一回戦
大会の始まりは、数えながら始まった。
〈第一次実力調査トーナメント〉一戦目は、大会の始まりとともに始まる。
俺はだいぶ遅い出場なので待機時間が多い。
これは良いことだ。
俺が戦うリスクがある人の戦闘を見ることができる。
ちなみに俺が戦う回数は、勝ち進めば五回。
いまだに転生の記憶が甦らないものは出場できないので、そこらへんは曖昧だ。
俺は、会長のもとへは参加者で行けないので、アリーナで視察する。
本来の大会で見るのは、みんなが制服や体操着を着てたりするようなものだが、なんとも奇妙たる光景だ。
みんな特徴のある服だ。
コスプレのように見えて、とても策がありそうな者。
もう動くためだけに使う、タンクトップを着ている者。
多種だった。
まさに混沌ともいえた。
まあ、俺も言えた筋ではないがな。
ただトリッキーな戦法を使うのだとしたら、この服装は良い。
武器は最初は隠す。
そんな無難な戦法。
それでいて役に立つ確率は高いと思う。
そんな服のことも考えながら試合を見ている。
なかなか熱烈だ。
会場も一年生の部ということで、先輩たちの声援に囲まれている。
俺は、先輩のような人がこの学園に会長しかいない。
寂しい。
応援されることないんだろうなぁ、と思ってしまう。
少し気になったので、VIPルームの方を見る。
すると海木学園の生徒会長、清水恵美奈が出席していた。
あれからメールは送ったのだろうか。
そんなことを思う。
次にVIPルームに現れたのは、二人。
1人は見覚えがある。
それは、桜庭冬華。
聖夜高校の会長執事。
ということは、見覚えのない一人は、会長の方なのだろう。
というか思うが、容姿整った人多すぎないか。
その会長は、白髪の完全なお嬢様感漂う、感じだった。
遠くだったのでよくは分からなかったが。
少し試合を呆然と見つめていると、隣に昴が座ってきた。
女子二人を連れて。
「お前ばかりいい想いするなよぉ…」
昴は小さな声で耳打ちしてくる。
「お前も青春だな。」
俺は耳打ちせずに言う。
隣の二人はハテナを思い浮かべながら、こっちを見る。
「これが俺の友達の、伊都乃桜牙。」
「どうもです。」
「よろしくお願いします。」
「応援しあいましょうね!」
応援してくれる人ができてよかった。
俺は人見知りを発揮し、試合をずっと見続ける。
どうやら、皆大分強い。
下手に特訓をやっていない。
それもそうだろう。
思想ができた者は、先輩に指導を受けるのが一番の成長につながる。
なので、どんな人も成長速度は速かった。
だけど俺は負けない。
誰よりも早く特訓していたことには間違いがないから。
その後、昴と連れていたもう一人の女子が試合に出て勝った。
俺は、素直におめでとうと言った。
2人とも頬を赤くする。
いや、何故昴まで赤くなるんだよ。
そしてとうとう俺の番。
緊張は当然している。
初戦だから、というのもあるが自分の能力に誇りを持っているので、負けた場合という心配が少々あった。
だからたくさん策を考えてきた。
俺は緊張は静かにほぐす。
そして会場に立つ。
フィールドは、VR空間となっている。
そのため様々なフィールドを実現できる。
今回は、都会の街並みの様なフィールドだ。
相手は何やらイケメン。
もし写真を渡されたら破りたくなるような顔だ。
相手の声援は大きかった。
「よう。
あんた人気ねぇな。
ハハハハハハハハハッ!
言っとくが俺は強いぜぇぇ。
そして人気も高い。
これがお前と俺の差なんだよぉ。
リタイアしてくれてもいいんだぜぇ。」
チャラチャラして遊んでいるような雰囲気だ。
「ふん。
ほざいてくれ。」
「んあぁ…なんだと!
ずいぶんと舐めてるなぁ…
俺はこの可愛い声援の中で生き延びる。
あんたには無理だろうけどな。
アハハハハハハァッ!」
彼の笑い声は、高い声だ。
「俺はあの美しい生徒会長のもとに執事になるぅ。
そしてあんんなことまでやってやるんだよ。
絶対にあの美貌を手に入れるぅぅ…」
俺が執事になっていることはやはり広まずに済んでいるようだと、その時思った。
「両者構え。」
審判の声が聞こえる。
それと同時に俺は、お札を取り出す。
「よーーい。始め!!」
「「甦れ!」」
両者その言葉を発する。
相手の武器は、弓と槍。
おそらく遠距離だろう。
だが俺は構わない。
俺の武器は服の中に隠してある。
「あれぇ。
武器は?
あ、異世界でも努力してなかったんだろうね。
アハハハハハハハ!」
そういって相手が、弓矢でこちらに狙撃する。
その矢は頬をかする。
流血はしている。
「所詮。弱いなぁ…」
相手は余裕を見せるかのように、その場から動かない。
「じゃあ次はこの槍かなぁ!」
すると俺は槍で左腕をやられる。
最も、かすり傷だ。
「ヘヘェ!
もっといってやるよ…」
ここで俺は、少し驚かせてやろうと思い、ある技を使用する。
その瞬間俺はその場からいなくなった。
「あ、あれ…
ど、ど、どこだ…
お、おい!どこにいるんだよ!」
相手は恐怖を覚えたのかさっきの態度とは一変。
無様だった。
「ここだよ。」
俺がいたのはそのムカつくイケメンの後ろ。
そう言った瞬間、俺は隠し持った〈魔剣〉を首にあてる。
「悪いな。
俺の勝ちだ。」
「お、おい。待てよ。
もしここでお前が勝ったら、好感度下がるぞぉ。
素直に降伏しろよぉ…」
「それはどうかな。
好感度下がるのはお前だけかもよ。」
「ヒ、ヒッ!」
相手の弱い悲鳴は無様。
「それに俺は好感度なんぞ気にしない。」
「あ、あぁぁぁ…
ヒャァァァァァァァァッ!!」
相手は高い発狂をあげる。
「うるさい。」
その瞬間、首に傷をつける。
そして、気絶した。
これは相手の気を失うことに重心を置いた、〈気絶傷〉。
俺は会場に静寂が起こると思っていた。
だが、俺は良い声援を聞いた。
「やるじゃねえか!」
「早めに終えてすげえ!」
会場から熱烈な声援が聞こえてくる。
俺は、久しぶりに人のことでありがとう、と感じた。
そんな声援を聞きながらアリーナへ戻る。
「凄いな。
汗一つかいてないじゃん。」
「す、すごいです!」
2人は激励をくれたが、1人の女子はまるで呆然としていた。
驚いてくれたことは嬉しい。
「よくあんなウザイ奴に耐えられたな。」
「当然だよ。」
俺の座右の銘は、〈平常心〉。
いつでも冷静に生きる。
それを大切にしている。
この一戦はそれが、成績に出たと思った。
そう思い、俺は次の一戦まで控える。