3つの能力
入学式が終わり、俺は昴と鑑定所に来た。
鑑定所には人がごった返していた。
「残った人、かなり多いなぁ。」
昴が独り言のように言った。
「少しの辛抱でもないからな。」
適当に返した。
そして眠気とともにおれたちの順番がやってきた。
「君嶋さんお願いします。」
そういったのは、おそらく鑑定結果を書いているであろう、先生だ。
そしてその先生は机に置いてあった、魔法陣のようなものに手を付け、念じるように目を瞑った。
「はい、結果出ました。教室に戻ってください。」
「あれ、結果ってここでは知らされないんですか?」
「はい。結果は今日の午後、書類で渡します。」
昴は、微妙な表情のまま教室の方向へ歩いて行った。
「伊都乃さんお願いします。」
「はい。」
鑑定前だからさすがに緊張していた。
先生は、さっきと同じように、魔法陣に手を付けた。
そして念じるように目を瞑った。
「終わりました、教室へ戻ってください。」
そういわれたので鑑定所を出た。
鑑定所を出ると、外では転生についてや、迫ってくる脅威などについて話している様子の人たちがたくさんいた。
「俺、最強の剣士だったりして。」
「じゃあ、俺は、四六時中ハーレムの、最強騎士かな。」
ウザイ一言も聞こえたがまあいい。
やることもなかったので教室に向かった。
俺の教室は、1-B。
昴と一緒のクラスだ。少し安心した。
「お、戻ったか。」
「ああ。普通だった」
「何らかの、力が眠ってたりしたら面白いんだけどな。」
「そ、そうか…」
その後も、様々な話をして時間を経ていた。
話していると、鑑定がすべて終わったのか、教室に先生が入ってきた。
「こんにちは。自分が今日から1-B担任の、山田慎吾だ。」
何とも普通な名前の先生だ。
だが容姿は、赤髪で長い髪を持った、トリッキーな顔立ちだった。
「これから君たちには、鑑定結果、すなわち今までの転生の功績を記した紙を渡す。
これで能力が分かるからな。ちなみに枚数分だけ転生しているということになる。」
周りの者は興奮している奴と、緊張した奴、色々いた。
ちなみに昴は、真顔だった。恐ろしっ。
そしてとうとう前から、用紙が配られてきた。
パット見だと、かなりの枚数があるようだ。
でも俺は驚かなかった。
昴は5枚所持していたからだ。
そして俺に配られた枚数は、7枚。
つまり7つの異世界を旅していたということになる。
「俺の方が二枚多いな。」
「はいはい。」
昴は俺の自慢に呆れたように答えた。
俺と昴だけが余裕を持っている感じがした。
「はい、配られたね。ちなみに枚数が一番多かった人で11枚だ。
だが転生の数だけ強いというわけではない。どんな生き方を異世界でしてきたかで、強さが決まる。」
意外と俺は普通なんだと思って安心した。
「次に、思想の儀を始める。
思想の儀とは、2か月に一回受けられる、異世界の記憶を思い出す儀式だ。
一回の思想の儀で思い出せるのは、3つの異世界。書類は白紙。だから好きに選ぶことはできない。」
俺の持っている書類は、言っていた通り、名前だけ書いてある紙だ。
昴やほかの生徒のもだった。
つまり異世界の記憶はランダムっていうことか。
「じゃあ出席番号一番から、この水晶に触れてくれ。」
水色に煌いた、いかにも水晶という感じのものが出てきた。
一番の人は、水晶に自分の選んだ白紙を乗せた。
すると水晶が瞬く間に光り、白紙だった紙に文字のようなものが見えていた。
「それを全部読み切ったとき、記憶は解放される。次、二番来なさい。」
二番は俺だ。
伊都乃だから俺の出席番号は早かった。
俺は適当に選んだ3枚を、水晶に乗せた。
そして、書類に文字がついた。
近くで見るとかなりすごかった。
俺は驚いた様子で席に座り1枚目のその文字を読んだ。
祖は、眩い稲妻のごとく神足な剣の使い手。
祖は、麗しき四本の剣を持つ剣使い。
今こそ、恐ろしき剣技の記憶を思い出す時。
その呪文のように書かれた文字を読んだ瞬間、俺の頭の中に異世界の記憶が浮かんだ。
俺が、眩く希望の見える白の光にまとわれた剣と、暗雲が渦巻く絶望の黒い妖気にまとわれた剣。
その二つを操り、あらゆるものを倒していく姿。
思い出せたのはそこまで。
流石に驚いたが記憶が急に戻ることはないだろうと思ったので、冷静を保っていた。
少し残りの二本の剣の事が気になる…
そして2枚目の文字を見た。
祖は、最強の魔法を操りし魔術師。
祖は、最強の呪文を完備した呪術師。
今、世界に変革を起こしたまえ。
文字を読み切った瞬間また俺の中に、記憶がよみがえる。
俺が、雷の風を魔法で起こす姿。
俺が、何行とも続く呪文を詠唱し巨大な竜巻を起こす姿。
そしてそこでまた記憶は途切れた。
俺は、すぐに3枚目を読んだ。
祖は、体を自由自在に強化する気の使い手。
祖は、知恵を振り絞り気を操る者。
今こそ、体に眠る気をよみがえらす時。
俺の頭の中にはまた異世界の記憶がよぎる。
拳、脚に紫の無数にある妖気を送り、敵を無双する姿。
仲間に妖気を送り、仲間の力を増幅させる姿。
そこで途切れた。
俺はこれらの能力が他人よりすごいかはわからなかった。
ただ分かったことは、俺は3つの能力を体から解放した…