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去らば友よ。まんの旅立ち


アヒー「カマドッ! 縛った筈のカマドが何かオークに代わっていたからビックリしちゃったよ! ビックリしすぎて唯一の友達オークを殺しちゃったよ!」


カマド「ちょっとお兄ちゃんの好物を思い出して作ってたの……。ごめんね? お兄ちゃんお餅好きでしょ?」


アヒー「餅? ああ、餅好きだな。カマド……。お前、やっぱり俺の事が好きなんだな……」


アヒーは、その醜い豚面をグシャグシャに潰して喜んだ。


カマド「ええ……。見晴らしの良い場所で一緒に餅を食べましょう?」


アヒー「ああ、それならマイホームの真上、崖の上が良いかな。結構良い場所なんだ! いゃあ! 楽しみだな!」


カマド「ふふふ……。お兄ちゃんったら!」


 アヒーとカマドは山の上へ上へと上がっていく。やがて切り立った崖の頂上へと着いた。


アヒー「ピクニックするには丁度良いよね! カマドゥー! あ……愛してるよ!」


カマド「私もよ……。うふふ……。さぁ、固くなる前に食べましょう。とても柔らかい餅ですよ……」


 カマドはアヒーに餅を1つ差し出す。すぐさま2つ目を取り出して(おもむろ)に食べ始める。


 一方、アヒーは何故か餅が食べられない。


アヒー「あれ……これ硬い。めっちゃ硬い。何これ餅じゃない。でも餅の味する。カマド良くこんな硬い餅食えるね。カマド顎強くなった?」


アヒー「カマド……?」


カマド「アヒーお兄様の顎が弱くなったんじゃないですか? (しゅる)私の口は代わりありませんよ…?」  


 

アヒー「何故……脱ぐのだカマドゥーよ……。ここは外だが……開放的なのがお望みか?」


カマド「刮目せよ……!」


 カマドは突然に服を脱ぎ始め、一糸纏わぬ姿になると、後方に上半身を倒し、ブリッジした。


アヒー「か……カマドゥー?」


 じりじりと距離をとるアヒーであったが、カマドがブリッジしながら顔だけ上げた姿勢で追ってくる。……あくまでも下半身の唇を強調して。


 逆エクソシスト歩きと言えば良いだろうか。世にも恐ろしい……いや、羨ましい……。……くもないか、とにもかくにも日常では決して見る事が出来ない姿勢のカマドがアヒーに迫ってきた。


 

アヒー「か……カマドゥーよ……」


 

カマド「アヒー」(パクパク……プスー)


 

アヒー「カマドゥー……」


 

カマド「アヒィ……」(アヒィー……プスー)


 

アヒー「カマd」


 

カマド「この口で喰らってくれるわぁああああああ‼」(クパァー!)


 カマドは跳ね起きて大の字に身体を開いた!


 大きく展開する四肢より補喰の闘気を(たぎ)らせる。右の肩甲骨から立ち上る蛇の闘幻(オーラ)は右手に絡み付きアヒーを睨み付ける。左の肩甲骨から吹き上がる不死鳥の翼も左の手に絡み付きアヒーを牽制する。その身体は怒張し、溢れ出すエネルギーが地を割り、カマドの身体を開き宙に圧し上げていく。


 ……様に見せかける……B級魔法道具の偽闘気の指輪だった。


 ゴゴゴゴゴ……


カマド「我が両手の神獣よ! (ことごと)く掴みて開け! 開けば糸引く地獄の閂よ、ゲロ! タンカス! ザリガニ! 弾けて混ざれ!


 御開帳(ヴァーミリオンヴォルテックス)ー!!!」


 クパァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!

 

アヒー「な……なんだカマドゥーよ……その口は……‼ お前は……(おへそ)の下にも口があるのか……!?」   

 

カマド「上の口は餅を喰らう口、そしてここは……貴様を食らう口だッ! 貰ったァァァァァァ!!」 


アヒー「う……うわぁああああああああああ!!!!!!」


アヒー「に……逃げなきゃ……」


 アヒーが振り返り、一歩を踏み出すとそこは崖だった。知らず知らずのうちにカマドの黄金の闘気(オーラ)にて後退りさせられていたのだった。


アヒー「しまっ……ァァァァァァアアアアアアア!!」


 程無くして崖の底からアヒーの砕ける音が聞こえる。その音を聴いて複雑な顔をするカマド。


 カマド「お兄ちゃん……? お兄ちゃん……‼」


 彼女の呟きは谷底へと吸い込まれていったが、返答はなかった。


 

 


 ◇◇◇◇◇◇◇


アヒー「はっ……」


アヒー「ここは……?」


母「アヒー! お父さん! アヒーの目が覚めたわ!」


アヒー「俺は……確か……カマドに……」


アヒー「って俺オークじゃなくなってる!」


 気が付くと病院のベッドの上で父母に囲まれていた。

 

父「お前は部屋で倒れていたんだ。そこを俺が見つけて病院に運んだんだ。そして今日はお前が倒れてから一週間目の昼だ」


母「生きてて良かった……‼ 本当に良かった……あああああぁ……」


 母が私を抱いたまま泣いている。


 俺は……俺はこんなにも親不孝だったのか……。


アヒー「カマドは……」


父「お前が倒れた日にファクドナルドで行方不明になった……警察はまだ探していると言うが……まだ見付かっていない……」


アヒー「帰ってくる」


父「え?」


アヒー「カマドは必ず帰ってくる!」


アヒー「だから……だから俺は……、俺は……!」


アヒー「俺は……ッ!!!!!!!」


アヒー「彼女を作って待ってるんだ、俺は……彼女を作って童貞を捨てるんだッ! 俺は……俺は……ッ! 変わるんだ‼」

 

父「イヤ無理だろ」


母「……キモい」 


アヒー「まんこ見たい」


母「……」 


 


 END(くぱぁ)


 


 


 

 この作品は二次創作に入らない?レベルではあると思いますが、我が故郷沖縄の民話よりのオマージュです。宜しければ鬼餅の由来あたりで検索してみてください。妹の下の口にビビって鬼が崖から転落死します。


 ちなみに、私の先輩の家が(諸説ある)アヒーの殺害現場でした。先輩、結婚式ではお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。


 また、読んで下さった忍耐力と慈善の心のある紳士淑女の皆様にも幸せがありますようお祈り申し上げまして、小説を閉めさせて頂きます。完  

 

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