単独戦
俺の右手からは、血のような闇を思わせるオーラが放たれている。
そのオーラの根源を相手に向け走る。
すると頞哳吒獣の敵が、察知したのか、尻尾のようなものをこちらに向けて乱雑に振り回す。
俺は、その乱雑で強大な攻撃に、遠くへ投げ飛ばされると、この刹那の間に思ってしまった。
だが、その瞬間、頭の中に回避のビジョンが浮かんでくる。
この間にも、異世界での戦記が体に甦っているのだ。
俺は、そのビジョンの通りに、危険を回避する。
俺は大きく後方へ跳んだ。
「おお…」
回避の気持ちよさが少しあった。
俺は、自然と染みついてくる動きを頼りに動く。
俺は、回避をしっかりうまくやっていた。
だが上手く攻めきれない。
攻撃の大事なタイミングがなかなか掴めない。
俺は避けながらしっかり考える。
体力も、少々ではあるが、無くなり続けている。
剣技もなかなか決めれない。
その時、俺のビジョンにある映像が浮かんでくる。
その俺は、雷を体に纏い、約5mずつワープしているかのような動きで光速に動いている。
これは、俺の魔法属性〔雷〕によって起こされた移動技。
〈雷道〉
雷技を今一つ,体に甦らせた。
ここで使うべき技、ともちろんのこと判断した俺は、すぐに使う。
俺は、移動したい方向に、剣を持っていない、左手の人差し指を向け、移動する位置を決める。
その瞬間、体から電撃があふれ行きたい方向へ、眩い雷のように光速で移動する。
俺は、油断をすることなく、敵が攻撃していないうちに、移動しどんどん距離を詰める。
そして斬撃を与えられるところまで来た。
相手に攻撃される前に、すかさず一つの斬撃を、龍の足に与える。
その斬撃は、紫色に輝き、剣にもまだ、眩く紫の光が残る。
「ウガッ…」
ようやく、足の痛みに気付いたのか、少しの反応をする。
だが所詮この程度。
まだ大きな一撃は与えられていない。
もっと強い攻撃が必要なのだと思った。
雷技はまだ一つしかない。
おそらくこの瞬間に、二つも雷技を思い出すのは無理だろう。
なので俺は、呪文か流力に頼るしかないと思った。
そこである案を思いつく。
呪文はきっかけがあれば思いつく。
ならば、きっかけを作ればいいんじゃないか。
そう思った、瞬間から俺はある行動に出る。
「よし、やるか…」
その小さくも、根気を感じる声を出す。
そして、龍に斬撃を与える。
だが、その斬撃は、龍にビクともしない。
生徒会長は、最初の3秒間、困惑していたが、察したように表情が冷静になる。
頭の悪い考えだが、弱い斬撃を繰り返していれば、その危険さに気付いて、呪文が甦るのではないか?
という考えだ。
「ガググ…」
龍は、余裕の声を吐く。
そして、龍の攻撃に気を付けながら斬撃を繰り返しているうちに、さっきと同じように、ビジョンが浮かび上がる。
その俺は、折った枝で、指を切った。
そして、その血で地面に3行の文字を書いている。
悲しき 冥府の悪炎に包まれた 正義の氷剣よ
諧謔にも等しい 滑稽な冥府に 終わりを見せろ
大罪の世界を その刃で 霧の層に変えたまえ
第三層呪術 〈反逆の氷剣〉
俺は、待っていた展開にすぐ対応し、龍から距離をとる。
龍からの攻撃が来ないうちに、俺は唇で指を切り、血を剣先につける。
そして、右腕、剣先に流力を集め、高速で、甦った魔法文字を書く。
土の地面に、紅の呪文を記す。
法撃が来れば、雷道ですぐ避け、すぐ戻り、書く。
そしてライティングが終わる。
「よしっ」
そして、油断をせずすぐ行動に出る。
その地面に書いた、三行の文字の中心に、剣を刺す。
その瞬間、文字と化した血が、剣に氷となって纏わりつく。
その氷は、剣の周りで、退廃も知らない様子で止まらない。
それはまるでブリザードのよう。
剣の周りに広範囲に広がる、ブリザードで剣に一気にオーラが増す。
雷道をうまく利用し、氷剣を維持しながら、龍のもとへ近づく。
俺は、龍の目前までくると、高く飛び上がり、その氷剣を頭の右側まで持ってくる。
「ハァァッ!」
その掛け声とともに、龍を頭から切り裂く。
その一撃は、どんどん龍を切り裂き、ついにすべて直線状に真っ二つになる。
「グ、グアァァァァァァァッ!」
悲しき咆哮をあげ、龍は煙のように消えた。
俺は、頞哳吒獣をようやく倒せた…