後。

  日が暮れて、就寝しようという時に父、菊次郎(きくじろう)が帰ってきた。

  父さんはとても筋肉があり、農民というより格闘家に見えた。

  切り傷が複数あったが、幸いにも大きな怪我はなく元気な声で言った。


「今帰ったぞっ!!」

「ご苦労様でした、菊次郎さん」

「おおっ!(すず)、今日も可愛ええのぉ!腹もだいぶ大きくなって!」


  そう言って父さんは母さんのお腹に頬擦りをした。

  母さんは照れていた。


「もぉ、まだ子供が起きてるでしょ!」


  それを聞いた父さんは俺の方に振り向いた。


「おお!菊吉(きくよし)(らん)、元気だったかー?!父さんはずっとお前たちの事を思っておったぞっ!それに隣村のやつにもお前たちの可愛さを伝えてきた!」


  おいおい、まじかよ。

  戦の中ずっと言いふらされる子供たちの気持ちになってみろ。

  想像しただけで恥ずかしくなる!


「おかえりなさい」

「んん?元気がないなー。せっかく遊んでやろうと思っていたのに」


  いや、元気すぎでしょ!

  とても戦から帰ってきた人とは思えんぞ。


「さぁさぁ、もう寝る時間よ!遊ぶのは明日にしましょ!」


  こうして俺が菊吉となって初めて家族全員が揃った。

  次の日、朝食の時に父さんは口を閉じることなく永遠と話し続けていた。


「菊吉、俺のいない間、母さんと蘭を守ってくれてありがとう!今日からは俺が母さんの手伝いをするから、ゆっくりしてるといい」

「うん」


  やったー!

  これで特訓に集中出来る!

  でも父さんは仕事ないのかな?


「父さん、仕事はどうするの?」

「今は灌漑してる所だが、俺が一人居なくたって大丈夫さ!それに手伝いが終われば行くと伝えてある。まぁ、なんとかなるだろう!!」


  そう言って父さんは口を開け、大きな声で笑っていた。


  さて、俺は食べ終わったし、また森にでも行くか。


「ご馳走様、それじゃ、行ってきます!!」


  母さんの手伝いは父さんがやると言っていたので、すぐさま家を出ようとしたが....


「待って!父さんが帰ってきたからって水汲みはサボっちゃだめよ!」


  母さん、そこは見逃してくれよ...。


  そう思いつつもちゃんと水を汲みに行った。

  その日はいつもより、村が活気に満ちていた。

  女性陣の顔も普段に比べて明るい気がする。


「あれ、菊吉じゃないか?」

「本当だ。おーい、久しぶりだな!」


  井戸の前に知らない男が二人いた。

  ん?もしかしてこの顔、若虎の兄貴と親父さんか?

  にしても....


「なんで、ふんどし一丁?!」

「おお、今から水浴びをしようと思ってな!」

「菊吉もやるか?」


  暑いし、汗でベタベタだけど、この小袖脱ぐとフルチンなんですけど。

  いや、五歳児だから別になんとも思われないだろうけど、中身は高校生なんだ!

  まぁ、村だし、高校生でもフルチン許されそうだけど...恥ずかしいじゃん!!

  こちとら、現代の思春期なんだわ!


「いや、俺は遠慮して....」

「おーい、菊吉ー!」


  げ、この声は...


「父さん?!」

「久しぶりに、一緒に水浴びをしようと思ってな!母さんに拭いてもらうのも飽きただろう」


  そう、昨日までは汲んできた水で母さんが体を拭いてくれていた。

  その時は家の中だったから見られるのは母さんと蘭だけだった。

  最初は恥ずかしかったけど、まぁ、母親と妹だし?いいかなって。


「菊次郎、いいところに来た!ちょうどオラ達も水浴びしようと思ってたところさ!」

「親子揃って仲がいいな!俺たちも黄助(きすけ)達に負けてられんな!なっ、菊吉?!」


  なっ、て言われても困るんだが。


「さぁさぁ、脱いだ脱いだ!」


  抵抗する余地もなく、俺はフルチンとなった。

  恥ずかしいのはそれだけじゃない。

  水を浴びた父さん達は張り合うように声を上げていた。


「かあぁぁああっ、気持ちいいぃっ!!」

「きいぃぃいいっ、最高だっ!!」

「くうぅぅううっ、たまんねぇなっ!!」

「けえぇぇええっ、まだまだっ!!」

「こおぉぉおおっ、もういっちょっ!!」


  井戸の周りではこれを見て村人全員が笑っていた。

  きっとこれはこの村の名物になっているに違いない。


「ほら、菊吉も!」

「....」


  うん。

  たしかに冷たくて気持ちいいよ。

  残暑にはピッタリだよ。

  でもね、恥ずかしくて死にそうだよ。

  そろそろ終わってくれないかな。


「こらっ!菊吉に馬鹿な事、教えるんじゃないよ!」


  ここで来たのが救世主の(さち)さんだ。

  ナイスっ!幸さん!!


「ほら菊吉、とっととこれ持って帰って、遊びに行ってきな!」


  そう言って、幸さんは水入り桶を渡してくれた。


「ありがとう!」


  俺はそれを受け取って、すぐさまその場から立ち去った。


「ああ、菊吉ー!!」


  せっかく早く森に行けるんだ。

  こんなところで時間を無駄にしたくない!

  すまない、父さん!!


「菊次郎さん...」

「ん、どうした、虎丸(とらまる)

「あの子何かあったんですか?」

「何かって?特に何も無いと思うが」

「いや、少し変わったと言うか」

「そうか?まぁ、元気になった事はいい事だ!」

「そう...ですね」

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも面白いと思ってくださった方や気になった方はブックマーク追加と評価をよろしくお願い致します!!

また、些細なことでも構いませんので、感想がありましたらそちらもよろしくお願い致します。

次回もお楽しみに

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