推薦の先は
爛漫と咲かれた桜の舞。
そんな風景からはイメージが広がる。
春、そして入学。
そう、入学の季節だ。
良い風景に挟まれている、俺は伊都乃 桜牙。
普通の中学三年生。
と、いっても少し前に卒業して今から高校だ。
連想した通り、入学である。
親が俺の記憶が鮮明に残っていない時に死んでいて、今は叔母さんの夫婦と一緒に住まわせてもらっている。
(関係ないが、叔母さんは年齢の割に美人だ。)
だから貧乏だった。
そのため勉強だけは頑張って、お金のかからないところに行こうと思っていた。
その成果はすごかった。
中間、期末、学力診断テストは、常に一位。
高校での勉強も、完璧にマスターしている。
そして何より、〈翻訳マシーン〉といわれる程、外国語を話せる。
そんな俺は、ある学園から推薦された。
なんと、生活費免除!
嬉しくてたまらなかった。
俺はこの推薦を見た瞬間行くと確信した。
これ以上迷惑かけちゃいられない。
そう思い、新幹線に頑張って乗り、俺は東京に来た。
「行っちゃうの。悲しいね…」
「かっこよくなって帰ってこいよ。」
叔母さんの方は、若さしか感じような雰囲気だった。
叔父さんの方は、何言っているかわからないが。
とにかく心配こそされたが、ここまで来た。
そして、ここが推薦された学園。
《霧美学園高校》だ。
俺は、事前に届けられてありがたい気持ちの、霧美学園指定の制服を着ている。
Yシャツの上に、黒を象徴させた少し着丈が長めの学ラン。
これが、制服だ。
その制服でこの門の前に立っている。
今ここから新たな生活がスタートする。
その期待を胸に門を通った。
最初に目がついたのは、迷路のような庭。
まさに、貴族が住みそうな館の中庭。
その奥には、施設がたくさんある。
この広さとは裏腹に、人はあまりいなかった。
おそらくみんな入学式会場にいるからだろう。
少し落ち着いた場所に行きたいなぁ、と思いつつも、この学園について知らないのでやめた。
そんな中俺は、ある場所へ向かった。
「ここか…」
体育館。入学式会場だ。
外から見るとかなり広そうに見える。
中からは、ざわざわと声がする。
少し入るのが嫌だった。
あまりこういう場所に慣れていないからだ。
そう思いつつも、入り口を通り中へ入った。
内装はアリーナ席もあり、とてつもなく広い。
中にはまだ半分程度しか着ていない新入生らしき人がいた。
半分といってもかなり多い。
少し怖くなってきた。
俺は手紙に書いてあった番号の席に座った。
椅子は、掃除されていたのか、とても綺麗だった。
「おはよう。君も新入生?」
話しかけてきたのは、隣の席の人だった。
「はい。伊都乃 桜牙といいます。」
「僕は、君嶋 昴、よろしくね。」
「よろしくです。」
「君も、推薦貰ったのかい?」
「はい!」
「僕も推薦。
勉学をがんばってきたから、その成果だと思うよ。」
「俺もです。
勉学は力入れてたので。」
…
と、話しているうちにだんだん、話が弾んだ。
君嶋さんと少し仲良くなれた気がした。
この間にも、だんだん人が集まってきた。
かなりの人数がいると、すぐにわかるほど多かった。
もう少し待つとどうやら司会者のような人が出てきた。
おそらく全員集まったのだろう。
「これより、霧美学園高校、入学式を始めます。」
司会者がしゃべりだした。
喋り終えて、礼をする。
「最初に、生徒会長挨拶を行います。白鐘 楓さんお願いします。」
そういった後出てきたのは、黒髪美女の生徒会長だった。
その美人さからか、周りからざわざわと声が聞こえる。
「おはようございます。
私はこの学園の、生徒会長。
白鐘 楓です。
まず最初にお話ししておくことがあります。
この学園に通う生徒にはある共通点があります。」
「共通点?なんだろうね。」
隣の君嶋さんが言ってきた。
「何ですかね。」
何となく答えた。
そして生徒会長は、口を開け、驚愕な共通点を告げた。
「それは、異世界に転生をしたことがあるということです。」
「え…」
急な発言に、会場が静寂に包まれた。
俺はずっと唖然としていた。
そして勇敢な新入生がこう尋ねた。
「ど、どういうことだよ。」
俺はその発言で少し冷静になる。
「言ったとおりです。この学園に呼ばれたものは、転生の経験があるのです。」
「て、転生?そ、そんなことありえるのかよっ!第一、証拠があるのかよっ?」
勇敢な新入生は、さらに問い続けた。
「何ならここで見せましょうか?」
その発言に会場内は静寂に包まれる。
「ああ…見せてみろよ。」
すると生徒会長は、ポケットからカードのようなものを出した。
そしてカードへ念じるように唱えた。
「壱の世界よ、今我が身に甦りたまえ。」
生徒会長は今にも何かが起こりそうなことを言った。
すると、彼女の持っていたカードが白の閃光のごとく雷のように光った。
そして彼女にその光はまとった。
姿が見えなくなるほどに光はまぶしい。
周囲の人々も、目を隠していた。
光の眩しさはだんだん少なくなっていき、姿も見えるようになってきた。
するとだんだん彼女の姿が分かってきた。
はっきり姿が見えた瞬間、俺は驚いた。
彼女の姿は、明らかに変わっていたからだ。
その姿はさながら、ファンタジーの世界に出てくる、白い服だった。
しかも腰には、ガチの剣を鞘に入れている様子だった。
俺は驚きがすごかった。
「このように、皆さんはリメンバ、つまり転生の記憶をもとに、変身することができるのです。
このように変身ができる人たちを日本では、英傑と呼びます。」
「お、おいマジかよ…」
「凄すぎ。」
そんな声が周りから聞こえてきた。
「頭のいい方ならわかると思いますが、皆さんはこれから、襲い掛かってくる脅威と戦わなければいけません。」
その発言で場は凍り付いた。
「ふ、ふざけんなよ!そんなのやってられるか!」
またまた勇敢な新入生が言った。
「根性がないものは帰っていいです。
命が惜しいのでしょう。
戦う気があるものだけ残ってください。」
「お、おい帰ろうぜ。」
「やってらんねえよ…」
そういって新入生の、半分くらいが出て行ってしまった。
怒気をもった形相で。
それでもまだ人数はかなりいる。
もちろん俺は残っていた。
貧乏だからな。
「残った人たち。心から感謝します。
入学式が終わったら、転生の能力を判明させるための鑑定が行われます。
楽しみにしていてください。これで私の話は終わりにします。」
そんな緊迫の空間の中、生徒会長の話が終わり、様々な式辞なども終わり、怒涛の入学式が終わった。
俺は、絶対にこの学園で生き残って見せると決めた。
もちろん叔母さん達と命の為だ。