出会い
「気を付け、礼」
帰りのホームルームが終わり、少女は鞄を持って教室を出る。
階段を下り、昇降口で上履きをローファーに履き替え、帰路をたどる。
少女の通う学校の最寄駅である来栖駅の改札を抜け、電車に揺られて二十分。
少女の家の最寄駅である西浜駅に着く。
再び改札を抜け、自分の家とは逆方向に進む。
ついたのは、昔ながらの風貌を漂わせる建物。
入り、奥へと足を運ぶ。
そこは頼りない明かりを灯す蛍光灯と、見渡す限りの本。
古本屋である。
最奥についた少女は足を止めると、何かを感じたのか一冊の本に手を伸ばした。
なんてことはない。
立ち読みで読みつくしたこの本たちの中に少なくとも一度も見たことのない、見慣れない本があったから手に取ってみただけである。
黒いハードカバーに身を包み、ところどころ金色のラインが綺麗なその本は、タイトルも何も書いていなかった。
中にも何も書いていない。
ぱらぱらとページをめくり、いい加減飽きが精神を支配しようという時にふと、何かが記されているのが見えた。
少女は慌ててページを戻す。
「って、なにこれ」
そこには、見たことない記号やら文字やらが並んでいた。
今まで様々な本を解読してきた少女だが、こればかりはわからないだろう。
少女が本を戻そうとすると
「・・・・・・」
この分厚い本に似合わない”105円”というラベルが目に入り、そのままレジへ持って行ってしまった。
そのまま帰宅し、少女は自室でその本に挑んだ。
この本に書かれていることを解読してやるという決心の下に。