ファフニールVSフェンリル
試合が開始すると、ファフニールとフェンリルは姿を消した。
「消えた……?」
観客達はそう思った。
だが、闘技場の中央で二体は姿を現した。
ファフニールの前両脚とフェンリルの前両脚で取っ組み合っていた。
S級モンスターの怪力がぶつかり合う。
ドンッ! と衝撃が周囲に伝わる。
二体のあまりのスピードに二体の動きを誰も追えていなかった。
だから観客達は姿を消した、そう思ったのだ。
そのことを理解した観客は驚きの表情を浮かべていた。
『なかなかの力だな。フェンリルよ』
『お前こそ、予想以上だ』
『……くくく!』
『……ははは!』
目の前に現れた好敵手に心を躍らせる二体のS級モンスター。
二体は縦横無尽に闘技場内を動き回る。
並の魔物なら一発で仕留められてしまう攻撃の応酬。
まさに一進一退の攻防だ。
お互いの実力は拮抗しているように見えた。
「すげえ……」
観客の一人がボソリと呟いた。
今までの戦いとは、文字通り次元が違う。
そして、拮抗を破る一手を先に打ったのはファフニールだった。
『ではこれならどうだ?』
ファフニールは口から蒼炎を吐き出した。
だが、蒼炎はフェンリルに届かない。
フェンリルが纏う透明な風の鎧によって阻まれたのだ。
後方へと続く、蒼いカーテンが出来た。
『残念だったな。私にお前の魔法は効かない』
『それはお主が決めることではないだろう? 我が決めることだ』
『』
今度はフェンリルが動き出す。
右の前脚で地面をどすん、と蹴ると真空波が発生し、ファフニールに飛んでいく。
左脚でも地面を蹴ると、巨大な真空波が発生した。
フェンリルはこのように風を操ることに長けた魔物。
これぐらいの風の操作は容易い。
『ふんっ!』
ファフニールも同じように翼を勢いよく振るった。
その風でフェンリルの真空波を消してみせたのだ。
『なに……!?』
フェンリルは驚愕した。
まさかいとも簡単に真空波が破られるとは思わなかったからだ。
普通ならばありえない。
フェンリルが放った真空波は魔力を纏っている。
突風を切り裂き、ファフニールをも切り裂くはずだった。
だが、そうはならない。
(なぜだ?)
フェンリルはファフニールを倒すためにその原因を考えた。
『狼狽えておるな。そもそも我と貴様とでは種としての強さが違うのだ。獣は竜に勝てん』
『……何を言っている。まだ勝負は五分五分だ。お主も私の風の鎧を破れていないではないか!』
『ふむ。ならばすぐに壊してやろう』
ファフニールは翼を広げ、上空へ飛んでいく。
『なにをする気だ?』
フェンリルは空を見上げた。
ファフニールの高度はどんどん高くなっていく。
『この体では本気を出せないからな』
飛翔し、空を切りながら、ファフニールはニヤリと笑った。
そして次の瞬間、眩い光を放った。
見えるのは巨竜の影。
ファフニールの真の姿だった。
「あ、あんなデカかったのかよ……!」
「大きさ変わりすぎだろ……!」
観客達は空を見上げながら、目と口を大きく開けた。
「これがファフニールの真の姿ね……。フェンリル、ここが踏ん張る時よ」
ミーシャは苦笑いを浮かべていた。
ファフニールの姿に驚いていたのはミーシャも同じだった。
『この一撃、お前に耐えられるか?』
ファフニールは魔力を口に凝縮させていく。
夕方の空を碧い光が照らしだす。
「おいおいファフニール……そんなに本気を出して大丈夫なのか……?」
ノアは不安そうに言った。
今まで見せたことがないファフニールの本気。
それを目の当たりにして、この闘技場が無事で済むのか、とても心配だった。
(傍観していたら危なそうだ)
ノアは気を引き締め、何が起きても被害が出ないように対処しようと決意した。
ファフニールは口の前で蒼炎と魔力を混ぜ合わせていた。
魔力が凝縮された碧の球体が眩い輝きを放っている。
『空に飛んでいれば私が近づけない、とでも思ったか?』
フェンリルは空に向かって駆け出した。
風を蹴って、ものすごい勢いで進んでいく。
その間にフェンリルの纏う風の鎧が可視化されていった。
魔力を溜めていたのだ。
ファフニールの全力の一撃に対抗するために。
『いくぞ、ファフニール。これでお前を仕留める』
『くくく、面白い。先程の真空波よりも強力な一撃を期待しておるぞ』
そして、時は満ちた。
『くらうがいい──蒼魔炎球』
ファフニールは駆け上がってくるフェンリルに碧く輝く蒼炎の球を放った。
『風刃竜巻!』
幾千もの風の刃が魔力を帯びた竜巻をフェンリルは放った。
二つの大技は衝突。
凄まじい轟音と衝撃が大気中に伝播する。
だが、フェンリルの放った『風刃竜巻』をファフニールの『蒼魔炎球』が飲み込んだ。
『まさか……!』
フェンリルは気付いた。
ファフニールは最初の蒼炎を放った段階で風の鎧を破れることに。
アレはファフニールがフェンリルになす術がないと思わせるための作戦。
そして絶好のタイミングで大技である『蒼魔炎球』をくらわせることが目的だったのだ。
『私は絶対に負けられない!』
だが、フェンリルもファフニールと同様にまた怪物中の怪物。
風を蹴り、一瞬で空中移動。
『蒼魔炎球』の射線上から外れてみせた。
そしてファフニールの首に狙いを済ませた。
『仕留める!』
一直線に向かっていく。
ファフニールの巨躯では小回りがきくはずない。
接近してしまえばフェンリルに分がある。
そう思っていたが、フェンリルの動きに即座に反応したファフニールは一回転。
大きな尻尾がフェンリルに直撃する。
フェンリルは避けることが出来なかった。
と、いうよりも反応すら出来なかった。
(スピードが今までと違う……!)
地面へと落下していく中でフェンリルは気付いた。
(そうか……お前は最初から最後までずっと、本気を出していなかったのだな)
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