第2話
静かになった麿呂の横腹を一撫でして、依頼を再確認する為に携帯のメール画面を立ち上げる。受信フォルダのトップにある、先日知り合いから送られてきたメールを開いて目を通す。
最近家主に謎の怪我が頻発している、か······。
近親者に影響あり。家全体が悪いものに当てられている可能性あり、と。ふむふむ、成る程。
私はショルダーバッグから用意しておいた依頼人の家の周辺地図を取り出して、半径二キロを隅々まで調べる。
幾つか原因であろう神社の目星をつけたが、暫く眺めていたせいか、バスの揺れで気分が悪くなってきたので再び地図を折り畳んでバッグへと仕舞う。
背中まである黒髪を首の後ろで一纏めに括って気分を変え様と試みる。ついでに晒された耳に携帯と繋げておいたイヤホンを入れて端末を操作し、適当に音楽をチョイスする。
流れてきた民族調の音楽を聞いているとモヤモヤしていた胸がスッとしてきた。やっぱり私は彼の子供だなぁ、と改めて実感しながら背もたれに身体を預ける。
あの辺りは昔から農業が盛んな地域だったから、関係あるとしたら稲荷神社の方かな······。
嗚呼、駄目駄目。しっかりしなきゃ······。
音楽を聞いて思考の海に身を委ね、目を瞑っている私に眠気が忍び寄ってくる。
遠方の依頼人の元に行くバスが二時間に一本だった為、早起きして始発に乗り込んできたのが祟っているのかもしれない。
駄目だ、駄目だと思いながらも、夢の世界へと向かっていく意識を止める事が出来ず、私の意識は横に寝ている麿呂を見たのを最後にぷっつりと途絶えた。