カマドとサンダーマーチャー
カマド「ここは……異世界?」
カマドが目覚めたのは冒険者の賑わう酒場のような場所だった。金属の鎧や革の鎧を着けた武骨な漢が様々な表情を浮かべ、酒のようなものを飲み交わしている。所々に魔法使いみたいなキャラクターも点在している。
カマド「私は……なんの職業でもない系かしら?」
カマドの装備は青い染色のなされた絹で作られたゆったりとした上着にミニスカート。下着は……まさかの履いてない。
◇ ◇ ◇ ◇
サンダー「うーん、あと1人いないと無理か……」
マーチャー「オークはなぁ……強いよなぁ……」
カマド「私をパーティーに入れてくれないかしら?」
マーチャー「確かにパーティーメンバーは足りないが、娼婦をパーティーに入れるほどじゃあないな」
カマド「は?」
カマドの服装は扇情的かつ実用的な、まさしく娼婦そのものであった。
カマド「もしかして……私娼婦?」
マーチャー「彼処のビキニアーマーの職業はわかるか?」
マーチャーは人混みの中で酒を飲む女性に向かって人差し指を倒す。
カマド「戦士」
マーチャー「当たり、もしかしたら微粒子レベルで違うかもしれないがまぁ当たってるだろ。じゃあ次にあいつは?」
マーチャーは次の女性に指をさす。
頭に十字架をかたどった帽子をつけて、首から太ももまで布を羽織り、その布をベルトで止めている恥女がいた。前面と後ろは隠れているが、サイドから見るとパンツ履いてませんの確定恥女だ。こいつは正解できるだろう。
カマド「僧侶」
マーチャー「そうだ、お前と同じ恥女系統ではあるが、十字架がポイントだな。じゃあ次」
カマド「魔法使い」
マーチャー「そうだ、帽子が特徴的だな。次、」
カマド「踊り子?」
マーチャー「正解。少し難しいかな。踊りやすい服装なのがヒントだったな。次、」
カマド「占い師」
マーチャー「掌をかざしている水晶がポイントだったな。次、」
カマド「お姫様かつ武道家」
マーチャー「まぁ、武道家だ。お姫様かどうかは判らないが……じゃあ次で最後」
マーチャー「あいつは?」
カマド「娼婦」
マーチャー「当たりだ、商売道具はあのだぼだぼな布に隠されている。そしてノーパンティー。たまに布の中身を盛ってる奴は居るが……お前は盛ってないな」
カマド「殺す」
カマドはテーブルの上にあるフォークを握った。
サンダー「まぁまぁ、からかったのはすまないが、娼婦を買うほど儲かってないんだ。だからもっと儲けてからでいいか?」
カマド「いや、私娼婦じゃないんで」
マーチャーは私に向かって無言で指をさす。
カマド「娼婦……、じゃない。いやいや娼婦じゃないし」
サンダー「わかった、一杯なら奢るよ。それ以上は無理だ。金がない。」
マーチャー「飲んだら帰れ! 洗濯板! 」
カマド「殺す」
◇ ◇ ◇ ◇
カマド「という訳で此処に来た訳よ! 私処女なの! 分かる!?
ショージョー!」
マーチャー「そうかー、すまんなー、変態の兄から逃げて娼婦に……」
カマド「だから娼婦じゃないってば!」
サンダー「ともあれ、身寄りがないならパーティー組んでも良いが…ぶ……っちゃけ俺達弱いぞ。その上、金もない」
カマド「頑張って働きまーす!」
マーチャー「偉い! 客取って来い!」
カマド「だーかーらー!」
サンダー「そいつは酒が入るとそーなるんだ。許してやってくれ」
カマド「まぁ、私の心は黄河より広いからね。ところで薬草摘んだりゴブリンとかオークとか討伐して耳とか鼻とか切り取るんでしょ!? いつ行くの!?」
サンダー「まぁ、今日は無理だな。飲んじまったし。俺は大丈夫だがマーチャーがダメだ。明日からかな。泊まる所無いんだったら俺達の宿に紛れ込ませてやる。娼婦だって言えば入れるからな。知らんふりして泊まってけ」
カマドは……サンダーとマーチャーの泊まる宿で一泊し、翌日から二人とパーティーを組んで働くようになった。
始めは下水掃除、薬草摘み、と言った採取系。それからコボルト退治、ゴブリン退治と冒険者としての経験を徐々に積んでいった。