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天下一の向日葵  作者: 茶眼の竜
第一章 転生天下人
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五日目 森林探検

一五三九年(天文七年) 八月 村近くの森林


  ここが森か....。

  うん、普通の森だ。


「ね、森なんて怖くないでしょ?」

「そりゃね....」


  何か特別な何かがある訳ではない。

  強いて言うなら村から視線を遮ることが出来るぐらいだ。


  さて、森に来たものの、何をしようかな。


菊吉(きくよし)!組手しようぜ!」

「え?」


  組手?

  組手って空手の?


「はい、これ!」


  若虎(わかとら)が俺に渡してきたのは少し太めの小枝。

  当時の組手とは武人同志が自らの剣術の強さを比べるために行っていたいう。

  しかし剣術に疎い農民達には縁のない言葉だ。

  若虎はそのまねごとをしようと言うのだ。


「な、なるほどな。まねごとね。まぁこの体でどの程度出来るか試してみるのもいいかな」

「何か言ったか?」

「いや、なんでもない。早速始めようぜ!」


  要するにチャンバラってことだろ。


「よしっ!いつでもいいよ!」

「ではっ、いざ尋常に!」


  そんなこと言われたらニヤケてしまう。


  その隙に若虎は小枝を両手で振り上げながら突進してくる。

  それを俺は左に受け流し、小枝を回して横腹に一本いれる。


「な、なんだその技!!」

「ただの返し胴だよ!」


  返し胴とは剣道の技の一つである。

  剣道を知らない若虎にとっては何かの剣術にしか見えていない。

  若虎は初めて見る剣術にとても興奮していた。


「すごい!すごいっ!どこで教わったんだ?!」


 あ、こいつは剣道を知らないのか。


「え、えーと、今思いついただけだよ。こんなのは剣術なんかじゃないさ」

「なんだ、ただの思いつきかよー。...もう一度やろうぜ!」

「いいぞ!さぁ来い!」


  無我夢中に何度も挑んでくる若虎が面白くて、つい俺も夢中になってしまった。

  人は何かに夢中になると周りが見えなくなってしまう。

  ここがどこなのかさえも...。


  ...あれ?


「えい!」

「っっっいってーーー!!!」


  気付けば、若虎に一本決められていた。

  俺は得意のカウンターを決めようとジャンプしたが、前世のように高く飛ぶことは出来ず、そのままその場に落下したのだ。


「あははは!急に飛んで倒れ込むから、ピチピチと跳ねる魚みたいだったぞ!」

「ーーー///」


  何も言い返せない。

  自分でも顔が赤くなっているのがわかる程、火照っていた。


  くそっ、この体じゃ全く動けないじゃないか!

  これじゃあ、戦に出て活躍するなんて夢のまた夢じゃないか。

  特訓あるのみだな....。


  俺は横になったまま、若虎に問いかけた。


「若虎、夢は無いのか?」

「夢?夢は寝てみるもんじゃないのか?」


  五歳児に聞いた俺がバカだった。


「目標とか、なりたいものとかは?」

「僕は父さんのようになりたいな!」


  うーん、まぁ今は難しいか。


  俺は今のうちから一緒に高めあえる存在が欲しかった。


  あわよくば一緒に戦に出て、一緒に武功を上げて...なんてな。


  そう思い、質問を変えてみた。


「戦には出たくないか?」

「一度は出てみたいな!そして誰よりも敵を倒すんだー!」

「一度でいいのか?」

「そりゃ何回でもいいんだけど、僕には兄さん達が居るから。出たくても父さんが許してくれないと思う。」


  案外ちゃんと考えているんだな。

  俺は長男だから、余り関係ない話だけど。


「ねぇ、次は何する?!」


  流石は五歳児、元気いっぱいだ。

  確かに俺も全然疲れを感じない。


「次はー...。鬼ごっことか?」

「なにそれ?!!」


  この時代には鬼ごっこは無いのか?

  鬼ごっこくらいで、そんなに目をキラキラさせなくても...。


「鬼ごっこって言うのはな、"鬼"つまり、追う人と逃げる人をまず決めるんだ。で、鬼が逃げる人をタッチしたら交代する」

「た、たっち?」

「あ、鬼がその人に触れるってことね!」


  でも、二人だけだからな....。


「触れられたら、その場で交代して、三秒後追いかけるって事にしよう。わかった?」

「おう!要するに菊吉から逃げればいいんだな!」

「そーいうこと!じゃあ、俺が三つ数えたらスタートな?!」

「す、すたーと?」

「あ、始まりってこと!行くよ?ひとーーつ!」


  全く、横文字に慣れすぎてついつい使ってしまう。

  まぁ、これに関しては少しずつ慣れていくしかないな。


「みっつっ!!って、どこ行った?!!」

「おーい!こっちだよっ!!」

「おっ、"鬼さんこっちだ"ってか!」


  俺は急いで追いかけた。


  この鬼ごっこは、勿論特訓の一貫。

  前世でもやっていた、トレイルランニング、略してトレランだ。

  あえて、足場の悪い地形を走ることで普段使わないような筋肉を鍛える方法だ。

  が、それより....。


「若虎、速すぎっ!」


  いや、それもあるだろうが、俺が遅い。


  結局、その日は一度も捕まえることが出来ず、夕方となった。


「はぁ...はぁ...はぁ....」

「ははははっ!菊吉も大した事ないなぁ!」

「は、速すぎだよ!」

「これは、僕の秘めたる力が目覚めたかもしれんのぉ!」

「そ、そうかもしれんな...」


  確かに、あの速さは尋常じゃない。

  それに加え底なしの体力。

  本当に天賦の才かもしれん。


「さ、もう夕暮れだ。村に戻ろう」

「も、もう少しだけ...休ませて」

「仕方ないのぉ」

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも面白いと思ってくださった方や気になった方はブックマーク追加と評価をよろしくお願い致します!!

また、些細なことでも構いませんので、感想がありましたらそちらもよろしくお願い致します。

次回もお楽しみに

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