お前のようなババアがいるか
話は飛んで1ヶ月後。
アヒーは勝手気ままなオークライフを楽しんでいた。始めの1週間はカマドを探しこそしたが、町に行き石を投げられて退散。森の中を歩いて迷子と、適当に探しても結果は出ないと気付いた。ならばならばと、自分のおかれている状況を整理しつつのんびりと気ままに過ごしていた。
のんびりと過ごしていた理由として、アヒーはカマドの気配はそれほど遠くない場所に感じていた。それは長い間の兄妹生活で獲得したちょっとした超能力であった。その状況が感じられる限り、邂逅の可能性はあるのだ。
そんな中、初めに話しかけてきたオークがいつものような適当な話を持ち掛けてきた。
オーク「アヒーはん、アヒーはん。西の方に洞穴を見つけたんやけど、マイホームにどうやろか?」
アヒー「おお! でかした! カマドとの愛の巣候補だな!」
オーク「またカマドですかい、いい加減オークたるもの、見掛けた婦女子にナニも向けんとカマドカマドと……そんなにええ関係なんですかい? まぁええですけもも……けもも……」
アヒー「そうなんだよなぁ、このナニ、使わずにいるのも勿体無いよなぁ……」
オーク「今度ぴっちぴちの女の子捕まえてくるからちょっと使ってみたらどうでしょ?」
アヒー「お前のぴっちぴちの加減が信用ならんのだよな……こないだは還暦過ぎてたし、たまにジジイも混ざってるから……」
オーク「選り好みもどうかと思いますけどなー」
アヒー「兎も角、俺はマイホームに住む。俺のカマドセンサーも西側を指してるしな! ほっとけば会えるだろ! 楽しみ!」
オーク「便所コオロギ」
アヒー「ん? なにか言ったか?」
オーク「いや、意識飛んでましたわ。良い女見付けたら使わずにマイホームに持っていくんで、宜しくや~」
アヒー「おう!」
こうして俺のカマドの住む愛の巣作りが始まった。愛情を込めて作っているはずが、どうにも血なまぐさくなってしまう。可愛いハートをあしらったカーテンに天井から星を垂らしたつもりだったが、朝になって見てみると血染めの衣服に心臓が打ち付けられており、天井からはくり貫いた目玉がぶら下がり虚空を見詰めていた。
皆も徹夜のテンションで自作の名作小説を書き終えて、明日には投稿してブックマーク100万件余裕だとウキウキしてて、一旦寝てから読んでみると気恥ずかしく支離滅裂な何かだったって経験…あるよね?
多分それだと思うんだけど…どうなんだろう?表札とかもう髑髏2つの額に「あ」「ひ」何て書いてある。
oh…ナイスデザイン。
ああ、そうそう。マイホームを作り始めて3日、あのオークがす巻きにしたジジイを連れて来やがった。そんな引っ越し祝いなどいるか!
一通り内装を誉めて帰っていったが、アイツはセンスがおかしい。帰り際にジジイを置いていったので、持って帰るように伝えたらケンカになった。
ナニがどうやってもジジイを女と言い張る。お前のようなババアがいるか!と股を見たら……確かにババアだった。とりあえず受け取る事にはしたけど……気まずいから家に帰って貰った。
年取ると男女の違いって無くなるよね。……こうして俺のオークライフは続いていくように思えたが……終わりは案外早く訪れた。