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エンコサイヨウ・外伝集  作者: 霧原菜穂
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2019年分町ママ生誕祭小話:国分町パスポート

2019年の分町ママ誕生日は、彼女のホームタウン・国分町を舞台にしてみました。少しはご当地小説っぽくなっているだろうか……皆様、夜遊びはほどほどに!!


■主な登場人物:分町ママ、ユカ、政宗

 分町ママは、分かりやすい単語を使うと『幽霊』である。

 生きている人間は、その姿を見ることが出来ない。ユカや政宗、統治など――『縁故』と呼ばれる能力者も、その能力を開放していなければ、彼女が余生を楽しむ姿を見ることは出来ないのだ。

 専門用語を使うと、彼女の立場は『親痕(しんこん)』。名杙本家と――現当主である名杙領司と契約をして、名杙の助けとなるために働いている。

 彼女が『親痕』としてこの世に留まってから……ぼちぼち20年。分町ママはもうこの世との縁は切れているので、『関係縁』が残る名杙や『縁故』以外に関するメモリ機能は、ほぼないと言っても過言ではない。生きている人間は、人や物、場所との繋がりや、関連付けて物事を記憶することが多いため……多くの縁が切れている分町ママが、過去の出来事を覚えていない・覚えられないのは当然なのだ。

 だからこそ……。


「……私、どうしてここにいるのかしら?」


 とある平日のアフターファイブ、『国分町(こくぶんちょう)』と書かれたゲートの前にて。

 家路へ、外食へ、仕事場へ――それぞれの目的地へ向かう人の流れを足元に、分町ママは首をかしげる。

 さて、どうして自分は、ここへ来てしまったのだろうか。

「確か、そう、えっと……」

 彼女は頬に手を添えると、ゆっくり、順を追って思い出そうとしたのだが……。

「……何だったかしらねぇ……まぁ、いいわ」

 わずか10秒で諦めた。そして改めて、目の前にある国分町を見下ろしてみる。


 国分町は、仙台市――東北一の歓楽街と呼ばれている場所だ。

 江戸時代は奥州街道沿いにある町人の町だったが、明治時代以降は中心業務地区となり、高度経済成長時代には、2丁目が歓楽街として発展してきた。

 そう、歓楽街として栄えているのは2丁目にあたる場所である。国分町の1丁目はオフィスビルなどが並んでおり、3丁目には定禅寺通りと仙台市役所がある。国分町、と聞くと、歓楽街のみを思い浮かべる人が多いかと思うが……実際は役所からオフィスまでを内包した、仙台の中心部なのだ。

 かつて――生前の分町ママは、このゲートとゲートの間、国分町2丁目の雑居ビルで、お酒を中心とした飲食店を営んでいた、らしい。

 自分では何も覚えておらず、今の雇い主でもある名杙領司や、その妻の愛美(まなみ)など、周囲から聞いただけ。何でも彼らは結婚前からの常連客だった、らしい。

 生前の自分と、信頼できる従業員と、主に2人で店を切り盛りしていたんだとか。

 今はきっと、見ず知らずの他人が、同じ場所で違う店を営業しているのだろう。

 そもそも……店の場所も、、何も覚えていないけれど。


 空は青から藍になり、間もなく世界が闇に包まれる。

 すると、この町のネオンが本領を発揮するのだ。

 人は闇を避けるように、明るい場所を目指す。

 人工的な電気の下に安息を求めて、日が昇る世界で生きるための英気を養う。

 ここは、そんな人が集まってくる――そんな町。


 国分町の上空で、分町ママがぼんやりと眼下を見下ろしていると……何やら、自分の方を見つめる視線を感じた。

「あら……?」

 思わずキョロキョロと見渡してみると、国分町の歓楽街、雑居ビルの影に隠れるように、何かの影が動いているのが分かる。当然だが、分町ママと目線の高さが同じということは――そこにいる誰かもまた、彼女と同類ということだ。

 明るいだけではないこの町には、世の中を、誰かを――何かを強く恨みながら生を終えた存在が集まってくることも多い。名杙からの要請もあり、この地域は彼女が重点的に巡回している場所の1つではあるけれど、昨日には感じなかった気配だ。

 分町ママはその気配がする方へと体を動かした。彼女は意識をした方へ自分の体を動かすことが出来る。慣れるまでに少し時間がかかったけれど……同じことを20年間続けていれば、生きている人間が足を動かすように、自然と、行きたい方へ行けるようになっていた。

 分町ママが雑居ビルの方へ近づくと、影に隠れていた『彼』が、顔を上げた。

 外見の年齢は70代に届くくらい。白髪交じりの短髪と、目尻や口元のシワが、彼の生きた証を感じさせる。足を曲げて浮いているので正確ではないが、生前の身長は恐らく160センチ台で、男性にしては小柄な印象を受けた。

 『彼』は、自分に近づいてきた分町ママを見つめると……訝しげな表情で問いかける。

「あんた……儂と会ったことあるか?」

 その問いかけに、分町ママは苦笑いで返答した。

「ごめんなさい。もしかしたらどこかですれ違ったり、空中で会話をしたことがあるかもしれないけれど……いかんせん、物覚えが良くないの。だから今、新鮮な気持ちね」

「そうか……」

 そう言って、どこか残念そうに顔を伏せる彼へ、分町ママは努めて明るく言葉を続ける。

「自分のこと、思い出せないんじゃないかしら? 私達はそれが『普通』なの。もうコレ以上、自分の歴史を続けることが出来ないから……当然なのかもしれないわね」

 こう言って足を組み替える分町ママを、『彼』はチラリと見つめ……探るように問いかけた。

「……あんたはそれを受け入れるのか?」

 『彼』の問いかけに、分町ママはよどみ無く返答する。

「受け入れるしかないんだもの。お兄さんは何を気にしているのかしら。とても……釈然としない顔をしているわね」

「……儂は、確か、病気で死んだ。家族はいないし、気心の知れた奴は皆、自分の家庭で忙しい。だから……現場仕事が終わったら、この町に来るのが日課だったんだ」

「そうだったのね」

 分町ママの言葉に、『彼』は首を縦に動かすと……眼下に広がる町を見渡した。

 目尻が下がり、瞳の中に優しい光が宿る。

「ここに来たくて金を稼いでいたんだ。儂が死んでるのは分かってるさ、だから最期、この場所に来れば、楽しかった時のことを思い出せるかと思ったが……ダメだったよ。馴染みの店すら思い出せないなんて、儂も年じゃな」

 こう言って自嘲気味に笑う『彼』に、分町ママは「そうだったのね」と相槌を打ってから……彼と同じ方を見下ろす。

 歩道を歩く人が、先程よりもずっと増えているように感じた。1日の仕事を終えた人が、疲れた心身をほぐし、明日への活力を充填する場所。それがこの国分町だ。

 既に生を終えた彼らにとっては、二度と味わえない高揚感がある場所でもある。

 だからこそ、町の光は眩しくて……少しだけ、羨ましい。

「お兄さんも……あの中にいたのね」

「あぁ、いたはずなんだ。儂はどこへ向かっていたんだったか……」

 こう呟いて肩を落とす『彼』の隣に、分町ママはそっと並んだ。そして、『彼』の右手に残っている『関係縁』を見つめ……どこへ繋がっているのか、その先を目線で追う。

「お兄さんの右手、糸が残っているのは見ているかしら?」

「え? あ……」

 分町ママの指摘に、彼は自分の右手を見つめた。そして、どこか頼りなく漂っている赤い糸に気が付き……首をかしげる。

「これは……何だ?」

 当然、分町ママはその答えを知っているのだが、ここではあえて、知らないフリをした。

 今の『彼』に必要なのは、説明ではなくて……。

「何かの手がかりになるかもしれないわ。特にアテがないなら、たどってみるといいんじゃないかしら?」

 どの方向に進めばいいのか、ヒントをあげること。

 もしも、この縁の先に、『彼』の未練があるのだとすれば……『彼』自身でそれを清算して、この世と別れてほしいから。

 『縁故』が介入し、人工的に縁切りをされるよりも……何となく、そっちの方がいいような気がしていた。

 分町ママの言葉に、『彼』は「分かった」と首肯してから……その前に立ち、軽く頭を下げた。

「色々と有難う。行ってみるよ」

「行ってらっしゃい。それで何もなかったら……また、ここに戻ってくればいいわ。きっと私がいると思うから」

 この言葉を聞いた『彼』が、軽く目を見開いた後……目を細め、とても嬉しそうに頷いた。

「死んでも馴染みの場所が出来るなんて、ありがたいな」

「フフッ、指名料は高いわよ」

「来世の出生払いでツケといてくれ。じゃあ――また」

 『彼』はこう言い残し、市役所や勾当台公園がある方へ向けて移動していった。

 その背中を見送りながら、分町ママはここで初めて、手元にビールジョッキを取り出した。こんな芸当が出来る『痕』は限られている。恐らく先程の『彼』には出来ないだろう。

 生前、恐らく『彼』はお酒が好きだったはずだ。そんな『彼』の目の前で、1人だけお酒を楽しむことは出来ない。

 ママが日常的に呑んでいるお酒は……全て、『親痕』になってから領司を通じて提供されたものである。味も喉越しも分からないけれど、呑んだ時の『幸せな気持ち』を忘れずにいれば、より具体的に手元へ導き出せるようになっていた。

 それこそ……現・名杙当主でもある領司が、その速度と精巧性に、思わず舌を巻くほどに。

 彼女の願望がそのまま出てきた飲み物、その中身を一口あおり……口を離すと同時に、息を吐く。

「馴染みの店……見つかるといいわね」

 彼の問題が解決するように、今日、これからの時間を、何事もなく皆が楽しめますように……そんなことを願いながら、残りのビールを飲み干した。


 ――1週間後、時刻は間もなく17時になろうかという頃。

「じゃあ、ちょっと行ってくるけん、ねー……?」

 場所は『東日本良縁協会仙台支局』、外に出る用意を整えて帽子を被り直した山本結果――ユカは、少し離れた自席でパソコンを操作している佐藤政宗に声をかけて……怪訝そうな表情を向けた。

 今日の彼女はTシャツの上からパーカーを羽織り、七分丈のスキニーパンツにハイカットのスニーカーという組み合わせ。頭にはいつものキャスケットを着用している。

 同じ空間内にいる支倉瑞希(たまき)や名杙統治は、それぞれに「い、行ってらっしゃい……!!」「気をつけるんだぞ」と、声をかけてくれたのだが……一番把握しておいて欲しい人物からの返事が、返ってこないのだ。

「政宗……?」

 ユカが政宗に視線を向けると、スーツのジャケットを脱いで、ワイシャツのみの彼が自分のスマートフォンを見ていた。

 頬が溶け出すんじゃないかという勢いで顔の筋肉を弛緩させ、それはもう幸せそうに目を細めた状態で。

 そう、それはまるで……レンジでチンしすぎてドロドロになった、餅のようだ。

「……えぇー……」

 ユカは気持ち悪いという感想を口に出す手前で何とか飲み込むと、無言で彼の隣に足を進めた。そしてわざとらしく咳払いをした後、腹に力を入れて――


「――バカ政宗!!」

「うわっ!?」


 次の瞬間、ユカの声に驚いた政宗が、持っていたスマートフォンを机上に取り落とした。そして目を見開いてユカを見つめ、ワナワナと震えだす。

「けっ、ケッカ……開口一番に悪口というのは、ぎゃんひどかですたい……」

「慣れん単語使わんでよかよ!! だって政宗、そろそろ出るって言ったあたしの話、いっちょん聞いとらんかったやろ!?」

「へ……? ケッカの、話……?」

 スマートフォンが壊れていないことを確認した政宗が、キョトンとした表情でユカを見つめるから。

 ユカは盛大に溜息をついた後、椅子に座った彼に向けて、自分の顔を近づけた。そして、息がかかるほどの至近距離で彼を睨みつけ、視線を盛大に逸らし続ける彼へ向けて、一語一句はっきりと宣誓する。

「し・ご・と・に・い・く・け・ん・ね!!」

「お、おう……!!」

 政宗は顔の前で両手を上げて、近すぎる距離感に些細な抵抗を見せながら(しかし無駄な徒労である)……机の上に置いたデジタルの電波時計を見やり、口元を引きつらせながら言葉を続けた。

「も、もうそんな時間か……き、気をつけてな。道に迷うなよ。変な人についていくなよ。拾い食いするなよ。あと……」

「――っ!!」

 遂に苛立ちが限界を超えたユカは、視線が泳ぎ続ける彼に見切りをつけて……彼の前に立って腕を組むと、冷めきったジト目を向ける。

「政宗こそ、仕事中になんばしよったと? ずんだ餅みたいな顔してから」

「ず、ずんだ餅……?」

「ったく……自分の用事は終わったのかもしれんけど、もうちょっと緊張感持たんねよー」

「え? 俺……ずんだ餅……?」

 自分の顔色が悪かったんだろうかと頬を両手で抑える政宗に背を向けて、ユカは出入り口の方へ向けて歩き始める。

 その様子を静かに見ていた分町ママが、ヤレヤレと言わんばかりの表情でため息を付いて、呆けている政宗に声をかけた。

「政宗くーん、ママの声、聞こえてるかしら?」

「はっ!?」

 彼女からの呼びかけに我に返った政宗は、慌てて瞬きをした後、自分の頭上で浮いていた分町ママの姿を探して……何度となく首を縦に動かす。

「だ、大丈夫です。何かあれば教えてください。今日も宜しくお願いします」

「分かってるわ。じゃあ、行ってくるわね~」

 そう言ってユカの後ろに続く分町ママの背中を見送りながら……政宗は椅子に深く腰を下ろし、ユカに見つからなくてよかったと、手元で裏返したスマートフォンを見下ろすのだった。


 ちなみに政宗はメールの返信を終えたところで広告をタップして、レディース用の通販サイト開いてしまい、そこに表示されたモデル着用の洋服を、脳内でユカ――6月に大きくなった方――に合成して、「絶対かわいいよな……」と幸せな妄想をしていたことなど、帽子を被った少女は知る由もない。

 世の中には、知らないほうがいいこともあるのだ。


「ったく、あのずんだ餅宗……もうちょっとしっかりしてくれんとカビ生えるっちゃなかと……?」

 扉を閉めながらユカがため息混じりに呟くと、頭上にいる分町ママが彼女の目線の高さまでユルユルと降りてきて……苦笑いを浮かべた。

 ちなみにユカは既に視界を切り替えているので、彼女の姿も視える、声も聞こえる状態である。

「ケッカちゃん、ちょっと何言ってるか分からないわねぇ……」

「気にせんでください。ったく……」

 ユカは何度目か分からないため息をついた後、エレベーターへ向けて歩き始める。次の瞬間、廊下の奥にあるエレベーターの扉が開き、誰か人が降りてきた。

 その姿に見覚えがあったユカは、慌てて政宗への不平不満を飲み込んでから、いつも通りの表情を作る。

「あぁ、仁義君、お疲れ様ー。政宗なら中におるよ」

「山本さん、お疲れ様です。これから仕事ですか?」

 エレベーターから出てきたのは、柳井仁義だった。仙台市内の学校に通っている彼は、放課後の合間、業務を手伝いに来てくれることがある。ちなみに今は彼自身が引き起こしたトラブルを精算するために、『縁故』に関する仕事をすることは出来ないため……もっぱら、書類の整理や政宗の話し相手などの雑務ばかりをやってもらっているけれど。

「そうなんよ。これから1件、えぇっと……どこやったっけ……」

 ユカは顔をしかめつつ、パーカーのポケットからスマートフォンを取り出して、今日の仕事内容を確認した。

「定禅寺通りの近くに『遺痕』がおるらしいけんが、ちょっと行ってくるけんね」

 軽い口調で言い放つユカに、仁義はどこか心配そうな表情で問いかける。

「お一人で、大丈夫ですか?」

 ユカは先日、長いこと体調を崩していた。そんな彼女に政宗が単独行動をさせるとは思えない。

 彼の言葉の意味を察したユカは、「あぁ、大丈夫」と言いながら宙を掴み、紐を引っ張るようにグンと下に引いた。

 その瞬間、宙に浮いてジョッキを持ってご満悦だった分町ママの体が大きく傾く。

「ここに分町ママがおるけんね」

「ちょっとケッカちゃん……ママの扱い、雑過ぎるんじゃないかしら?」

「この間、ママに下見してもらったみたいやし、多分すぐに終わるけんが、問題ないって判断だと思うよ」

「ちょっとケッカちゃん、話聞いてる?」

 分町ママからのジト目を受け流すユカに、仁義がどこか安心したような表情で息をついた。

「そうでしたか……お気をつけて」

「ありがとう。仁義君もゆっくりしとってねー」

 そう言って彼と別れたユカは、エレベーターの前に立ち、下へ向かうためにボタンを押す。

 次の瞬間、ユカの眼前に反対方向で――180度回転した状態で現れたママが、生きていれば息がかかるほどに顔を近づけて、苦言を呈した。

「年長者はもっと労って欲しいわねぇ……」

「アハハ……明日から気をつけます……」

「今日から気をつけて欲しいんだけど……まぁいいわ」

 分町ママは説得を諦めた様子で彼女から離れると、再び、ユカの隣に並んだ。


 あの時のことは――ユカが倒れた時のことは、まだ、何となく覚えている。なにしろ今回のように、自分と二人だけで仕事をした時に、体調を崩したのだから。

 元々本調子ではなさそうだったから、もっと自分が早く動いて、政宗を呼んでいれば……そんな後悔もあった。


 もう、二度と会えないまま、彼女のことを忘れてしまうのではないか……そんな思いもあった。


 けれど、ユカはちゃんと復帰して、今はこうして仕事を任されている。

 分町ママは政宗から、ユカに異変を感じたらどんな些細なことでもすぐに知らせて欲しいと頭を下げられていた。その約束だけは忘れないように、毎朝同じ時間に何となく思い出すように心がけたり、先程のように政宗自身から声掛けをしてもらうように頼んでいた。


 同じ失敗は、二度と繰り返さない。

 それだけは忘れずに、繋がった『縁』に、定期的に刻んでおきたい。


 エレベーターが上から降りてくるまでの間、彼女はスマートフォンの画面で、これから向かう場所を確認していた。

「今日は、定禅寺通り……尋ね人を探し回っているおじいちゃん、か……」

 ユカの言葉を聞いて、分町ママの脳裏に一瞬、誰かの顔が浮かんだような気がしたけれど……はっきりと思い出せなかった。

 

「……何だったかしらねぇ……まぁ、いいわ」


 しょうがない、よくあること(・・・・・・)だ。

 死後における『痕』同士の『関係縁』は、成立しない。

 新たな『関係縁』を結べるのは、生きている人間だけの特権なのだから。


 到着した無人のエレベーターに乗り込むユカの背中に続き……どこからともなく取り出したワイングラスの中身に口をつけて、分町ママもまた、今日の仕事へ向かうのだった。

分町ママという存在は、こんなキャラなんです……という、自己紹介のような内容になったかな、と、思ってます。

彼女にも、彼にもメモリ機能はありませんので、縁が繋がっていない相手のことは容赦なく忘れます。まぁ、片方が覚えていて、もう片方が……というわけではないので、まだマシなのかもしれませんね。どうだろう。


彼女はこんな空気感で余生を楽しんでいるのだということが、少しでも伝わっていれば嬉しいです!!

分町ママ、誕生日おめでとうございます!! いくら飲んでも大丈夫なママですが、生きてる彼らを潰さない程度に付き合ってあげてください!!(笑)

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