2017年瑠璃子誕生日小話・馴れ初め②/決意の焼き鳥(豚バラ)
2017年の最後を飾る誕生日は、福岡支局の瑠璃子です。
一誠の誕生日小話(https://ncode.syosetu.com/n9925dq/25/)から続く、馴れ初めシリーズ。さて、今回の2人は……関係を進めることが出来るのでしょうか?
主な登場人物:瑠璃子、一誠、孝高、ユカ
徳永瑠璃子、こう名乗るようになってからも、それ以前も……彼女は何でもそつなくこなすことが出来た。
勉強、スポーツ、対人関係、幼い弟や妹の世話……それら全てを、満点ではないけれど及第点以上でこなしていく。
その影ではしっかり努力をしているから結果を出すことが出来るのだが、なぜだかそれが周囲に見つからない、失敗していることも含めて気付かれないタイプだった。そして本人もまた、それをひけらかすようなことがない。誰に対しても一定の笑顔を向けながら……心の中では冷静に物事を見極め、時を過ごしてきた。
実際、高校生の時に人間同士を繋ぐ『縁』が見えるようになった時も彼女は実に冷静だった。最初は一過性の眼精疲労かと思ったがそうでもない。そして、その色の変化から……自分が人間関係を含む人そのものを見ているのだということに気がついたけれど、自分ではどうしようもないのでとりあえず地域でも一番大きな眼科に行った。やはり大きなところには何か有益な情報が集まっているような気がする、そんな理由で。
そしてその勘は的中し、診察後に別室に呼ばれ、院長から秘密裏に紹介されたのが――『西日本良縁協会福岡支局』だったのだ。
そして――『縁故』という特殊な世界を知り、これまでにない環境に身をおくことで、自分自身を試したくなった。
これまではずっと及第点以上、満点を取ったことがない……突出したものなど特にないと内心で思っていたこともあり、外部に新たな刺激を求めていたのかもしれない。
そして彼女は持ち前の才能と努力で『縁故』としての実績を着実に積み上げていき、遂に、先に入会していた川上一誠をしたり顔で抜き去ったりもした。
その後、元々食べることが好きだったこともあり、栄養士の資格が取れる福岡市内の短大を受験した。両親を含めた周囲の大人は4年制大学への進学を進めたけれど、自分が勉強したいことを集中して学んだ後、すぐに社会に出たい。それが彼女の希望だったから。
それを大人は分かってくれない……と、福岡市局内でポツリと口に出したことがある。
その時一緒に勉強をしていた一誠は、頭をあげることもなくいつもの口調でこう言っていた。
「ま、瑠璃子がそげんしたかとならそれでよか。頑張れよ」
「……」
まずは自分の勉強――瑠璃子は合格したけれど、一誠は不合格になった『上級縁故』の試験勉強――を頑張れよ、という言葉を飲み込みつつ、彼らしく背中を押してもらえたことが嬉しかったことを覚えている。
そして、短大も無事に卒業して、改めて『福岡支局』で働き始めた年の夏――彼女にとても、とても大きな転機が訪れる。
当時、副支局長だった山本麻里子が連れてきた少女――後に山本結果と名乗ることになる彼女との出会い、最初は心を閉ざしていた彼女を持っていたお菓子で懐柔して、そして……あの夏の合宿で、初めて先輩『縁故』として担当させてもらえて。
そんな彼女を最後の最後で守れなかった、そんな……取り返しのつかない後悔だ。
「――瑠璃子、おい、瑠璃子!! 俺は名杙君と佐藤君を誘導するけんが、山本ちゃんの保護を……瑠璃子、聞いとるんか瑠璃子!! お前が今ここで動かんでどげんすっとか!!」
一誠の声で弾かれるように走り、錯乱する政宗を押しのけてユカを抱きしめた。
目の前ではいち早く動いた麻里子が『遺痕』に残った『縁』を切っていたため、全て終わっていたけれど。
抱きしめた小さな体、気を失った彼女の体温が……腕の中で消えていく、とても嫌な感覚。
指先が、震える。
「ユカ、ちゃん……?」
震える声で、彼女の名前を呼んだ。
いつもであればどこかはにかんだ笑顔で返事をしてくれるはずの彼女は……青白い顔で、固く目を閉ざしたまま。
視界を切り替えるのが怖かった。だってこの目は事実を正確に見せてくれる。もしも、もしも彼女の『生命縁』が切れていることを直視してしまったら……立ち上がることが出来なくなってしまう気がしたから。
不意に服を掴まれて視線を向けると、全身を震わせている政宗が……俯いて、地面に涙を落とし続けていた。
「瑠璃子さん、ユカは……ユカは俺のせいで……俺が殺したようなものです……」
「政宗君……」
「ユカ、ゴメンな……俺と出会わなきゃ……俺が、俺が死ねば良かったのに……!!」
「――っ!!」
その言葉に、瑠璃子は一瞬耳を疑った。
合宿であれだけ率先して場を盛り上げ、リーダーシップを発揮していた政宗。
そんな彼の口から、最もマイナスな言葉を引き出してしまった。
確かに彼の恋心に気が付き、少しからかったことはある。けれど心の中では中途覚醒者同士ということもあるし、何よりもユカもまた、政宗に思いを寄せていることに気付いてしまったため……お節介ながら上手くいって欲しいと思っていたのに。
視線を別の方へ向けると、一誠に付き添われている統治もまた、目の前の出来事が信じられないという眼差しで、呆然と立ち尽くしている。
最初は自信家で、とっつきにくかった彼は、この合宿で大きく変わった。表情がグッと柔らかくなり、ユカと政宗と一緒にいることが自然になって……名杙の次期当主ではなく、『名杙統治』という彼自身がようやく見えてきたところだったのに。
守れなかった。
あれだけ輝いていた3人を、未来への大きな可能性を秘めている、この奇跡の『関係縁』を……守れなかった。
無意識のうちに唇を噛みしめる。
ここで自分が泣いてしまうと、政宗や統治が更に動揺してしまう。
それに――今は、泣いている場合ではないのだ。
頭を切り替え、冷静にならなければ。彼らのために、自分に今、出来ることを探さなければ。
仮に出来ることが何もなくても……今やるべきことは、涙をながすことではない。
瑠璃子はユカを抱えて立ち上がると、近づいてきた麻里子に彼女を引き渡す。
そして再びしゃがみ込むと、政宗の肩に手を添えて……彼が落ち着くまで、その場所にとどまった。
それくらいしか、思い浮かばなかった。
それから2ヶ月ほどが経過した秋、場所は西日本良縁協会福岡支局。
いつも通り朝の8時30分に出勤してきた一誠は、先に出勤していた瑠璃子を見つけて、思わず目を見開いた。そして反射的に着ていたジャンバーのポケットをまさぐって飴玉を探し当てると、それを持って瑠璃子の後ろへ移動する。
彼の足音に気付いた瑠璃子が顔をあげると、近づいてきた一誠を見つめて首をかしげた。
「おはよう一誠。どげんしたとー?」
「あ、いや……久しぶりだな」
「そう? 1週間前に会ったばっかりやけどねー」
「それは、そうなんやけどな……」
冷静に指摘されると、一誠は言葉に詰まるしかない。
今の瑠璃子は麻里子の補佐として、主に彼女の家でユカの面倒を見ていた。ユカは何とか一命はとりとめたものの、いつ状況が急変して命を落としてもしょうがないので、絶対に1人にすることが出来ない。麻里子から要請を受けた名雲直系の人間をもってしても、「どうしてこの状態で生きているのかが分からない」と言わしめるような状況だ。
そして基本的にはベッドで寝ていることが多く、病院以外で部屋から出ることはない。ただでさえ不安定な状態を厄介な『遺痕』に狙われ、襲われてしまったら……今度こそ『生命縁』が切れてしまう。そして何よりも、ユカ自身がそれを望んでいないのだ。
「あたし……また、迷惑かけますから」
学校へ通うことも、友人と遊ぶことも――政宗や統治と連絡をとることも、その全てを我慢している小さな体。
ユカの前では努めて明るく振る舞っているが、そう言って俯いてしまう彼女を……瑠璃子は黙って抱きしめることしか出来ないけれど。
そんな事情もあり、瑠璃子が福岡支局に出勤するのは不定期になっていた。そういった事情も考慮され、今は『縁故』として最前線に立つのではなく、事務などの裏方を手伝うことが多くなっている。恐らく今日は、麻里子がユカの側にいるのだろう。
口ごもる一誠に首を傾げつつ、瑠璃子は視線を机上に戻した。そして机にたまった書類を整理していると……後ろから彼が手を伸ばし、書類の上に飴玉を置いた。
「あんま、無理するんじゃなかぞ」
「一誠……」
声をかけようとして頭を上げたが、彼は既に彼女に背を向けて、少し離れた自分の席に向かっている。
瑠璃子はその飴玉を開封すると、口に含んで書類の確認を再開した。
その日の仕事終わり、時刻は18時を少し過ぎたところ。
本日分の業務を終えて、強張った肩をほぐしつつ夕食の献立を考えていた瑠璃子の方に、上司でもある古賀孝高が近づいてきた。
今日は麻里子の分まで外に出ていることが多く、顔を合わせるのは今日がこれが初めてのこと。
「古賀さん、お疲れ様です。私……何かやっちゃってましたか?」
相変わらず眼鏡が似合うクールな立ち姿は、隣に立たれるだけでまだ慣れない威圧感がある(気がする)。思わず何かミスをしてしまったのかと居住まいを正す瑠璃子に、孝高が意外な言葉を告げた。
「麻里子からの伝言を預かっている。今日は食事を外で食べてきて欲しいそうだ」
「え……?」
意外過ぎる内容に眼鏡の奥にある目を軽く見開くと、孝高は淡々と言葉を続ける。
「今日は、麻里子達も外で食事を食べるそうだ」
刹那、瑠璃子は更に目を見開いて孝高を凝視した。
今、彼は……「麻里子達も外で食事を食べる」と言った。その「達」の中には確実にユカも含まれているだろう。だって、麻里子が今の彼女を1人にするわけがないのだから。
「ほ、本当ですか!? ユカちゃん、外に出て大丈夫なんですか!?」
「麻里子自身が責任を負うと言っている。そういうわけだから、申し訳ないが自分の食事を何とかして欲しいそうだ」
「……」
瑠璃子が言葉を失っていると、孝高が訝しげな顔で問いかける。
「何か問題があるなら、俺から伝えておこう。どうかしたか?」
「い、いえ、ちょっと驚いてしまって……スイマセン。分かり、ました……」
慌てて取り繕いながら頷くと、用件を伝え終えた孝高は、くるりと踵を返して彼女に背を向ける。
「あ、あの……古賀さん!!」
「どうかしたのか?」
「い、いえ……その、麻里子さんはどうしてそんな、無茶なことを……」
瑠璃子の言葉に、孝高は迷いなく返答する。
「何かを変えるためだと思っている。少々荒療治だがな」
「変えるため……」
「用件はそれだけか?」
「あ、はい、お引き止めしてすいませんでした。お疲れ様です……」
瑠璃子の言葉に、孝高は今度こそ振り向かずに部屋を出ていって。
残された瑠璃子は……ぽっかり空いてしまった時間をどう過ごそうか、腕時計を見下ろして思案する。
その結果――
「……ってことがあったんやけど、一誠、どげん思うー?」
鰹節が踊る山芋の鉄板焼きをつつきつつ、ジョッキに入ったビールを飲み干した瑠璃子が、隣に座る一誠に向けて問いかける。
福岡の繁華街の1つ・中洲は、九州最大の歓楽街でもある。歓楽街ということで大人の接待向けの店舗も多いのだが、屋台を含めた様々な飲食店が軒を連ねているので、歩く道と時間帯さえ間違えなければ、とても面白い街だ。
そんな繁華街から少し離れた商店街の脇にある小さな居酒屋のカウンターで、瑠璃子は一誠を連れて晩酌を開始していた。
時刻は間もなく19時になろうかというところ。あの後孝高と入れ違いになるように戻ってきた一誠を見つけた瑠璃子が、「一誠、ちょっと飲みに行かんー?」と声を書かけたことで実現した飲み会。
カウンターに座っているのは、今のところ2人だけ。奥の座敷からは団体の予約客が宴会を開始している。ここの女性オーナーは麻里子を含む『福岡支局』の成人組とは顔見知りなので、ある程度の話は聞かないふりをしてくれるのだ。他の客はそれぞれに酒と料理を楽しんでいるので、誰も、2人の話など気にしない。
軟骨の唐揚げを食べながら芋焼酎を飲んでいた一誠が、瑠璃子の話を聞いて少しだけ顔をしかめた。
「麻里子さん……ここにきて随分と大胆なことをするんやな」
「そうなんよ。ユカちゃん、外に出るのは病院だって嫌なはずなんやけど……どげんすっとやかね」
頬杖をついてため息をついた瑠璃子が、横から軟骨を摘んで口に放り投げた。
一誠は「せめて断れよ」と呟きながら、その皿を少しだけ、彼女の方へ近づける。
そして、顔色を変えずに日本酒を頼む彼女の横顔に、苦笑いを向けた。
「相変わらず、酒は強いんやな」
「そうなんよ。どれだけ飲んでもちゃんと美味しいし、特に酔っ払うこともなかとー。いやーこげん丈夫に産んでくれた親に感謝せんとねー……」
そう呟いた瑠璃子は、何かを思い出して……無意識のうちにため息をついた。
自分には、感謝出来る親がいる。大切な弟や妹など、家族と呼べる人がいる。
ユカには……もう、そんな人は『いない』。
だからこそ自分が、姉のような立場で……守ってあげたかったのに。
「……ねぇ、一誠。ユカちゃん……これから、どげんなると思う?」
「どうなるんだろうな……少なくとも、俺達は見守るだけだ」
「政宗君、秋の試験……結局受験せんかったみたいやね。何か聞いとることとかある?」
「いいや。宮城の情報はほとんど入ってきとらん。ただ……彼の名前はまだ名簿に残ってるから、名杙から切られたわけじゃなさそうだ」
「そうなんやね……」
一誠の言葉を受けた瑠璃子は、目の前に届いた日本酒に口をつけて表面張力分をすすってから……頬杖をつき、少しだけ遠くを見つめた。
自分に一体、何が出来るだろう。
どれだけ頑張ってもいつの間にか全て横並び、満点が取れない、何も極められない……そんな、没個性気味な自分。
何に打ち込んでいいか分からなくて、新しい刺激を求めて飛び込んだ『縁故』の世界。
ここなら、何か一つのことを極めて、満点を取れるかもしれないと思った。
そこで様々な人と出会い、刺激を受けて――挫折した、それが今の自分だ。
プロフェッショナルになったつもりで、結局、何も変わっていなかった。
ユカや政宗、統治……後輩が前に踏み出せないのに、助けることが出来ない。
「私……これからどげんしたらいいっちゃろうか」
分からない。
自分がこれから、何を目指して進んでいけばいいのか。
また――中途半端に出来るようになって、失敗してしまったら。
一体……自分に、何が出来るだろう
瑠璃子の言葉を受けた一誠は、口に入れた軟骨を噛み砕いた後、それを芋焼酎で喉の奥に流し込んで……とてもナチュラルに返答した。
「今のままで頑張っていくしか、ないっちゃなかとか?」
「今のままで……?」
「ああ。山本ちゃんが生きるかどうかは本人の気力次第なところもあるけんが、麻里子さんも今回、外に連れ出したんじゃないかと思う。ここで瑠璃子が変に気を遣ったりすれば、山本ちゃん、また萎縮するかもしれんけんな。瑠璃子は今まで通り、食事を作って話し相手になって、側におってやればよかろうもん」
「それは、そうなんやけど……何か他に出来ることがあればいいなーって思って……」
「お前がそげん肩肘張ってどがんすっとか。それに……瑠璃子はもう、十分頑張っとる。これ以上やりすぎると、瑠璃子が先に潰れるぞ」
「え……?」
会話の中、ごく普通に返ってきた言葉に、瑠璃子は日本酒の入ったグラスを取り落としそうになった。
一誠は今、自分に対して……とても嬉しい評価をしてくれたような気がしたから。
「私……頑張っとると?」
「俺はそう思っとるぞ。違うんか?」
矢継ぎ早に問い返され、瑠璃子は一瞬思案した後……。
「……なして、そげん思うと?」
胸の中に浮かんだ疑問をそのまま問いかけると、グラスの中の芋焼酎を飲み終えた彼は、何の躊躇いもなくこう言った。
「瑠璃子は学校も、家も、『縁故』のことも、今までずっと全部頑張ってきたやろうが。高校生の時から何かと支局内で勉強しとるのは見とるし、今は山本ちゃんのために頑張っとるのも知っとる。ここで瑠璃子がやりすぎて倒れると、山本ちゃんがもっと悲しむぞ」
「……」
どうして彼は、こんなことを言ってくれるのだろう。
頑張りが足りない、満点が取れないと悔み、出来ないことばかりを嘆いて……下ばかり向いていたのに。
自分でもちゃんと見てこなかった姿を、見てくれている人がいた。
こんなことを面と向かって言われたのは……生まれて初めてだ。
呆けている瑠璃子に気付いた一誠が、最後の軟骨を食べ終えて彼女を見つめる。
「やけんが……瑠璃子は今のまま、出来ることをやればよか。そうすればきっと……何とかなる」
ドヤ顔でとても漠然としたことを言ってのけた一誠に、瑠璃子は思わず吹き出してしまった。
「何とかって……具体的にどげんなるとー?」
「そげなことは分からん。ただ……なんもせんで立ち止まっとるわけじゃなか。俺達は確実に前へ進んどると思う。やけんがきっと、いい方向に向かうはずだ」
彼が何の疑いもなく、そんなことを断言するから。
瑠璃子はそっと、自分が食べていた山芋の鉄板焼きを、取り皿と共に一誠の方へ動かした。
そして顔を上げて前を見つめ、カウンター越しにオーダーを告げる。
「すいませーん、焼き鳥の豚バラ10本お願いしますー」
少し離れた場所で作業をしていた店主が頷いたことを確認して、残っていた日本酒を飲み干す。
続けよう、今の自分に出来ることを。
上ばかり見て出来ないことを嘆くのではなく、眼の前にいる彼女が笑えるような……まずはそんな場所を作っていこうと思う。
そうすればきっと、ゆっくり……でも確実に、何かが変わっていくはずだから。
程なくして、2人の前にキャベツを盛ったものが運ばれてきた。福岡の焼き鳥といえばキャベツ(生)の付け合せが鉄板であり、かかっている酢ダレと一緒に食べるのが当たり前。店舗によってはキャベツのおかわりが自由という場合もあり、相性抜群のタレとも相まって、無心でキャベツばかりを食べてしまうこともある。
2人がそれぞれに箸でキャベツをつまんでいると、先程瑠璃子がオーダーした焼き鳥(豚バラ肉を焼いて、塩で味付けしたもの)が運ばれてきた。当然のように1本もらおうと手を伸ばす一誠から、瑠璃子が意図的に皿を遠ざける。
「……瑠璃子、なして俺に1本もくれんとか!?」
「豚バラ10本とか1人前やろうもん。食べたかったら頼めばいいやんねー」
そう言ってこれ見よがしに彼の前で口に含むと、一誠がすかさず手を上げて「俺にも豚バラ10本!! あと、鶏皮と砂肝も3本ずつ!!」と注文を叫ぶ。
そして山芋の鉄板焼き(ちょっと冷めた)を無言で取り皿によそう一誠に、1本目を食べ終えた瑠璃子が笑顔を向けた。
「ありがとう一誠。私が砂肝好きなのよう知っとったねー」
「俺が食べたいから頼んだんですけど!? ったく……」
もはや諦めにしか思えないため息と共に、一誠が肩をすくめて。
そんな彼と一緒にいる間、自分の体がこわばっていなかったことに気付いたのは……これから数年後のことだった。
福岡で焼き鳥にキャベツがついてくるのは当たり前体操です。頼まなくても出てきます。(https://news.mynavi.jp/article/20121004-ryokofukuokayakitori/)
豚バラに関しては本編などでも語っているので今更ですよね。美味しいですよ……あと、居酒屋メニューでは山芋の鉄板焼きが好きなので書きました。あのふわふわしたやつな……好き。(語彙力)
瑠璃子の中でユカを守れなかったことは大きな後悔になっているので、そこを少し掘り下げられるといいなーと思いました。このあたりはもう少し本編でも補足するかと思いますが、書いていてとても楽しかったです。
そして……まだ付き合わないんですねこの2人。本当に霧原が書くエンコのカップルは付き合うまでが長いですね。来年の一誠の誕生日には付き合わせたいですね。どうなるんでしょうね。とりあえず来年の霧原にご期待下さい。
瑠璃子、誕生日おめでとう!! 食べ過ぎと飲み過ぎには気をつけてねー!!




