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天下一の向日葵  作者: 茶眼の竜
第一章 転生天下人
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一日目 現代の自分


 高知県立坂本高等学校。

 略して坂高(さかこう)に俺は通っている。

 この学校の敷地内にはとても古い道場がある。

 この道場は江戸時代に建てられたもので、当時は剣術道場として使われていたが、明治時代に入り、廃刀令が公布され、剣術が必要無くなった時に道場は閉めたが建物自体は影を潜め、現在にまで残っている。

 今は武道場として授業や部活動で使用されている。

 部活動と言っても、武道場を使う部は限られている。

 よって今は剣道部が独占して使っている状態である。


 坂高の剣道部は地方の過疎化に伴い、部員数が他と比べて少ないものの、毎年一人は全国大会まで勝ち進む、強豪校の一つだ。

 今の部員数は俺を合わせてニ年生が三人のみ。

 三人いれば団体戦に出られるため俺は助っ人として剣道もやっている。


 どうして、夏休みの終盤にも関わらず、学校に居るかと言うと。

 もちろん、部活だ。

 だが、今は休憩中で武道場の傍にある大樹の影で寝転がっている。


日向(ひなた)ー。どーだったー?」


 俺に声を掛けてきたのは、幼馴染である立川(たちかわ) 虎太郎(こたろう)だ。


「ふあぁ....優勝したよ」

「どうせ圧勝だろ?」

「うん」

「そんなに強かったら、つまらなくねーか?」

「そんなことないよ。たまにマシな奴居るし。ってか決勝戦がそうだったな」

「お、珍しいね!どんな奴だったの??」

「....最初から最後までずっと守ってたやつ」

「なんじゃそれ。それはマシなのか?」

「ああ、あれだけ試合が長引いたの久々だし」

「で、どう決着付けたの?」

「少し隙を見せたら飛びかかって来たからそのまま返したった」

「日向、カウンター得意だもんなぁ。初見じゃあの技は誰にも止められんさ」

「そっちはどーだったの?」

「全国まであと一歩ってところで二人ともやられちまったよ」

「そっか。すまんな、団体戦で全国に連れて行ってやれなくて」

「いやいいって、お前は勝ってただろ。負けたのはアイツが....」

「おーーーーい!どっちか宿題終わってねーか?!夏休みあと二日しかないじゃん!!俺宿題終わってねーんだ!」

「噂をすればなんとやら」


 この元気な男は田中(たなか) 龍馬(りゅうま)だ。

 高校入学後、同じクラスと部活って事で仲良くなった奴。


「まだ宿題終わってなかったのかよ"りょうま"」

「"りょうま"じゃなくて"りゅうま"だよ!!何回言ったらわかるんよだよ!」

「ははは、すまんすまん。苗字も名前も普通だから名前の呼び方だけでも!だったな」


 そう、こいつの名前は"りゅうま"だ。田中なんて全国どこにだっている普通の苗字。

 高知県の有名人と言えば坂本 龍馬が一番に出てくるだろう。

 だから高知県民には龍馬って名前がとても多い。

 そのため、読み方だけでも変えてやろうと言う親の優しさが詰まった名前だ。

 しかし、優しさとは裏腹にこの名前はよく間違えられる。

 そしてよく弄られる。

 先生ですら読み間違えが多い程なのだから弄られるのも当然だ。


「宿題なら終わってるぜぇ!」

「まじか虎太郎!見せてくれ!!」

「んー、ここはジュース三本で手を打とうかな」


 龍馬は険しい顔をして悩んだ。


「ジュース二本で頼む!!」

「いいぜ!元々タダで見せてもいいって思ってたから」

「なんだよそれー」

「約束ちゃんと守れよ!日向はもちろん終わってるよな?」

「ふあぁ...まだ何も手付けてないよ」

「「は?!」」


 二人の声は全く同じタイミングだった。


「俺よりやばいんじゃね?」

「大丈夫。あと二日もある。なんならこのまま新学期が始まらないかもしれない」

「いや、そんな屁理屈、通用しないから。社会科は終わってんの?」

「俺の好きなところじゃないし、やってないよ」

「お前って毎年そうだよな。やばかったら言えよー。いつでも見せてやるから」

「サンキュー。あーあ。産まれてくる時代、間違えたかなぁ」


 俺の口癖である。

 剣道一本で育ってきた俺に勉強は完全にお荷物なのである。

 ただひとつを除いて。

 剣一つで実力が決まっていた今から約五百年前、戦国乱世を語っている日本史だけが、俺にとって唯一勉強での楽しみだった。


「さ、そろそろ部活戻ろーぜ!」


 虎太郎の一声で俺らは武道場へと戻って行った。

 しかしーーー、


 なんか今日やたらと眠いんだよな。

 自分の体の調子がおかしい。


「大丈夫か?」


 龍馬は気づいていないようだが、幼馴染の虎太郎は気づいていた。


「なんかずっとねむたいんだよな」

「軽い熱中症か?」

「かも。大会疲れでもでてきたかな」

「ならいいんだけど」


 稽古をする分にはなんら問題ないため俺はいつも通りのメニューをこなし、その日の部活動は終了した。


「これから、カラオケ行こーぜっ!!」

「お前、部活の後でよくそんな元気あるな」

「とか言って来るのが虎太郎さんだろ?」

「まーな」


 この二人はほんと楽しそうだな。


「日向はどーする?」

「ふあぁ....俺はパス」

「まだ調子悪いのか?」

「お前な、部活してたんだぞ。悪化はしても良くはならんだろ。流石、"りょうま"だな」

「おいっ!だからーーー」


 虎太郎の言う通りである。


「じゃ、二人で楽しんでくれ」

「ああ、早く治せよー」


 俺はその日、家に着くとそのまま眠りについた。


 まるで老人が衰弱死して行くように...。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも面白いと思ってくださった方や気になった方はブックマーク追加と評価をよろしくお願い致します!!

また、些細なことでも構いませんので、感想がありましたらそちらもよろしくお願い致します。

次回もお楽しみに

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[一言] 投稿がされてとても楽しみです 応援しています!
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