甦りし我が剣
その巨人は、体育館を遥かに超える大きさ。
そして、鬼にも似た、その体格と形相。
その巨人が、自分から見ると目測500メートル地点にいた。
「君たち、あれは侵入者。
しかも、地獄族だ!」
「げ、地獄族!?」
明らかにも、強そう。
というか絶対強い。
周囲を見ると、この想像を絶する事態にとても怯えている様子で、座り込んでるものもいた。
「っく。仕方ない。
この距離だともう、避難は不可能だ。]
強い生徒も間に合わない
私がなるべく時間を稼ぐ。記憶を取り戻したものよ、直ちに戦闘準備に入ってくれ。」
担任でもこの状況には焦りが出ている。
そして担任は、入学式の生徒会長のように変身した。
その姿はさながらスパイのようだった。
おそらく銃で戦うのだろう。
そして俺たちも戦闘に入らなければ行けないらしい。
「ふ、ふざけんなっ。
俺はこんな敵無理だぁぁぁぁ。」
周囲の半分が逃げ出す。
残っているものの半分も、座り込んで怯えているだけだった。
そりゃそうだろう。入学してまだ3時間ぐらいしかたっていないのだから。
立ち向かう形相をしていたのは、7人。
男が4人。女が2人に俺。
一応昴もいた。
「7人か…
みんな記憶を取り戻せているのか?」
リーダーシップを握るような人がそういった。
「はい。ただ、このお札を使ったときに記憶が甦るといわれました。」
「私もです。カード型のものを渡されました。」
どうやらみんな思い出している。
というより、道具を渡されている。
「時間もない。行くか。」
「分かりました。」
俺は、覚悟を決めお札に念じた。
「俺の能力を解放してくれ…」
そう念じていた。
その時、自分の体が眩く光った。
自分の意識を保とうと必死に、耐えていた。
そして、光が収まった。
俺が最初に確認したのは〔手〕
手には特に変化がなく素手のままだった。
だがはっきりわかったことがある。
俺の腰には4本の剣があった。
そして、重量感をとても感じられる。
「これが俺の剣…」
そう思いながら周囲を見た。
周囲の人の姿も変わっていた。
それぞれ個性のある服だと思ったが、詳しい確認の暇もなく敵は迫ってきた。
担任は必死に、時間を稼いでくれている。
「行きますよ。」
その声とともに一人が出陣した。
この人の、落ち着いた指示には少し驚いたが。
それに続いて、みんな飛び込む。
俺は四本ある剣に戸惑っていたが、自分が一番取りやすかった左側の剣を鞘から引き抜いた。
そして、その剣は、重量感がありとても四本を腰にかけているとは思えないほどだった。
だが、俺は戦いの知識がないのに、勝手に構えに入っていた。
そう、徐々に記憶が甦っていたのだ。
これが、異世界での俺の戦い方だったのだと思った。
そして俺は、動くままに動く。
それと同時に俺の脳にはだんだんと戦いの記憶が甦ってくる。
その巨人は、自分を遥かに超える大きさだったが、それもお構いなしに高く飛び上がった。
そして勢いに乗せて剣を上に振り上げた。
「ハァァァァァァァァァッ!」
威勢とともに巨人の頭を切りつけた。
現段階では、俺が頭部、他の3人が下腹部当たり、そして最後の3人が足を攻撃している。
そのため存分に戦えた。
俺は、迷うことなく何度も敵を斬る。
神足ともいえる速さで鬼の堅い頭をどんどん斬っていく。
そう、切っていくうちに甦る剣技の記憶をもとに。
そしてとうとう、巨人の頭から、血が出てきた。
「グ、グアァァァァァァァァ」
巨人が断末魔の叫びを上げながら、攻撃者を薙ぎ払うように、体を振り回す。
だが、このチャンスを逃さまいと思い俺はその傷口に剣を突き刺した。
「いけぇぇぇぇぇぇ!」
その声とともに、刺した部分が光る。
それと同時に、他の部位を攻撃している人も、渾身の一撃を出す。
そして爆発を察して、俺は後方へ跳んだ。
空中にいるうちに、その巨人は爆発した。
爆発は、激しい音とともになっていた。
下の方では、6人のルーキー英傑と担任が立っていた。
そして俺はそれを見ながら、地面へと足をつける。
俺はみんなの方向に向かった。
「君たちのおかげで、赤鬼を倒すことができた。
新入生と思えないほど君たちは強い。
このことは、しっかり報告しておこう。」
「「「はい!」」」
みんなが言った。
その時、後ろからポンポンと肩をたたかれた。
「君、ちょっと来てくださる。」
「え…」
そう言ってきたのは紛れもない生徒会長だった。