哀しみの終わり
加賀と月野のペアは、東区域を担当している。
「怖いですなぁ。」
「そうですなぁ。」
2人のじゃれあいはとても似ている。
いつもツンツンしている月野も、加賀のまえだと無邪気に話す。
弱々しい加賀も、月野の前だと普通に話す。
まさに問題児的なものだ。
そのおかげもあってかいい雰囲気である。
だがその状態は崩れ落ちた。
目の前に、今まさに標的となっている敵が現れたのだ。
それは突然。
まるで異空間から、ワープしたかのように。
その仮面顔のバケモノは体に傷を負いつつも二人をにらんでいた。
「「何だ、お前。」」
2人が声を合わせて言う。
敵は、犬のような、オオカミの様な唸り声を出したままであった。
「聞かないね。」
「うん。
じゃあ、やろっか。」
「やったー。」
こんな状況でも二人は無邪気だった。
だがここから真面目になったかのように、低めのトーンでいう。
「「甦りたまえ。」」
そうすると二人のもとには、転生の記憶の手持ち道具が現れる。
2人はその道具には一切手を付けない。
先手を取ったのは、意外にも月野だ。
しかもただ突進していくだけ。
その突進は敵の横を通り過ぎた。
「ケッ、ガルゥゥ。」
まるで余裕かのように、不思議な言語で答える。
だが、次の瞬間、敵に異変が起こる。
突然、お腹を押さえだした。
「甘く見たわね。
私が攻撃に使ったのは、〈鎖〉だ。」
霧峰も使っていた、鎖。
それを月野は、この突進した刹那に、腹に括り付けたのだ。
この状況に、敵は苦しむ。
「今からもっと面白いことするよ。」
加賀が不敵な笑みを浮かべて言う。
さっきまでの無邪気さはもうなくなっていた。
「銀河流 〈暗黒物質〉。」
彼女はそういう。
その瞬間、敵の鎖の巻き付けが、緩くなる。
安心した様子でいる。
だがその瞬間、鎖が巻き付かれていた腹に、ある物が突き刺さる。
それはまるで刃物のような。
だがその腹に刺されていたのは、見当違い。
拳だ。
その拳には、闇のオーラを纏っているように見えた。
敵は、致命傷の様に項垂れ、倒れこむ。
そして、小さい二人に見つめられる。
そして最後の攻撃を食らうかと思った瞬間。
ワープ。
それが起こってしまった。
「なんでもっと早くしなかったんだろうね。」
「そうですな。」
こうして東区域、ちっちゃなコンビの戦いも終わりを告げた。
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不幸な仮面顔のバケモノは、ワープした先の敵たちにより、もう立っていられないような傷を負っていた。
そのバケモノは、幾多の攻撃にいつしかトラウマの様な物を感じていた。
だが、死ぬほどの傷を負わないというのが、バケモノにとって最大の辛さである。
だがその悩みもなくなりそうだ。
目の前に、現れたのだ。
その二人の名は、霧峰、そして桜庭。
「やっと見つけたわ。」
「どうやら弱っています。」
バケモノは絶望しない。
もちろん希望も感じない。
その向こう側は無。
そしてバケモノは思う。
侵略する世界を間違えた…と。