四日目 親友の若き虎
一五三九年(天文七年) 八月 我が家
「ねぇ、今日は若虎とどこまで行ってきたの?」
とりあえず情報収集を終え、家に帰った俺に母は聞いてきた。
若虎?えーと確か、雪さんとこの俺と同い年の子か。
「いや、一人で遊んでたよ」
「あら、昨日あんなに楽しみにしてたのに」
「若虎が来なかったんだ...」
と、人のせいにする俺。
すまない、名も知らぬ子よ....。
いや、名前は知ってるか。
「そう、それは残念だったわね。山菜採りかしら...。今は黄助さんと虎丸が居ないからきっとお手伝いね」
たしか、雪さんの旦那さんと長男の人だっけな。
「あそこの人達は山菜見つけるのがすごく上手なのよ!」
「へ、へぇ〜」
「あの人もたまに連れられてるしね」
母さんの言うあの人とは多分、菊吉の父親の事だろう。
「仲良いんだね」
「そりゃそうでしょ!幼馴染なんだから!あなたもいつも聞かされているでしょ?」
「そ、そーだったね...」
は、初めて知った...
「まぅま〜」
「はいはい、どうしたの蘭〜」
デレデレだなぁおい。
「あら、もぉ寝るの?」
「うん」
「そう、おやすみなさい」
「おやすみ」
俺は少し早めに床に着いた。
さて、明日はどうしよう。
今日で一通り村は見終わったからな。
後は過ごしながら慣れていくしか...。
そう言えば村の周りの森には行ってないな。
山菜も採れるようだし、明日行ってみようかな。
「よし、そうしよっ。ふあぁ、今日は疲れた...」
この幼い体であれだけ動けばそりゃそうか。
などと考えているうちに眠っていた。
そして、次の日。
昨日と同じく母の手伝いをした。
「今日もありがとう。もう遊びに行っても大丈夫よ!」
「はーい。いってきます!」
と、言ったものの遊びに行く訳では無いのだが。
「菊吉ーーー!!」
家を出てすぐの所で、名前を呼ばれた。
そちらの方に振り向くと、そこには男の子がいた。
髪は黒く瞳は黄色、背は俺より少し小さいぐらいだ。
しかし、誰かわからない。
「どうしたんだ?」
「昨日はごめん!遊ぶ約束してたのに、行けなくて。兄貴たちの手伝いで山の方に行ってたんだ」
そんな約束覚えてないが。
ああ、この子が昨日話に出てた若虎か。
「こんにちは、菊吉。うちの子がごめんね。菊吉と遊ぶって聞かなくて。」
あ、雪さんだ。
「いえ、大丈夫です!昨日遊ぶ約束してて、会えなかったので」
「なら若虎のことよろしく頼むわね」
そう言って雪さんは家へ戻って行った。
一方若虎の方はーー。
「ねぇねぇ何して遊ぶ?」
「んー。どーしよっか」
今日は森の方を調べようと思ってたんだが...。
ついでに遊ぶか。
「今日は森で遊ぼーよ!」
「お、いーぞ!早速行こう!!」
俺は小さくガッツポーズをした後、若虎について行った。
「わ、若虎?」
「ん?どーした?」
よし、呼び方はこれで合ってるな。
「え、えーと....。い、今いくつだっけ?!」
「ええ、菊吉と一緒じゃないかー。でもまだ四つだけどね!十二月で五つだ!」
「そ、そっかー....」
やばい!
ご、五歳児の会話ってどんなんだっけ?!
見た目はこんなんでも中身は高校生だぞ!
「なんか今日、菊吉変だぞ?」
「う...」
勘が鋭いヤツめ。
「す、少し森が怖かったりなんて、ははは...」
「なるほど!なら俺に任せとけ!父ちゃんによく連れて行って貰っていたからな!」
ふぅ。勘違いしてくれて良かったよ。
「さぁ!着いてこい!!」
「はーい」
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