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エンコサイヨウ・外伝集  作者: 霧原菜穂
56/121

2018年セレナ生誕祭小話:福岡友情物語~あだ名命名編

 セレナの誕生日に綴る、ユカとの馴れ初めです。

 2回目の今回は、2人の呼称が決まった瞬間を掘り下げてみました!!


■主な登場キャラクター:セレナ、ユカ、瑠璃子、一誠

 橋下セレナという偽名を名乗り始めて、『縁故』としてスポット的なアルバイトを始めて……あっという間に1年近くが経過。セレナは中学2年生になった。

 最初は戸惑いばかりが先行して、『遺痕』として『縁』を切らなければならない存在に対しても、どこか尻込みしていたけれど。

 瑠璃子の言っていた「良くも悪くも慣れるけんねー。もしも慣れんかったら……早めに教えて欲しいかなー」という言葉通り、セレナもまた、この世界に慣れ始めている自分に気付く。

 自分にしか出来ないことだと思うと、力が湧いてきた。

 そんな自分の行動が、家族の平和な日常の、見知らぬ誰かの1日の……この世界の役に立っている。そう、信じて。

 加えて、福岡支局にいる他の職員は誰もが優しく、セレナの言動を注視して、しっかり導いてくれる。上に立つ存在の安心感もあり、セレナは彼女のペースで頭角を現していった。

 ただ……1人だけ、ずっとぎこちない『同僚』がいることを除いて。


「あ……」

 時刻は平日の18時前、指導役の一誠と共に郊外での仕事を終えたセレナが『福岡支局』に戻ると、その場に居合わせた山本結果が、ちょうど出ていこうとしているところだった。

 帽子を深めにかぶっている彼女は、セレナと一誠に気付くと、肩にかけたトートバックを持ち直して、軽く頭を下げる。

「……お疲れ様でした」

 それだけを言い残して出ていく彼女に、セレナもまた「お、お疲れ様でしたー!! 気をつけてね!!」と、振り向かない背中に声をかけることしか出来ない。

 そう、ユカは決して振り向かえない。帰ると決めたら帰る。寄り道もしないし、セレナが戻ってきたからと踵を返して雑談をしたりすることもない。

 学校の友だちと道すがらに遭遇すれば例外なく立ち話をするセレナにとって、ユカのこのクールな態度は……どう接すればいいか分からなくなることも多い。

 そして、きっとセレナの戸惑いはユカに伝播しているのだろう。同じ空間に居合わせれば天気の話もするし、一誠や瑠璃子と一緒に現場へ出る時は、まだおぼつかないセレナをしっかりサポートしてくれる。


 けど……そこまで(・・・・)なのだ。

 彼女は決して、それ以上に踏み込ませない。

 そういえばセレナはユカのメールアドレスも電話番号も、個人的なことは何も知らないことに気付いた。


 ユカ自身に複雑な事情があることは初めて会った時に聞いたけれど、正直……この1年でその『差』が顕著になったことで、ようやく事実として実感しているところは否定出来ない。

 具体的には……セレナは身長が3センチほど伸びて、1年前より少し大人びているけれど。

 ユカは何も変わらない。(・・・・・・・)

 文字通り、成長が――体内時計が、時間が止まっているのだ。

 中学時代といえば、男女ともに成長著しい時期だ。だからこそ、何も変わらない彼女の存在は異質なものとして周囲に認知され始めている。そろそろ学校にも通いづらくなっているようだ。

 嘘をつかず、正直に生きていけと言われて、それを実践しているつもりだけど。

 この戸惑いを正直にユカへ告げる勇気は、今のセレナも持ち合わせていない。

 けれど……このままぎこちなく過ごすのも、どこかスッキリしない。


 どうすれば……もっと、彼女のことを知ることが出来るだろう。


「……一誠さん、私、どうすればユカちゃんともっと仲良くなれますか?」

 事務所の一角にある、打ち合わせ用の机。椅子に座っているセレナは頬杖をつくと、向かい側にいる一誠に問いかけた。

 一誠は書類を渡そうとした手を止めて……苦笑いを浮かべる。

「山本ちゃんかぁ……やっぱり、毎回お菓子で釣るのが一番じゃなかとか?」

「そんなにお金が続きませんよぉ……それに、何かそれ、違う気がします」

 セレナの言葉に「確かになぁ……」と首肯した一誠は、セレナに報告用の書類を渡しながら思案した。

「山本ちゃん……食べる以外に何か好きなものがあればよかっちゃけどな」

「食べ物以外に……そうだ、宮城の佐藤君と名杙君を呼ぶことは出来ないんですか?」

 彼らがユカにとって特別な存在だということはセレナも知っていた。しかし、ユカが自分から電話をしていないこと、向こうからもかかってこないし、手紙やメール等のやり取りを定期的にしている気配もない。

 この2人が来てくれれば、ユカも少しは……笑ってくれるのではないか。

 セレナの提案に、一誠は益々顔を渋くした。

「あー、あの2人なー……管轄が違うけん、そう簡単に呼べんったい」

「そうなんですか。観光でも駄目ですか?」

「佐藤君はまだいいかもしれんけど、名杙君は厳しいやろうな……それこそ、研修とか、何か大義名分がないと」

「研修……特に予定はないんですか?」

「2人が上の資格試験に挑戦するなら、それを口実に呼ぶことも出来るかもしれんけど……今すぐは厳しかな」

 こう言ってため息をつく一誠から、これ以上有益な情報が引き出せるとは思えない。まさか観光でもNGだと思っていなかったセレナが頬杖をついてため息をついていると……二人分の緑茶をお盆にのせた瑠璃子が近づいてきた。

「お疲れ様ー。2人で渋い顔してどげんしたとー?」

 お茶を2人の前に置いた瑠璃子に、一誠が真顔で問いかける。

「なぁ瑠璃子、山本ちゃんの好きなものって知っとるか?」

 この問いかけに、瑠璃子もまた、真面目に返答した。

「おやつとごはん」

「いやそうだけどそうじゃなか。食べ物以外で何か知らんか?」

「食べ物以外……?」

 一誠からの問いかけに、瑠璃子は眼鏡の奥にある瞳を細めて、口元に手を添えた。

 そして、添えた手の人差し指を立てて、こんな答えを告げる。

「それはズバリ、ペンギンやねー」

「は? ペンギン?」

「そ。ユカちゃん、ペンギンが好きなんよー。ベストなのはSuicaのペンギンなんやけど……福岡では中々売っとらんっちゃんねー」

 予想外のキャラクターに、一誠とセレナは思わず目を丸くした。

 Suicaといえば、JR東日本のICカード。福岡はJR九州なので今はまだ使えないが、そろそろ相互利用が始まるというニュースを見たような気がする。それくらい、馴染みがない。

 現にピンときていない一誠が、訝しげな顔で瑠璃子に問いかける。

「Suica? なしてや?」

「ココに来たばっかりの頃か、その前か忘れたけど……麻里子さんと一緒に、博多駅でSuicaのペンギンの着ぐるみに会ってから、それがいたくお気に入りみたいなんよー。更に、極めつけはあの合宿で、Suicaそのものを政宗君からプレゼントされたけんねー」

「何だって!?」

 刹那、一誠が目を見開いて瑠璃子を見た。当然のようにこんな反応を予想していた瑠璃子は詳細を話せと圧をかける彼をさらりとかわしつつ、セレナに向けてアドバイスを送る。

「ユカちゃんも、セレナちゃんにどげん接していいか……悩んどるところはあると思う。不器用やけど本当に良い子やけんが……頑張って、心のドアをノックし続けてあげて欲しいかな。あの子、割と押しに弱かよー?」

「……はい、分かりましたっ!!」

 セレナが笑顔で手をあげた次の瞬間――事務所の外から声が聞こえてきた。どうやら、『支局長室』にいた来客が、麻里子と共に出てきたらしい。

 事務所との仕切りはすりガラスになっているため、ぼんやりした立ち姿しか見えない。麻里子と共に出てきたのは、彼女より背が高い人物だった。性別までは判別出来ないけれど、白っぽい服を来ているように見える。

「瑠璃子さん、お客様がいたんですか?」

「うん、今終わったみたいやけどね。えっと……伊達さんって言ったかなー。麻里子さんの知り合いで、ユカちゃんの帽子を調達してくれとる人らしいよー」

「へぇ……」

 セレナはユカの対『痕』用の帽子は特注だったのかと1人で納得しながら……先程瑠璃子から聞いた情報を、脳内で反すうさせていた。


 と、いうわけで。

「ユカちゃん、マリンワールド行こう!!」

 瑠璃子から有益な情報を聞いた数日後の金曜日、時刻は間もなく18時。

 福岡市郊外にある水族館の前売り入場チケットを持った制服姿のセレナが、退勤しようとしたユカを待ち構えていた。

 思わぬ刺客にユカがギョッとした表情になると、彼女が持っているチケットをみやり……やんわりと辞退する。

「あたしは別にいいです……他の人を誘ったらいいんじゃ――」

「――ユカちゃんと一緒に行きたかと!! ほら、2人で遊んだことないやろ? ね? とりあえず付き合ってくれん?」

「えぇー……」

 明確な意思をぶつけられたユカは、目に見えて困惑した後……通りすがりの一誠の執り成しもあって、最終的に了承することになった。

「じゃあ決まり!! 次の土曜日、要するに明日、一緒に行こうね」

「早くないですか!?」

「よかとよかと。明日は何もないって、麻里子さんや瑠璃子さんに聞いとるよ?」

 既に根回し済みだということを告げられると、ユカもこれ以上言い訳を重ねるわけにもいかず……。

「ムフフ、楽しみやねぇ」

「……そうですね」

 かくして、仕事以外に初めて、ユカとセレナの2人だけで会うことになったのだった。


 翌日、時刻は午前10時過ぎ。

 家族に送ってもらい、水族館の入り口に到着したセレナは……ユカの姿を探してキョロキョロとせわしなく周囲を見渡していた。

 土曜日ということもあって、家族連れやカップル、友人同士など、今から中に入る人は多い。ユカは小柄なので、うっかり見失ってしまったら……それこそ、目も当てられなかった。

「やっぱ、天神とかに集合すればよかったやか……」

 この水族館は郊外にあるので、2人の『中間点』は存在せず、現地集合をするのが一番合理的だ。ユカからそれを提案されたセレナも納得して頷いたけれど……折角なら、ここに来るまでのワクワクも一緒に共有すればよかった。そんな、小さな後悔。

 そして、これを口実に連絡先を聞いておけば良かったと思ったけれど……全て、後の祭りだ。

「……大丈夫、今から一緒に楽しむけんね!!」

 セレナが1人で気合を入れた次の瞬間、福岡市街地方面から到着した人の流れに沿って近づいてくる、ユカの姿が見えた。


 マリンワールドは、福岡市民なら遠足などで一度は行ったことがある定番スポットだ。水族館以外にも海浜公園や少年自然の家などが整備されており、自然の中で思い思いの時間を過ごすことが出来る。

 持っていた前売りチケットを窓口で入場券に交換したセレナは、ユカに入場券を1枚渡して、笑顔を向けた。

 今日のセレナは動きやすさを重視して、Tシャツとジーンズの上からロングカーディガンを羽織っている。長い髪の毛はポニーテールにまとめ、キャップの隙間から垂らしていた。

 一方のユカは、七分袖のボーダーシャツにジーンズ素材で膝丈のサロペット。足元はハイソックスにスニーカーという出で立ちで、頭にはいつもの帽子を被っていた。

 本当は「帽子がお揃いなんよー」と言って場を盛り上げたかったが、とてもそんなことを言い出せる雰囲気ではない。

「はいユカちゃん。最初はどこ行く?」

「……どこでもいいです」

 チケットを受け取ってボソリと返事をしたユカに、セレナは最初から挫けそうになるが……自分がこのままではいけないと気を取り直した。

「よ、よし分かった!! ちょーっと待ってね……」

 セレナはチケット引き換え時にもらった館内パンフレットを開き、イベントの開始時間を確認した。

 そして……予め調べておいた『あるイベント』の時間を確認し、自分の腕時計を見やる。

「よーしっ!! じゃあ、まずはココに行こうっ!! ユカちゃん、行くよー!!」

「え!? あ……!!」

 セレナは声高に宣言すると、ユカの手を取って館内に足を踏み入れた。


 2人が最初にやってきたのは、ペンギンの餌やり体験コーナー……の、受付だった。

 時間と定員が決まっており、まずは整理券をゲットする必要がある。客足がイルカショーのあるプールに向かう中、セレナはユカと共に二人分の整理券を確保すると、行き交う人の邪魔にならないよう、ペンギンエリアの入り口付近の壁際へ移動した。

 整理券に記載された時間は、午前10時30分から。あと15分近くあるけれど、己のミッションを達成出来たことで……セレナはとりあえずホッと胸をなでおろした。

「あー良かった……なくなっとったらどうしようかと思った……」

 隣に立つユカが、どこか困惑した瞳でセレナを見上げる。

「セレナさん、あたしがペンギン好きだって……」

 自分に気を遣ってくれたのかと萎縮するユカに、セレナはパタパタと手を振って笑顔を向ける。

「あ、うん、それも聞いとったけど、私も一度やってみたかったっちゃんねー。前は学校の社会科見学で来たけんが、こういうこと何も出来んかったと」

「そうなんですか……」

「ユカちゃんはココ、来たことあった?」

 セレナの問いかけに、ユカは首を横に振った。

「小学5年生の遠足で、来るはずでした。あたしは具合が悪くて……参加出来なかったんですけど」

「そうやったんやね……」

 小学5年生といえば、ユカの体に異変があった翌年だ。その頃は体調が安定しなかったらしいので、今以上に制限されていることも多かっただろう。

 セレナはしゃがみ込むと、ユカにも同じ動作を促した。首を傾げながらしゃがみこんだユカと自分の間に、先程のパンフレットを広げる。

「じゃあ、コレが終わったらどこに行きたい? 今回は遠足でもないけん、ユカちゃんの好きなところに行けるよ!!」

 そう言って笑顔を向けるセレナに、ユカは慌てて首を横に振った。

「あたしは別に……橋下さんが決めていいですよ」

「ダーメっ!! 私は、ユカちゃんが何をしたいのか知りたかと!! ユカちゃんの好きなものを知って、一緒に遊びたいと!!」

「ど、どうしてですか……?」

「どうして、って……」

 訳がわからないと言いたげに困惑しているユカに、セレナはしばし考えた後……肩の力を抜いた。

「だって私、ユカちゃんのこと、なーんも知らんっちゃもん」

「え……?」

「勿論、知られたくないこともあると思うけん、言いたくないことは言わんでもよかっちゃけど……でも、好きなものとか、好きな食べ物とか、好きな男の子とか。ユカちゃんがどんなものに興味を持ってるのか、私……1年も一緒におって、本当に何も知らんかった。ユカちゃんが話してくれると嬉しいけど、多分、このまま待っとったら10年くらいかかりそうやけんね」

「……ごめんなさい」

「私こそ、お節介でごめんね。でも……私はもっとユカちゃんのことを知って、ちゃんと友達になりたい。折角繋がった『ご縁』やもん。お仕事以外でも、有効活用していきたいと思わん? それとも……やっぱり、迷惑?」

 こう言って自分を見つめるセレナから、ユカは気恥ずかしくなって視線をそらした。

 そして、以前にもこんなことがあったような気がして……少しだけ、記憶をたどる。


「いや、その漢字はケッカちゃんだよね。響きとしても可愛いと思うから、この研修で生まれたあだ名ってことで、どう?」

「あだ名……勝手にゴリ押しされても……」

「本当に嫌なら無理強いは出来ないけど、折角同じ研修を受ける仲間なんだし、仲良くなるための取っ掛かりとして提案してみたんだ。あ、俺のことはムネリンって呼んでくれてもいいぜ!!」


 あの時――合宿で一緒になった政宗の行動と、今のセレナはよく似ている気がした。

 誰にでも明るくて、優しくて、眩しくて……ユカにはない、とても強い光。

 惹かれ、憧れた彼は、今はもう、近くにいないけれど。

 でも、きっと――仙台で、彼の居場所で、頑張っているはずだから。

 無意識のうちに、カバンの中の財布を握りしめていた。

 そこには……あの時彼からもらったものが、ずっと、大切に入っている。


「それ、持ってていいよ」

「へっ!?」

 笑顔でSuicaを指さす政宗に、我に返ったユカが慌ててそれを突き返す。

「な、なんば言いよっとね!! コレお金と一緒やろ!? ダメ、受け取れるわけないやん」

「いやー、残金も10円くらいだし、正直、まだ仙台圏でしか使えないから、あんまり使いみちないんだよね。現に、学校に通う定期券は紙だし」

 そう言って財布から別途定期券を取り出して見せる政宗に、ユカは一瞬流されそうになり……慌てて首を横に振った。

「で、でも、やっぱりダメだよ!! そんな、悪いし……」

「本人がいいって言ってるんだけどなぁ……」

 政宗は強情なユカにため息をつきつつ……突き返されたSuicaを、再び、ユカの手に握らせた。そして、彼女がそれを離せないように、彼女の手を自分の両手で覆う。

 そして、困惑する彼女を真っ直ぐに見つめてから、優しい笑顔で念を押すのだ。

「これは、ユカに受け取って欲しい」

「……こげな時だけちゃんと呼んで……」

 顔を赤くしたユカが、どこか悔しそうに目をそらしてため息をつく。そして……一度、コクリと頷いた。

 そんな彼女の反応を確認した政宗もまた、自分の言動を改めて思い返してしまい……彼女の手を離して、苦笑いを浮かべる。

「あー……なんか押し付けてゴメン。でも、ケッカにもらってほしいのは本心だから」

「分かっとるよ、ありがとね」

「ちょっと財布戻してくるわ。それ、なくさないでくれよ」


 既視感の理由が分かったユカは、急に、体の力が抜けた。

 要するに、今のセレナに、あの時の政宗と同じ勢いを感じてしまったのである。

 思わず、息を吐いて笑ってしまった。

「ハハッ……」


 こんなに楽しく思えたのは、いつぶりだろう。

 政宗のことを思い出して、泣き顔ではなく、笑顔になれたのは――いつ以来だっただろうか。


 急に笑いだしたユカに狼狽したセレナが、「え!? えぇ!?」と目を丸くする。

「あ、あれ? 私、何か面白いこと言った!?」

「そうじゃないんです、ハハッ……急にごめんなさい。セレナさんが、あたしの知り合いにそっくりで……」

「そ、そうなん? そっくり……そ、そうなんやね……」

 当然だが、セレナはユカが誰を思い浮かべているのかは分からない。ただ……彼女が笑ってくれたことが、素直に嬉しい。

 セレナは改めて、彼女に笑顔で問いかけた。


「――ねえ、ユカ(・・)、どこに行きたい?」

「え……?」

「どこでもよかよ!! 何をしてもよかと。ペンギンの餌やりに何回参加したってOK。今日の私は……ユカがやりたいことに最後まで付き合うけんね!!」


 もっと、色々なことを教えて欲しい。

 色々なことを、教えてあげたい。

 自分から先に手を出しておけば、彼女はきっと……握り返してくれるから。


 こう言ってユカを見ると、彼女はしばらく目を丸くした後……「本当、そういうところも似てるんよねぇ……」と、肩をすくめてため息をついた。

 そして、似ているのだとすれば……自分が勝てるわけないじゃないか、という結論にも至る。

 ユカは地図上にある一箇所(フードコート)を指差して、セレナを笑顔で見つめ返した。

 少しだけ、少しだけでも……彼のように、自分から近づいてみたいと思えたから。

 だから今度は……自分から、あだ名で呼んでみよう。

「餌やりが終わったらイルカショーに備えて、早めにお昼ご飯食べたいな。レナ(・・)も、しっかりお腹すかせとってね」

 マリンワールド(https://marine-world.jp/)は、大きな水族館です。ラッコがいるんです超かわいいの。

 ユカって実はあまりこういう観光地に行ったことがなさそうだと思ったので、連れてきました……え、ほとんど書いてない? そげなこと言わないで。

 セレナの明るさと前向きさを受け止めたユカは、これから更にセレナと仲良くなっていきます。今書いている第5幕でもそうなんですけど、セレナは本当に心が強いくて優しいキャラクターだな、と、改めて思いました。


 セレナ、誕生日おめでとう!! これからの1年はムネリンより幸せになろう!!

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