断章 一話 とある牢獄
ここに来てからいくつの日々が過ぎたかわからない。最近の娯楽は数日に一度ここを訪れる軍人との他愛ない会話だけだ。軍人の方はいつも不機嫌だけどね。
そんな娯楽の時間も昨日終わってしまったから、今日からまた数日は退屈な日々が続くのかと思うと憂鬱になってくる。しかし、そんな僕の憂鬱はここに近づいてくる足音で吹き飛んだ。ここは少し特殊で訪れる人物は限られている。
牢屋の前にいつもの軍人がいつもより不機嫌そうな顔をして立っている。
「こんにちは昨日ぶりだね。今回はずいぶん早いじゃないか何かいいことでもあったのかい?」
僕が気さくに挨拶をするとさらに不機嫌な表情に変わる。
「ああ、お前にとってはいいことかもしれないな」
不機嫌な軍人は手に持っていた新聞を投げ込んだ。
それを拾い目を通すそこには確かに僕にとっては朗報ともいえることが書いてあった。
「へぇ、やっぱり生きてたんだ。よかった」
久しぶりに笑みがこぼれる。
それを見て軍人はされに不機嫌になったようだ。
「読み終わったなら返せ。これを私がお前に伝えた意味を理解しているのか」
新聞を返すと不機嫌な軍人はそう問いかけてきた。
「それはもちろん、退屈な僕に友人が生きていたことを教えてくれたんだろう」
「そんなわけがあるか、お前にこの情報を教えたのは退屈なお前に仲間が増えることを教えてやっただけだ」
軍人は淡々と言い放つが眉間のしわは消えていない。
「なるほどね、でも君に捕まえられるかな?」
ガンッ!!!
軍人が牢屋をたたく。どうやら彼の中の逆鱗に触れてしまったようだ。
「口を慎め『不滅』」
軍人の顔つきは怒りに染まっている。
「今度こそ俺が奴の息の根を止める。確実にな」
軍人はそう言い残しここを去っていった。
最後の発言は軍人とは思えないものだった。
「いやぁ、それにしても生きているとは思っていたけどここまで元気だったとは、再会を楽しみにしているよシン」