急な旅?
「よし、早速ですが任務があります。」
唐突すぎると思った。
さっき執事を認めたばっかなのに。
「私とアナタで、日本を旅立ちます。」
衝撃過ぎた…というのももう慣れてきた。
急展開なのに俺は、慣れきったかのように平然と聞き流す。
生徒会長の、予測不可能さはさっき見いだせていた。
「急すぎる気が…なぜ日本を旅立つんですか?」
もはや敬語らしき言葉も、出すのが恥ずかしくなっていた。
「切り替えが早いわ。そこを身に着けたのはいいですね。
まあ理由については簡潔に言うと…スカウトです。」
「スカウト?」
「スカウト。言いたいことは分かりますわ。
何のスカウトか、でしょう。」
「まあ、そうですけど…」
彼女の顔にドヤ顔が一瞬見えた。
「実は、ある目的のために、チームのようなものを作らなければいけないのです。
もちろん私と君が加わったチーム。私たち2人以外を世界から招集して、メンバーで。」
俺も加わっているのが解せぬが、質問をした。
「目的とは、どういったものなんです?」
「秘宝、〈ヴァルキリアの涙〉の入手です。」
秘宝。とても冒険らしい目的。
そして率直な疑問があった。
「その秘宝を何に使用するんですか?」
「この秘宝は、何種類かあるのですが、その中に思想の儀で一気に5個の記憶を取り戻せるようになるものがあるんです。
英傑に3か月という間の期間は厳しい。
少しでも力を強め、侵入者による崩壊の危機を、とどめなければいけません。」
だが、これだけだと俺は思えない。
理由だけでこの旅ができるわけがない。
そして俺は質問する。
「なぜスカウトなのですか?
日本にもかなりの戦力はいるはず。」
そう、日本にも強い人がいるはず。
何故はっきり言えたかというとS級という人の中の、一人は日本人だからだ。
「さすがに勘が鋭いですね。
でも簡単なことです。日本の強い人は大体、チームを作っているのです。
大規模なチームから、小規模なチームまで。
もちろん目的は、様々。私と同じ目的の人もいるわ。」
「なるほど…だから日本人のスカウトは難しいのですか。
そこで世界の人々の中だったら、隠れた戦力がいると踏んだのですね。」
「まあそうね。私が望んでいる団員は大体7人。
でも、この秘宝が見つかったら、チームは解散するつもりよ。」
チームは解散。まあそれが一番無難なやり方だと思った。
「もちろん行ってくれるわね。
空き時間には能力について教えてあげるわよぉ。」
セクシーな声は無視。
「まあ、執事になったからにはしょうがないですよね。
ただ一つ疑問があります。俺の力はまだ未熟です。
連れて行っていいんですか?」
「急とは言いましたが、旅立ちの予想日は、再来月の6月。
それまでにはあなたはとても強くなる。
意味もなく推薦したと思わないでよね。」
「さっき、運命だとか言ってた気がするんですが…」
「何のことかしら。」
生徒会長は、頭の上にクエスチョンマークを浮かべるようにとぼける。
「具体的にどのようなことをしたら強くなれるんですか?」
「まあ、まず思想の儀での3つの記憶を最大限に発揮する。
私のもとでやれば他の人の倍の速さで思い出すはずよ。
そのあとは…ひたすら特訓ね。
その特訓の後は、校内のある大会に出てもらう。
詳細は後でね。」
「分かりました。
生徒会長、頼りにしてますよ。」
「はは、言われなくてもだなぁ。」
「じゃあ、そろそろ休ませてください。」
「分かった。まあ、明日も来て。
特訓をしてあげるから。」
「まあ、来ます。」
その疲れを、内心とても感じながら生徒会長室をあとにした。
俺は、疲れを癒すため、説明会で聞いた寮に向かう。
疲れを開放するように、頭を掻きながら寮への外道を歩く。
この学園は広い。
周りのどこを見ても建物があり、とあるところには、まさに絶景ともいえるガーデンもある。
学園の探検みたいなことをしているうちに寮についた。
寮を見て最初に思ったこと。
めちゃでかい。いやホテル?
目測30階建ての、縦長な建物がそこにはあった。
だが書いてあった。
〈霧美学園 男子寮〉
貧乏で、大層な暮らしをしていない俺からしたら、程遠いものだった。
でもそんなことも、気にさないぐらい疲れていた。
俺は、玄関を通り、エレベーターに乗り、指定された番号の部屋へといった。
部屋の中は、広かった。
一人で住むにはもったいなさすぎるほど。
でもそんなことも気にせず、目についたベッドに横たわった。
そして、静かに目を瞑り、夢の底まで眠りについた…
翌朝、俺は深い眠りから覚めた。
気持ちのいい朝だ。
昨日の激しい出来事が嘘だったかのように。
そんなことを思っていると、ドアをたたく音が聞こえた。
「誰だ…」
朝っぱらで少し、寝ぼけていたがドアの方へ、目を擦りながら向かい、開けた。
そこにいたのは、言うまでもない
生徒会長だった。
「お、生徒会長どうしたんですか?」
「今の時間見てみなさい…」
「え、分かりました。」
そして部屋にあった時計を見た。
PM 2:00
俺は、時計を確認すると、真顔で生徒会長のもとへ向かい、目の前に来た瞬間、表情をゆがめた
「あ、あはははは…」
「生徒会長室へ行きましょうか。」
その表情には、あからさまな殺気を感じた。
そのあと説教されたのは言うまでもないだろう。
「はい、そろそろ特訓を始めるわ。」
とうとう、説教が終わった。
安心感を本当に感じた。
「ちなみに、先生や生徒には、私のもとで指導しているって伝えておいたから。」
「仕事速いですね…」
「アラ、ナメナイデ。」
「はい。」
即答した。
ここから俺の実力を最大限に発揮していく特訓が始まる。