表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第四章『届かぬ願いへ』

これで最後です。



「いえ。僕もついさっき、着いたばかりですよ」

ルッソの返答がデートに遅れた者を慰めるようなもので、環斗は苦笑してしまう。

迷いは()てた。生存本能も殺した。願いは、ただ一つ。

「それじゃあ、すぐに始めるか。お前を、殺すからさ」

「ふふ。争いは無益なものですよ。止めた方が賢明だ」

ルッソの声は台詞(セリフ)とは裏腹に止める気など毛ほどもない。

確かに、普通に考えれば環斗は勝てない。逃げた方が賢明だ。しかし――

「戦ってしか、得られないものもあるから。戦うさ」

環斗は鞘に手をかけ、柄を掴み、指で(つば)を弾く。

刀身が(あら)わになる。雪の白光(はっこう)にて刀身が輝く。

全ての刀身を解き放つと鞘を上空に放り投げた。

ルッソは目は笑っていないが、口元は吊り上げる。

それが彼の戦闘スタイルなのだろう。ルッソの漆黒のコートが宙を舞った。

密度的には鞘の方がある。だから、鞘の方が早く落ちる。

それから、コートが落ちるまでの時間。それは、永遠に落ちてこないのではないかと思う程、遅かった。しかし、落ちないものはない。

やがて小さな、静かな落下音さえも雪が吸ってしまった微量(びりょう)の音が響いた。

それを皮切りに周囲から風が吹き荒れ、木々が蠢く。コートが再度、宙で踊り、積もっている粉雪が吹雪を起こす。

周囲は薄暗くなっており、加えての吹雪。これにより視界が(せば)まるだけでなく、ルッソの姿すら隠れそうになる。

その時、不意にその場には似つかわしくない軽い音が響いた。

幸い、環斗の視界にしっかりとルッソは映っていた。

加えて、粉雪を切り裂いて直進してくる存在を粉雪が知らせた。

環斗は雪に顔が埋まってしまうのではないかと思う程、体勢を低くして切り裂く存在をやり過ごす。

「――ほう? まさか、不可視の鎌鼬(かまいたち)を避けるとは」

ルッソは多少なりとも驚いたのか、感嘆(かんたん)の声を()らす。

今、ルッソが使った魔法は鎌鼬という、不可視の風の刃を作って飛ばす魔法だ。これを応用した物が、世界を終わらせた魔法に他ならない。

「まぁな。俺はお前の(くせ)ならお前以上に知ってるからな」

環斗は体勢を元に戻してルッソの疑問に律儀(りちぎ)に答えた。

確かに不可視ではあるが、回避不可能ではない。

ルッソの魔法は基本、風を集めねば使えない。

なら、回避方法は二つ。先程のように巻き上げられた雪が教える場合。もう一つは――

「ほう? なら、もう一度、避けてみて下さいよォ!」

ルッソは今度、右手を大きく振るった。

だが、環斗は避けるわけではなく、むしろ前進してルッソに近付く。

これはルッソも予想していなかったのか、両目を見開く。

ルッソから賞味(しょうみ)数メートルという所で体勢をまた低くする。

すると、強風が環斗の上空を(さら)い、過ぎ去った。

環斗はそのままルッソに肉薄し、横薙(よこな)ぎに刀を振るう。

だが、ルッソは自身を強風にて吹き飛ばし、後退する。

環斗はループを続け、ルッソの癖、()しくは魔法の発動条件を知った。

もちろん、風を巻き起こすには予備動作が必要だ。だが、風を操るには必要なものがある。

例えるなら、ルッソの体は指揮棒(タクト)だ。風は楽団(がくだん)員。

ルッソの指揮に対して風は魔力がある限り忠実に動く。ルッソは魔法を行使する時、体を動かして放つ風魔法の種類を決しているのだ。

つまり、ルッソを見続ければ次に来る魔法の種類が分かる。

魔法の先読みが出来、回避も容易になるのだ。

だからといって、回避方法が分かるわけではない。環斗は回避方法を探るために何度もルッソと(たたか)い、負け続けたのだ。

当然ながら、この癖を知り、回避方法を知っても体が動作に追い付かない場合がある。その点で言えば、宵に任せるのも手である。

だが、こればかりは、もう宵を戦わせまいとする環斗の意地である。

「ほう? まさか、あれも(さば)かれるとは。しかし、これなら――!」

すると両手の平を向かい合わせ、そこに急流の風が流れ込む。

そして、片手を(たて)に振り下ろす。と、圧縮された風塊(ふうかい)が地面に叩きつけられたのか、叩きつけられた周辺の雪どころか、その下にある地面ごと、風が(えぐ)った。

当然、雪と土が(ちゅう)を舞い、環斗の視界からルッソを隠す。

雪と土が着地すると、元の場所にルッソはいなかった。

だが環斗は平静を保ったまま、視界を上空へと向けた。

するとそこには案の定ルッソがあり、ルッソは指を鳴らす。

環斗はルッソと対角線上(たいかくせんじょう)にいないように動き、ルッソの鎌鼬をかわした。

「――ほう? これをかわすとは。つまり、君は先読みができるのでしょうか?」

風を自身の下方に渦巻(うずま)かせ、その中心に舞い降りたルッソは落下の勢いを殺した後、ゆっくりと着地した。

ルッソは環斗の魔法を過信する。が、その口調は危機感を(はら)んでいない。

「なら、分かっても避けられない攻撃をしましょうかねぇ」

そう言うと、ルッソはまた両手の平を向かい合わせ、風を圧縮する。

だが、ルッソがその行動を起こす前に環斗は行動し、ルッソに迫る。

それでも後退した分と雪にて不安定な足場のせいで速度が出ない。

ついにルッソは圧縮した風を両手で潰した。

マズイ! 技の予想もここまでの展開も前に見たけど、やっぱ間に合わない――!

一瞬の間に思考を終え、環斗は足元に落ちた(さや)を蹴り上げ、刀身を鞘に(おお)わせる。

同時に跳ねつつ、体の急所を極力(きょくりょく)、両手両足で守り、やってくる風に備える。

その風はルッソを中心に球体状に囲い、拡散し、雪と地面を抉り、巻き上げては吹き飛ばし、木々を()ぎ倒し、小柄な環斗も吹き飛ばす。

何十メートル、何メートル吹き飛ばされただろう。

どのくらいの時間、環斗は気を失ったか分からない。

だが、気付けば天空からちらほらと雪が舞い降り始めたのは分かる。

――綺麗、だな。

死に()く予定の環斗は純粋な気持ちで、その雪を見て思った。

環斗が上体を起こすと体の各所が悲鳴を上げる。

それでも環斗は体に鞭を打って刀を杖代わりにしながら起立した。

周辺の木々は何事もなかったかのように生い茂り、先程までの戦闘がなかったかのように静まり返っている。

だが、それはほんの一部の話に過ぎないことを散策(さんさく)した環斗は知る。

一見すればルッソの魔法が嘘のように周辺の木々に変哲(へんてつ)はない。

しかし環斗が奥へ、また奥へと進む度にその仮面は()がれた。

木々が(かたむ)き、根本が露わになる。幾十(いくじゅう)もの木々が薙ぎ倒されている。何十カ所もの雪が不自然に盛り上がっている。木々の幹の一部が孤を描いて(えぐ)れている。

何より顕著(けんちょ)だったのはある一カ所の地面を始めとして、雪と木々と地表が吹き飛ばされて深々と円型のクレーターが出来上がっていたことだ。

通常の人間どころか、魔法使いでさえ驚いて腰を抜かすだろう。

だが、この光景を見慣れた環斗は驚かない。

見慣れなくとも、全人類を殺せる魔法使いだ。この程度は可能だろう。

ただ、環斗は見慣れつつもやはり、ルッソに呆れる。

ったく。この魔法で何度死んだか。やっぱ、()けられねぇか。

通常、これ程の魔法を受ければ人間など一溜(ひとた)まりもなく消し飛ばされる。

そうでなくとも大規模な魔法だ。体の各所にダメージを受け、最悪、急所にダメージを受けて再起不能となる。

だから環斗は受ける前に体を浮かせてダメージを減衰(げんすい)したのだ。

視線をクレーターの中心部に映すと、ルッソがいた。

環斗はバランスをとりながら、坂になっているクレーターを(くだ)る。

クレーターの下に着くと、環斗は冷静に状況を分析する。

風が溜まり易い形状(クレーター)、距離。ルッソ(あいつ)の独壇場(どくだんじょう)だな。

そう判断するが、かと言って環斗に打てる手立てなど、存在しない。

何せ、周囲は風を阻害(そがい)する物は何もないのだ。つまり、身を隠す物は何もない上、環斗の装備は服と刀しかないのだ。

だが環斗は別段、絶望はしない。これも過去に体験したからだ。

この状況下から記憶を探り、先の展開を予想する。

「やぁ! 素晴らしい、ゴキブリ並みの生命力ですね! 感服しました!」

ある程度、距離が離れているルッソは声量(せいりょう)を大きくする。

「まぁな! あ。あと一応、言っておくと俺の能力は未来予知みたいに使えるものじゃねぇからな! 間違えんなよ!」

環斗は少しだけ、可能性に賭けてみることにする。

もし、ルッソが環斗の言葉を信じるなら、油断するかもしれない。

ループ魔法と未来予知(みらいよち)魔法。この二つには大きな(へだ)たりがある。

ループ魔法は実体験をしなければ相手のことを知れないことに対し、未来予知能力は死ねないが、様々な事柄を体験しなくても知れる。

一見、この二つに差はないように思われる。

だが、ループ能力は自身が見た未来と違う可能性がある。その場合、未来予知能力と違い、未来にどんな事象が起きるのか分からない。

だが、未来予知能力なら知れる。

むしろ余計な先入観(せんにゅうかん)がない分、こちらの方が使い勝手が良い。

だから、ループ能力と言った方が油断してくれるのだ。

「俺はループ能力だから! そんな凄くはねぇから!」

もちろん、敵の言葉をあっさりと受け入れる場合の方が(まれ)だ。

だからこそ、環斗は賭けをしたのだ。分の悪い賭けを。

だがこの際、環斗はどちらに転んでも良いと考えている。

何せ、環斗にとって勝つことが目的ではないからだ。

環斗は徒歩でお互いをハッキリ確認出来る距離まで移動する。

「さて。まさか、ここまで残るとは予想外でした」

ルッソは今の魔法、通称、空気圧縮(くうきあっしゅく)魔法で環斗を仕留められると思ったようだ。

「そうか? こっちとしちゃあ、まだまだ残る気だぜ?」

「どうぞ。僕がもっと本気を出せば良いのだから」

すると、ルッソは右手の中指と親指を鳴らした。

だが、それはフェイクである。環斗はそれを知っている。本命は――

環斗は現状の立ち位置から大きく右手に動く。

すると環斗のすぐ左を、降雪(こうせつ)を引き連れ、環斗へと向けたルッソの左手が始点(してん)である円錐(えんすい)の風塊が通過した。

実際のところ、ルッソの指鳴らしはフェイクである。

本来、ルッソの魔法はルッソの指、腕、足――つまり、ルッソ自身の体の動作でどんな魔法が放たれるか決まるのだ。

指鳴らしは相手の意識を()らすための見せかけに過ぎない。

初撃(しょげき)の鎌鼬も指鳴らしに見せかけつつ指で孤を描いていたのだ。

これまでルッソが使った魔法の発動動作を説明する。

指で孤を描くと、孤を描いた、軌跡(きせき)に沿って鎌鼬が大型化しながら進む。

風を圧縮して投げると風塊が対象を吹き飛ばす。

風を圧縮して両手で(つぶ)した瞬間、球体状の風がルッソを中心に囲い、拡大する。

風を圧縮し、保持した手を伸ばすと円錐型の風が指向性を持って吹き飛ばす。

ちなみに、人類を屠った魔法は鎌鼬の応用である。

どれもこれも強力かつ、()めが少ない上に(はや)い。

だが、魔力の消費がこの魔法は激しい。

「ほう。仮に君の言うことが真なら僕の手札は君にバレていると思った方が良さそうですねぇ。ですが、風塊(ふうかい)解放の時にはダメージを負った。なら――」

ルッソは周囲の風を集め、地面の石を抉り、上空(じょうくう)に飛ばす。

上空(うえ)に飛ばす? だとしたら、まさか――

環斗は今から降る雨の回避手段を脳内で探る。

瞬時に出た解答を環斗は疑いも吟味(ぎんみ)もせずに実行する。

駆け出す。一歩でも早く。一歩でも多く。

やがてポツリと、降雪(こうせつ)の中から一つの小石が降ってきた。

その時には幸運にも、環斗はルッソに肉薄していた。

続いて巻き上げられた小石が雨のように無作為(むさくい)に降り始める。

だが、ルッソの周囲に降り注ぐ石の雨は風にて(さえぎ)られる。

その間に環斗は好機と思い、刀を鞘から放ちながら振るう。

ルッソは手の平から強風を環斗の腕に吹かす。環斗の刀が腕ごと後方に下がる。

(しか)るに環斗は好機を逃し、ルッソダメージを与えられなかったこととなる。

でも! こう距離を詰めちまえばこっちの方が速い!

今度は右手に持つ刀を返して肩口(かたくち)に、左手で掌打(しょうてい)(あご)に、足刀(そくとう)(もも)に。

全て人体の急所に通ずる部分。当然ルッソもただ、見ることはない。

一つ一つを(さば)けば少なくとも一撃は入る。

だからルッソは急速に風を収束(しゅうそく)して、ただの衝撃波(しょうげきは)を環斗に放つ。

衝撃波は環斗に少々のダメージと降石(こうせき)と環斗を吹き飛ばす。

一閃(いっせん)のリーチが長かった。ルッソに浅い切り傷を刻む。

吹き飛ばされた環斗は両足を地面に着け、勢いを殺しながら着地できた。

「っふぅ。まさか、あんな手を使うとは。予想外だった」

「いえ、僕の方こそ。まさか雨が避けられるとは、予想だにしませんでした」

お互い、今の攻防は一歩間違えば致命傷(ちめいしょう)になりかねないものだった。だが、二人の表情はそんなものを感じさせない程の笑顔た。

「ですが、今のお陰で突破口は開けましたよ」

例え、(いく)ら魔法の癖を知っていようと避けられねば意味はない。

つまり、今の雨や風の圧縮解放のような大規模魔法は避けれないのだ。

環斗は鍛えたとはいえ経験、知識だけ。それ以外、変わりはない。

「あ……やっぱ気付いた?いやぁ止めて欲しいなぁ」

環斗は今までの表情を解き、(ほころ)ばせて笑う。

もちろん、その声色、表情は困惑も何もない。

「おや? まさか、そのような反応をするとは、意外です」

ルッソには長年溜()め続けた膨大な魔力がある。

例え今日、魔力が尽きても長い目で見れば好機(チャンス)は今日だけではない。

ただの、大局の一部に過ぎないのだ。

最大の障害である環斗を排除できれば、残る敵である宵だ。だが、宵はルッソの前に敵ではない。目下(もっか)、最大の敵は環斗なのだから。

ルッソは、そんなことを考えながら、発言したのだ。

「そうだろうな。さぁ、来いよ。いつまでも付き合ってやる」

息を深く吸い、()いて刀を握り直す。ルッソを視線で射抜く。

「ほう。なら、君の期待に沿えるよう、微力(びりょく)を尽くしましょうかねぇ!」

ルッソは両手を広げ、それを天高く掲げる。

すると、ルッソの周囲に(いく)つもの、人一人がすっぽり収まりそうな大きさの竜巻(たつまき)が、降雪を巻き起こみながら現れる。

「さぁさぁさぁさぁさぁ! ()けれるのなら避けて下さいよぉ!」

竜巻の平均時速は六十キロと言われている。大体、平地の車と同じくらいだ。

その速度は今までのルッソの魔法では決して速いとは言えないが、遅いとも言えない。

当然、その速度を生身の人間である環斗は越えられない。

竜巻の数は四つ。前方より接近。回避は可能。

状況全ての計算による答えを弾き出すと、環斗は()えて真正面へ駆ける。

竜巻は雪を巻き上げているお陰で目視可能となっている。

その竜巻の丁度、二つの間を環斗は器用にすり抜ける。が、竜巻も抜いた環斗を追って方向を反転。距離を数秒で縮める。

最早(もはや)、ルッソとの距離は五メートルも存在しない。

だが、ルッソは(すで)に環斗の攻撃を読み、次の魔法の使用準備にとりかかっている。

完成した風塊をルッソは潰して再度、大規模魔法の使用を試みる。

だがその前に環斗が肉薄し、刀を振るう方が速い。

ルッソはまた、ただの衝撃波を環斗に向けて放つ。

だが、それを見越していた環斗は横に飛んで竜巻から距離を稼ぐ。竜巻は消え去るが、その前に瞬く間に不発に終わった衝撃波は消え去り、肩口を切り裂く。(すね)に足刀を叩き込む。衝撃波は連発できるが、時間は間に合わない。

結果、環斗の刀はルッソの肩口を喰らい、足刀は脛を打った。

だがルッソもまた、魔法使い。自身を風で吹き飛ばして威力の減衰を果たす。

とはいえ、急所を強打したのは間違いない。

ルッソは肩口を切られた方の腕をだらしなく()らし、足刀で打たれた脛の足の膝を地面に着いていた。

通常、これ程の傷を負えば泣き叫んでものた打ち回ってもおかしくない。だが――

「……くく……!クククハッ! カハハハハ! クァッハハハ」

ルッソはとうの昔に狂っていた。今までは仮面を被っていたに過ぎない。

ルッソは(わら)う。狂ったように。痛みが嬉しいのか、痛覚が狂っているのか。

だが環斗にとって、それは些細(ささい)な問題だった。真の問題は――

きたキタ来たァ! やっと! これで、俺の思い通りにななる!

「ハァッ! アハハハハハハハ! 良いでしょう。良いだろう! お前を殺す。(ころ)してやる! 死にたくてもムダですよォ!」

興奮だろうか。

怒りだろうか。

狂乱(きょうらん)だろうか。

当惑だろうか。

どちらにせよルッソは化けの皮が()がれると言葉という体裁(ていさい)すら取り繕わなくなる。

ただ、時折(ときおり)混ぜる言葉遣(ことばづか)いがルッソの異常さを引き立てる。

風を集める。圧縮。潰す。環斗が吹き飛ぶ。風を集める。圧縮。潰す。環斗が吹き飛ぶ。風を集める。圧縮。潰す。環斗が吹き飛ぶ。

ルッソはその魔法を何度も繰り返す。飽きもせずに。

環斗は吹き飛び、体中に打撲を負う。だが、生きている。

それは、ルッソが瞬時に弾き出した環斗の耐久性に合わせた威力で使うからだ。

環斗の意識が朦朧(もうろう)となっていく中、ふとルッソが笑いを()み殺しながら、しかし噛み殺し切れずに笑みを浮かべながら話した。

「人の命は重いと言う人がいますね。しかし、事実はどうでしょう?人は他者を簡単に(おとし)めます。他者を迫害し、他者を傷付け、結果的に死へと追いやる。ここでは倫理感(りんりかん)、常識は全て意識の外へとなる。

例えば(いじ)めなどが良い例です。虐めたくもないのに無関係な者から加害者になる。ならなければ自身も被害者になるかもしれないから。社会主義は数が絶対な正義だから。

君は君の魔法から察するに、前の僕と話したでしょう。例えば何故、僕が人を殺すのか。殺して何か思わないのか、と聞いたでしょう?」

急に口調を戻し、ルッソは環斗に独白(どくはく)じみた話しをする。

「人には三大禁忌(さんだいきんき)があります。殺人、食人(しょくじん)近親相姦(きんしんそうかん)。その中で殺人を良く聞きますよね?

人が人を食うのは嫌でしょう? まぁ、食料が豊富な日本人ならではかもしれませんが。近親相姦は嫌でしょう? 正直、僕もゲンナリします。ですが、殺人はよくある。人は大切なものの為なら平気で他を切り捨てられるから。僕もそうです。

それにどんな世界でも、殺人は横行しているでしょう? 殺人のタガが人間は外れ易いんです」

「だから、殺すのか……? 無関係な人を。一方的に」

「ええ。僕は知った。僕の妻を殺した村で。数は正義なのだ。例え、それが間違っていようと、多数派は絶対なのだ、と」

すると、ルッソはここで一呼吸置き、強く()える。

「だが、そんなものはクソ食らえだ! その上、人はそれが(ゆが)んでいても、多数という理由だけで()とする! そんな奴らは、滅びてしまえばいい!」

ここで、正常な時のルッソが全面に押し立てられた。

口調の高低差激しく、静かに言った。

「だから、僕は滅ぼす。人類を。アリスも反対はしなかったから」

 それを聞き終えると、環斗は身体の痛みもあったがそれ以上に、ルッソの言葉の正しさに、人間味に嘆息した。

「……正直、最初にお前の意見を聞いた時、耳を疑ったよ」

お前は! お前はそんな理由で人を殺したのかよ!

まだ、物事を完全に多面的に見れなかった頃の自分。

自分の中の世界でしか、自分のものさしでしか、ルッソを(はか)れなかった。

だが、今は。少なくとも今は、ルッソの気持ちを理解出来る。

それだけ、心のゆとりができた。

「……確かに、お前は正しいよ。人の命は軽い。急所を活用すりゃ、無料(ただ)で命を奪い取れる。それに人は、度し(がた)い」

今はルッソの気持ちが理解出来るから、彼の言い分に間違いはないと環斗は思う。

「でも、そんなことはどうでもいい(・・・・・・)。それこそクソ食らえ、だ。お前がどんな願いを(いだ)こうが、何をしようが、知ったこっちゃねぇ。けど、俺は、俺たちは、ただ明日を見たいんだ。そのためにお前は邪魔だ。だから、殺す」

はは! 何だ、これ。完全な自己正当化じゃねぇか。

自嘲(じちょう)しながら、環斗は自身の我が(まま)を脳内で反芻(はんすう)した。

「俺は明日が欲しい。お前は明日を消したい。で、お前は譲歩(じょうほ)する気はないだろ? 俺もない。これは完全に相反している。なら、どっちかが自分の意見を通したいなら、強い奴の意見が採用されんのは世の常だ。だから、こうして言い合うこと自体、おかしいんだよ」

正直、環斗の体中は悲鳴を上げている。とても戦える状態ではない。

だが、それを理由に戦いを諦める程、環斗は聞き分けは良くない。

「っ! 正気ですか? まともに戦える状態ですらないのに」

環斗が力を振り絞って立ち上がると、骨が(きし)む。肉が悲鳴を上げる。血管が騒ぐ。脳漿(のうしょう)が沸騰する。脳が危険信号を送る。理性が止める。

だが、だからこそ、環斗は立ち上がり、刀を構えた。苦笑しながら。

そんな顔も、言葉もできんじゃねぇかよ。

「んだよ。キレたフリかよ。ま、どっちでもいいけどさ」

ルッソの言う通り、環斗は立ち上がることさえ、億劫(おっくう)になっている。

可能なら、環斗は冷ややかな雪原に寝転んで火照った体を冷却したいとさえ、思った。

だが、それを実行するのは終わってからと決めた。

環斗の願いは痛みに負ける程、軟弱(なんじゃく)なものではない。

「――いえ。時々あるんです。全てのタガが外れることが」

環斗にとって、そんな瑣事(さじ)最早(もはや)、興味も何もない。

「ああ、そうかい。それより続けないか? 最後の殺し合いってやつをさ」

そうして、環斗はようやく(くる)えた。圧倒的な危機的状況だというのに、(わら)った。

ああ。これでやっと、ルッソと本気で殺し合える。加減も良心の呵責(かしゃく)も一切ない、(はた)から見れば、非生産的極まりない殺し合いが。

魔力の残量はルッソはそう多くないハズである。

それが環斗の破顔を一層、促進させている。

そもそも、環斗にとって勝とうが負けようが、問題ではないのだ。勝てばこれ以上、ルッソの犠牲になる者はいなくなる。負けても環斗の命一つが消えるだけ。

つまり、環斗は自身の命を軽く見ていた。捨て石程度に見ていた。

その時、唐突(とうとつ)にルッソが難しそうな表情で考え始めた。

何かが引っ掛かったのだろう。ルッソの思考は彼の表情の変化を皮切りに終わった。そして、ルッソの表情が驚愕へとなる。

「――まさか! 環斗。君は自分の死を想定していたのか……!」

この言葉をきっかけに、勝利を確信した環斗は作戦を(しゃべ)り始めた。

喋る。喋べらない。どちらにせよ、最早、ルッソは手遅れだ。

「ああ。俺の作戦は単純さ。まず、俺がお前と戦う。その時に必要なのがお前の魔力を減らすこと。お前が人類を殺せなくなる程にな。成功後、俺は死ぬ。お前相手に勝てると思ってないからな。その後に帰国する両親がお前を始末する手筈(てはず)さ」

つまり、環斗はルッソの魔力削減のための捨て駒。真打(しんう)ちは両親だ。

この作戦には宵もアリスも入っていない。入れたくないからだ。

ルッソの魔法は魔力消費が激しい。これが僥倖(ぎょうこう)だった。

だから環斗はルッソに大規模な魔法、作戦を(さと)らせないために小さな魔法を使わせた。

完全に環斗の作戦勝ちだった。何せ、環斗ではルッソに勝てない。

なればこそ、環斗は一矢報(いっしむく)いるために、全ての可能を生かすためにこの策をとった。

「成る程。全ては環斗の手の上で(おど)らされていた、というわけですか」

苦虫を噛み潰したかのような表情をしながらルッソは環斗を見る。

当の環斗はただ、意地の悪そうに口元を吊り上げるだけだ。

「分かりました。この一戦にすれば僕の負けです。

――ですが、大局的には僕の勝ちだ」

ルッソが風を集める。かき集める。それはやがて明確な殺意あるものとなる。

ルッソが手の中で形成した風塊(ふうかい)はルッソ自身の中に打ち込む。

その魔法はルッソを中心に全方位に(くま)なく鎌鼬(かまいたち)を打ち出す魔法。発動は速い。

――まぁ、いっか。倒し方も(くせ)も両親に教えた。心残りはもう、()てた。

だが環斗とて全てを諦め、投げ捨てることはしない。

「ただで、死ぬるかよォ!」

ルッソの魔法の完成も発動も速いが環斗はせめてもう一撃、叩き込みたい。

駆ける。

全てを諦めて。勇敢(ゆうかん)特効隊員(とっこうたいいん)のように。駆ける。

だがやはり、ルッソの方が圧倒的に速い。環斗が着く前に、発動。

だが目は閉じない。閉じれば勝ちを(あきら)めることと同義だから。

突風が吹き荒れ、それが皮肉にも優しく環斗を包む。鎌鼬が環斗を引き裂かんと襲いかかる。避ける暇も気もない。鎌鼬は環斗を――

――殺せなかった。

次の瞬間、環斗の見る景色が高速で流され、聞きたくない声がした。

「環斗くん! 私、言いましたよね! 仲間に頼って下さいって!」

包み込むような、不思議で、だがどこか柔らかくて優しい香りが環斗の鼻孔(びこう)をくすぐる。

「――何で、助けに来たんだよ。お前がいなくても、片付いたんだぞ、(よい)!」

もう一振りの刀を持っている制服姿の望月(もちづき)宵がいた。

「それにお前、もう戦いたくないだろ! 何で来たんだよ! 俺は――」

すると、宵には珍しく、怒った口調、表情になった。

「だって環斗くん、今日は変だったから! 環斗くんは、私の特別で、大切な人だから!」

気付けば、宵の流すダイヤモンドのような涙が宵の瞳の軌跡(きせき)にあった。

宵が音もなく、まるで舞うかのように地面に着地する。

すると、それに続いて肩で息をするアリスが森の奥地(おくち)から現れた。

「――っ! あ、アリスまで? お前ら、何でこんな所に来たんだよ?」

環斗は今、決意が()らぎそうになっている。生きたいと願いそうになっている。

この心理状態だと無茶出来ずに、ルッソに特攻も出来ない。

「ゲームセンターにいて、山がいきなり半壊した。あと、私たちは環斗からのメールを読んだ。だから、もしかしてって思った」

気付けば、いきなり山が半壊する等、常識のものではない。

――ダメだダメだダメだダメだダメだ! 生きたいと思うな。全ての希望を捨てろ。ただルッソに手傷を負わせることだけを考えろ。他は何も考えるな。

自分にそう言い聞かせながら、自らを(りっ)することに環斗は(つと)める。

二人は一般人である雪子と駿太郎には来ないようにと言ったと環斗は推測(すいそく)する。

その時、環斗は感じたくて、だが心のどこかでは感じたくないものを感じた。

宵の涙は微風(びふう)とその後に吹いた強風によって(さら)われる。

環斗がアリスの手を引っ張りながら宵を押し倒したことで微風が起き、その後に大地をまだ生えている大地を木々ごと消し去る円錐(えんすい)型の強風が吹いたのだ。

環斗のとっさの機転のお陰で二人は事なきを得る。

すると、強風が吹き終えた後にまるで、嘲笑(あざわら)うかのように声が流れた。

「――おや? 一人は望月さん。もう一人は我が親愛なる娘、ですねぇ。こんな危ない所へ、一体、何の用でお越し頂いたのか聞かせてもらっても?」

ルッソが周囲にいない代わりに風が喋るかのように声が聞こえる魔法。

これは、風が対象の言葉を運び、会話を成立させているのだ。

「――思えば私はあなたと決着を付けていません。それを付けに」

「私はお父さんを止められるとは思っていない。だから、見届けに」

二人がそう返答すると同時に風が二人の言葉をルッソの元へ運ぶ。

すると、数秒の時を要してから返答の風が届けられた。

「いいでしょう。アリス、君は下がっていなさい。望月さん。環斗と組んで下さい。二人なら、勝算も出る。環斗、違いますか?」

当然、環斗は宵を戦わせないために伝えなかった。だから答えは決まっていた。

「ああ、違う。宵がいない方が勝算がある。だから宵は――」

宵を想っての行動。しかし、環斗の言葉は当の宵によって(さえぎ)られた。

「参加するなって言うんですかっ? そんなの、自分勝手です!」

「自分勝手は宵の方だろ! これ以外に犠牲が少なくて宵が戦わないで済む方法はない!」

「それこそ自分勝手です! 確かに環斗くんの言う通りかもしれません。でも、例え、明日を向かえても環斗くんのいない明日なんて、私はいりません!」

ここで環斗が今まで抑え付けていた感情が一気に吹き出した。

宵を戦わせたくない。でも、生きたい。宵と共に戦った方が良い。でも、嫌だ。

環斗の中で生み出させた、環斗自身も手に余る二つの感情。

このジレンマを克服(こくふく)する方法を、環斗は知らない。

甘えられればどれだけ楽か。潔ければどれだけ楽か。

だが、環斗はどちらも選べない。

感情が戦わせるなという。

理性が戦わせろという。

だが結局、両方が互いの意見をすり合わせて結論に至った。

「――俺は一人で戦う。でも、宵が無理に参戦するのは止められない。そんな余裕もない。好きにしろ。でも、俺は死ぬ気だからな」

それは環斗の中で出した最大の譲歩。宵はその意味を理解した。

「分かりました。なら、環斗くんが死なないように、精一杯、頑張ります」

宵はこれから死に逝くのかもしれないのに、この場の空気に沿ぐわない笑顔だった。

二人の話が付いたところでアリスは適当な所へ行く。そして――

「待ってくれるなんて優しいな? それとも、余裕の(あらわ)れか?」

「ええ、まぁ。君ら程度がいくら頑張っても僕には勝てませんからねぇ」

環斗が刀を構えるのと同時に宵も刀と気持ちを構えた。

「その余裕。今までの分をつけてぶっ潰して差し上げます」

宵に似合わない言葉遣(ことばづか)い。それは様々な感情を乗せている。

今までの屈辱。恐怖。何より、環斗を傷付けた恨みと自分の不甲斐なさ。

どれも怨恨(えんこん)に根差しながら不甲斐なさのお陰で理性を保つ。

「では、環斗。望月さん。ただ今より、終幕といきましょうか!」

時刻は既に、陽が落ちて漆黒に染まる程となっている。

環斗が戦い始めた頃も暗かったが、まだ薄暗い程度である。

宵が身体能力を爆発的に上昇させ、環斗の視界から消えた。

「いいなぁ。俺もヒーローっぽく、あんな能力欲しいよ」

羨望(せんぼう)の声を出して、ルッソの元へ環斗も走る。

数十秒の時間をかけて走り続けると、宵がルッソと相対していた。

「ああ。やっと着きましたか。待ちくたびれちゃいましたよ」

環斗がルッソの視界に入るなり、開口一番に言った。

「環斗くん、行きましょう。終わらせるんです。長い戦いを。苦しみを」

詩人のように宵はスラスラと言葉を(つむ)ぎ出す。

「ああ。宵、行くぞ」

無駄に飾り立てられた言葉は二人に必要ない。

それ程の時間を環斗は過ごした。宵を信じ切るための時間を。

宵が牽制(けんせい)に駆け出し、環斗が後方から別方向でルッソに接敵を計る。

本来なら、環斗が宵の盾になって戦った方が効率が良いが、従来の戦いで勝てる程、ルッソは甘い敵ではない。

宵が接敵する前にルッソはただの衝撃波を発動。宵はそれに直撃し、少々の衝撃と大量の距離を離すこととなる。が、代わって環斗がルッソに近付く。

ルッソが魔法を連発できないのはこの前から露呈(ろてい)していたことだ。

ルッソはバックステップで後方に下がる。が、吸い込まれるように環斗の突きが迫る。ルッソは一瞬の時間を使って先程と同じく衝撃波を放ち、環斗は吹き飛ぶ。

だが、それと刻を同じくして今度は宵が前へ出る。

二人の無言の作戦会議の結果、ルッソに魔法を使わせる暇もなく、攻め続けることを二人は採用したのだ。どんな魔法使いとて、魔法を使えねば恐るるに足りないからだ。

環斗は空中で無理矢理、体勢を立て直し、着地。走る。

その作戦は功を奏し、何度も何度も何度も続けることでルッソの魔力は確実に減る。

だが(つい)に、ルッソは今までより圧倒的に風力の強い衝撃波を放った。

結果、前に出ていた宵が吹き飛ばされ、環斗へ迫る。環斗は避けずに宵を()(かか)えると宵ごと吹き飛ばされ、木の根本に足をかけて急制動(きゅうせいどう)をかけた。

「あっ……か、環斗くん、あ、ありがとうございます」

だが、宵の礼を環斗は無視して彼女を接地させると、環斗は駆けた。

ルッソを見れば、その隙に風をかき集めて魔法を顕現(けんげん)させようとしている。

「中々どうして。悪くない策でしたよ。僕には届きませんでした、が!」

ルッソは風塊(ふうかい)を環斗たちへ向けると円錐型の風塊が二人を喰らおうとする。

宵に退避勧告を出す暇はない。(ゆえ)に彼女の直感に環斗は賭けた。

環斗が急いで飛び退くのと同時に宵も環斗と同じ方向に飛ぶ。

宵の判断は正しく、宵のいた部分の地面は風に(えぐ)られる。

「ほう? まさか、二人揃(そろ)って()けられるとは思いませんでした。とりあえず褒めてあげましょう。ですが、この攻撃はどうでしょう――!」

ルッソへは環斗の方が近いが、宵の方が早くルッソに加害できる。

それを分かっていた宵は環斗を盾にしてルッソの視界から一瞬外れ、駆ける。

ルッソはそれを知らず、風塊を潰す――前に宵の凶刃(きょうじん)が振り下ろされる。ルッソは気付いていなかったのか、反応が遅れ、呆気(あっけ)なく、嘘のように腕が両断される。

瞬間、行き場のなくなった風は爆発し、ルッソごと、宵に浅い傷を与える。

神経、骨、肉、血管、皮膚が断たれた先の失くなった腕。

それを見て、ルッソは(たま)らず悲痛な、怒ったような悲鳴を上げる。

それは皮肉にも忘れもしない、できない。環斗が最初、ルッソに殺された直前に聞いた人々の悲鳴、怒号、叫怒(きょうど)、その他、様々な声に酷似(こくじ)していた。

――因果応報。

未だ起こしていないルッソの罪を見てきた環斗。

この場合、その言葉は当て()まるのか?

そんな、場違いな、少なくとも今は考えるべきこともないことを環斗は思った。

滝のようにルッソの腕の断面から流れる葡萄酒(ぶどうしゅ)のような血液。

どんなに存在を圧倒され、恐ろしく強く、届かないと思った存在もこうなれば哀れだ。

その時、天啓(てんけい)にも似た、直感の、捨てたハズの環斗の生存本能が回避を告げた。

宵は立ち上がらない。宵を(かば)う時間はない。宵を見捨てる気もない。

だから、環斗は宵の前に踊り出て、ルッソへと直進する。

丁度、環斗の存在にて宵が隠された形となる。

次の瞬間、直感がした時から(ほお)()でる雪と微風の勢いが徐々(じょじょ)に強くなる。

環斗は意味がないと理性では理解していた。

だが本能は、生きたいと願ってしまった本能は意味のない悪あがきをさせた。

迫るは強風。

大地を喰らい、(えぐ)息吹(いぶき)

雪の欠片(かけら)を引き裂く鎌鼬(かまいたち)

環斗はそれを、質量があるわけはないのに、無意味だというのに、刀で受けた。

当然、鎌鼬は刀による障害などないように()り抜ける。環斗の左足のつま先から鎖骨と肩の骨の境界にかけてまで、縦一閃の亀裂(きれつ)が走る。

「環斗くん!」

宵が心配する声を出す。だが幸運にも鎌鼬は浅く傷を残す程度でそれ以上はなかった。

「ク……クカッ! カカカカ! クヒッ! アハハハハハハハハ」

ルッソは狂ったように(わら)う。最早(もはや)、悲鳴は聞こえない。

「おォ! オォッ! 何たることでしょう! 痛い! これは痛い! 痛みとはかくも痛いものだったのですね! ヒャッ! (サイ)(コー)じゃないですか!」

浅いとはいえ、環斗の傷は軽視して良いものではない。

その証拠に環斗の傷からはカルシウムが(のぞ)かせ、それは(あか)く染まっている。

環斗は刀を杖代わりにしてなんとか立ち続ける。左側に力をかけないようにして。

「ンフフ。アァ。僕も魔力が心許(こころもと)ない。魔法の操作もやりにくい」

ネガティブなことを言うが、その口調はまるで遠足前の子供のようだ。

立ち上がった宵は環斗の下へ行き、倒れかかる環斗を支える。

「放せ、宵。このままだとお前、俺ごと殺されるかも――」

「黙ってて下さい! 環斗くんが死にたいなら私は環斗くんを死なせません!」

その言葉を聞いて環斗は嬉しくて嬉しくて、つい泣きそうになる。

「おォ! 美しき(かな)! 愛! 友情! しかし、そんなものは張りぼての偶像に過ぎません。僕はそれを体験した! だから知る!」

(しゃべ)ることにより、時間の消費により、不利になるのはルッソの方だ。

何せ、環斗も少しはあるが、失血量はルッソの方が多い。

そして、更にルッソは脳の言語中枢(げんごちゅうすう)が狂ってるかのように話す。いや。もう既に狂っているのだろう。

「お二人! 僕はもう死にましょう! ですが、ご安心召()されよ! 僕一人では()きません! アリス! ご笑覧(しょうらん)あれ! これが、狂人の最期(さいご)です!」

ルッソが風を集める。

かき集める。

この世の風が消えてしまうのではないか、と錯覚する程、集める。

「――宵。ありがとう。もういいから、放してくれ」

一瞬、宵は環斗の言葉を理解できなかった。したくなかった。

「だ、ダメですよ! 私は環斗くんを死なせたくは――」

「違う!」

環斗の一喝。それに宵は驚き、絶句する。

そして、今の一喝からは想像も出来ない程の優しい声で環斗は言う。

「ここまで来て死ぬ気はないよ。でも、最期は俺がケリを付けたいんだ。一人で」

ルッソの過去を知ってもなお、戦おうと、殺そうとするのは環斗。

一番、ルッソと長い時間を過ごしたのはアリス。

一番最初に、ルッソとの因縁を持ったのは宵。

そして、そのアリスに殺すことを()われたのは環斗。

宵と話し、決着を付けるように宵が言ったのは環斗。

だから、環斗は殺さなければならない。

――ルッソを。

宵は環斗の心中を探ろうと、目を鋭く細める。

環斗は宵に二人の因縁を教えていない。

それでも宵は、二人の内に何かを感じ、呆気(あっけ)にとられた。だから――

「環斗くん、行ってらっしゃい」

宵は少し困ったような笑顔で、表情を和らげ、放し、送り出した。

本当なら、暴力に訴えかけてでも止める気だった。

だが、譲れないものがある。その気持ちは分かったから。

本来なら、魔法使いの誅殺(ちゅうさつ)は望月の責務。だから、誰にも譲る気はなかった。

それが宵が当初、環斗にルッソの殺害を拒んだ理由だ。

だがそれよりも大事な、重大なことがあると、宵は分かった。

「ク……カカカカッ! サァ、どっちが先に死ぬか、決まりましたかァ?」

狂人は狂い、(わら)い、()え、問う。

環斗たちの目の前にいるのは最早、ルッソ・ヴェラルーンの皮を被った狂人だ。

「ああ。俺が――終わらせてやる。何もかも」

後のことを、環斗は気にしない。

だから、中々に浅からぬ怪我をした環斗は痛みを、出血を無視する。

「ン、ククク。まだ、望月さんの方が良いのではないですか?」

「俺じゃあ、相手にもならないのか?」

自嘲気味(じちょうぎみ)に笑みを浮かべると、ルッソが嗤いながら首を横に振る。

「いえいえ。それも一興かと思いますよ?」

そんな世間話をするかのように話している間に、ルッソは風を集める。

対する環斗はただ、肺に冷え切った空気を流し込み、吐き出すだけ。

達人の勝負は一瞬で決まる。

もちろん、実力の拮抗(きっこう)等と様々な条件がある。

この場合、本来なら環斗はルッソに遠く及ばないのだ。

だが、環斗のルッソと戦い続けた経験、宵に鍛えてもらった経験の二つが環斗の実力をルッソと拮抗させるまでに底上げしていた。

「環斗、せっかくですし、古風に名乗り上げでもしてみますか?」

「ああ、いいな。普段なら恥ずかしいだろうけど、俺らは死の瀬戸際(せとぎわ)だしな」

ルッソの提案を環斗があっさり承認すると、ルッソが言う。

「僕はルッソ。ルッソ・ヴェラルーン。風を操る者にして、人を殺し尽くす者」

「遠からん者は音にも聞け! 近くばよって目にも見よ! 俺は、望月の術理(じゅつり)を継承せし者! 十六夜(いざよい)環斗!」

二人の言葉が終わると、一瞬のような永遠が流れた。

だが所詮、その永遠はただの一瞬の間でしかない。一瞬が過ぎると

「「行くぞ!」」

ルッソと環斗が同時に吠える。

環斗は刀を水平にし、駆ける。

ルッソは風をかき集めることを止め、食い入るように環斗を見る。

ルッソは環斗が迫るのを見つめつつ、右手の異常な密度の風塊を環斗へ向ける。

環斗とルッソの距離が数メートルとなった瞬間、ルッソは風を解放した。

発せられた風は、やはり円錐(えんすい)型になる。

全てを()み込まんとする風は大地を呑み、闇色に染まった空を呑み、降り注ぐ雪を呑み、今度は環斗を呑み込もうと迫り来る。

環斗は歯を食いしばり、それを真正面から刀で受ける。

本来なら、実体も質量も持たない風は受けれない。だが、ルッソが異常に圧縮した風は最早、一つの物体として機能していた。だから受けれる。

風は異常な圧力と風量(ふうりょう)奔流(ほんりゅう)(もっ)て、環斗を押し出す。押し潰す。

環斗が風に接触する直前、環斗は歩みを止め、両足を地面に根を張る。

風が環斗と接触した瞬間、環斗は袈裟切りに風を受け止める。すると、風を受けた環斗の両足は地面に食い込み、浅く地面を抉る。だが、そこで全力で体を止める。地面が砕けるのではないかと思う程の圧力が環斗にかかる。

「――ッ! グ――! グギギ! ックグゥ」

それでも押し止まる。環斗の筋力なら到底、敵わないことだ。

だが、環斗は望月で習った術理がある。だから、押し止まれる。

筋肉が破裂しそうになる。刀が折れると思ってしまう。体が吹き飛んでしまうと錯覚する。風に自身が抉られそうになる。

――でも! 幻想なら、まだ起こってないなら、まだやれる!

環斗は自身の体にそう言い聞かせながら耐える。

何度も(いまし)め、何度も封じ直した欲求が環斗の中で叫ぶ。

環斗を呑まんとする風は死を、恐怖を、感情を、運ぶ。

環斗の中の本能が警鐘を鳴らす。足の感覚が消える。恐怖に身が(すく)みそうになる。死に、恐ろしくて逃げ出しそうになる。状況は死を運ぶ。

流される。奔流に。風に。状況に。恐怖に。本能に。感情に。死に。

それでも、環斗は何度も自分に言い聞かせたことを言う。

捨てろ。全てを。希望を。ただ、俺は勝つべくして勝てばいいんだ!

だが、今度ばかりは今まで通りにはいかない。死の圧倒の仕方が違う。恐怖の絶対量が違う。何もかもが違う。

「う――うォオオオオオオおおおおおお!」

だから、叫ぶ。自らを奮い立たせるために。恐怖を消し飛ばすために。紛らわすために。

紛らわしたことにより、一瞬は失くしていた足の感覚を取り戻す。

もっと! もっとだ! もっと、力強く! 地面が、俺自身がぶっ壊れるぐらい、力強く地面を踏むんだ!

環斗の体中の傷口から大量の血が吹き出し、(したた)る。

風が恐怖したように、先程より旗色が変わったかのように環斗は感じる。

心なしか、ルッソの表情を見ると焦燥(しょうそう)(きん)じえない。

今度は、非力な環斗にルッソが()される番である。

「――ッ! ウ、ァアアアアアアアアアアアア!」

環斗は、風の勢いが増加したように感じられた。

すると、金属が(きし)むような音がすると同時に、刀に亀裂が走る。

「――ギ、ぐグがガッ! ぐゥ、アアアアアアアアア!」

環斗が吠えた瞬間、望月の刀の刃先の上半分が折れた。

だが、同時に風の猛勢が崩れ、消える。

環斗は体勢を崩し、折れた刀を大きく空振(からふ)るが、体勢が崩れた中でも無理に前進する。

――駆ける。

そして、ルッソと環斗の顔面が数センチと肉薄する。

環斗はルッソの狂気の瞳、表情を見、ルッソは環斗の固い意思の込もった目を見る。

「ルッソォォォオオオオオオ!」

「環斗ォォォオオオオオオオ!」

二人が吠える。獣のように。仇敵の顔を互いに突き合わせて。

振るう。環斗の折れた刀を。

「死ねェぇえええええええええ!」

「甘い!」

だが懐に潜り込まれたルッソも、至近距離で最後の魔力で鎌鼬を放つ。

血液が噴水のように噴き上がる。風が暴れる。指が宙を舞う。

そして、二人は永遠に制止する。そう、宵とアリスには感じられた。

環斗の視界が揺れる。グラつく。暗転(あんてん)しそうになる。

「――ク、カカカ……見事。見事です。十六夜(いざよい)環斗。永遠に、忘れませんよ」

「俺も、忘れねぇよ。ルッソ・ヴェラルーン。てめぇの名前だけは、絶対に」

二人が、同時に揺れ、(うつぶ)せに、地面に崩れた。

「環斗くん!」

「お父さん! 環斗!」

環斗を案じている、二つの声。

ルッソに語りかける一つの声。

宵は環斗へと駆け付け、俯せの環斗を起こす。

だが、それに気付く余裕のない環斗は笑いながら呟く。

「は、はは。見ろよ皆。雪だ。綺麗な、雪だぜ」

環斗の言葉はまるで遺言(ゆいごん)のように、これから死に逝く者のようだと宵は感じる。

「かんと……くん……死んじゃ……いや……です……! しっかり……して下さい!」

宵のむせび泣く声が環斗の耳に入るが、脳は受け付けない。

一方、アリスは倒れたルッソを立ちながら見ていた。

「……お父さん。あなたは満足できたの?」

その問いに、喉笛(のどぶえ)を斬られ、そこから大量の血液を垂れ流しているルッソは声帯をやられたのか、喋らない。ただその表情は、とても満足げだ。

今まにも泣き出しそうな弱々しい笑みを浮かべながら、体を(ひるがえ)す勢いで、溢れ出始めた涙をアリスは吹き飛ばそうと試みる。が、涙は一向に消えない。

「――ッ! さようなら、お父さん……」

辛うじて、アリスはその言葉を吐き出して環斗の下に向かう。

不意にその時、()でるような微風が吹き、アリスの体を包み、風はアリスの涙を(さら)った。

「ありがとう、お父さん」

その風がルッソの辛うじて残っていた意識から出されたものか、自然なものかは、アリスには分からない。ただ、その風は優しい風だと、アリスは感じた。

表情を切り替え、アリスは傷付いた環斗の下へ向かい、環斗を診る。

環斗の傷は体の所々に切創(せっそう)、打撲、内出血が目立つ。中でも、左肩から足にかけての切創は凄まじい。加えて、最後に受けたであろう右脇腹の切創も浅くはない。

アリスは緊急時の為にいつも持ち歩いている救急箱を取り出す。

傷が酷いこの状況。幸運だったのはアリスに治療の経験があることだ。

「――大丈夫。宵と環斗が頑張った。私も、環斗を助けてみせる」

強い意思が宿ったアリスの瞳。宵は、これを信じつつ、救急車を呼んだ。







エピローグ

薬品と殺菌と清潔の臭いが入り混じる病室。

目を覚ました環斗の視界に飛び込んだのは白い天井と円柱型の白い電灯。人の顔。

それは眠っている宵とアリスの顔であった。

環斗は一瞬、そこがどこか認識できなかったが、海馬(かいば)が記憶を引っ張り出した。

ここは間違いなく病院の、科は分からないが病室の一つだ。

……俺は、生き残れた、のか? 俺は、勝った、のか?

最後の記憶を環斗は自身の脳内から引っ張り出す。記憶は、あった。

――間違いない。俺は勝ったかは知らないけど、生きた。

環斗が上体を起こそうとする。と、鋭い痛みが体中を走り、環斗は顔を歪ませ、結局、上体を起こすことを拒否される。

痛いのは、生きている証。表情を変えられるのも生きている証。

不意に環斗は、両目から溢れる感情の奔流(ほんりゅう)に崩れそうになる。

今までルッソに勝たなければならない重圧に、気付けば解放されたからだ。

だが環斗はルッソを殺し、明日を向かえることを素直に喜べない。

――アリス。ごめん。俺、やっぱりルッソを止められなかった。

確かに明日を向かえられるだろう。だが、そのためにアリスは親を失ってしまった。それが例え、人殺しであろうと親に変わりはない。アリスの大切な親に。

ルッソ。あんたは幸せだな。こんなにアリスに大切にされているなんてさ。

良い終わりで締め(くく)ろうという気は、環斗はサラサラない。

それでも、愛されるルッソが純粋に環斗は羨ましかったのだ。

とにかく、環斗は目から(こぼ)れるであろう涙を必至で止めようと努める。今は悲しむべき時であるが、それよりも喜ぶべきであるからだ。

「はぁ……んだよ。俺、最後まで弱いまんまかよ」

愚痴(ぐち)のように口から言葉を吐き出す。すると、急に二人が目を覚ました。

「ん……ぅ……おひゃようごじゃいまひゅ。ありふさぁあああんっ!」

宵が急に発した悲鳴にも似た叫びに、アリスは驚いて跳ね上がってしまう。

「えっ? よ、よよよ宵? な、ななな何があったのっ? って、あ――」

アリスも動揺したのか驚いたが、最終的に二人の視線の先が重なる。

(すなわ)ち、二人は環斗を見て、驚いたのだ。

「……ん? どうした? 何で固まるんだ?」

固まる二人を見て、その理由が分からない環斗が言う。

「か――環斗くん! 大丈夫ですかっ? 生きてますかっ? どこか痛い所はっ?」

慌てた様子で(しゃべ)る宵に環斗は首を横に振る。すると、宵はホッと一息。

「だから言った。傷と出血は派手だけど死なないって」

アリスが宵を横目で見る。それに対し、宵は少し頬を膨らまる。

「し、しょうがないじゃないですか。私はアリスさんみたいに肝が()わってませんし」

そんな光景を見ていると、不意に環斗は吹き出してしまう。

「むぅ。環斗くん。何で笑ってるんですか」

不満げに言葉を漏らす宵に、環斗はまだ笑いながら答える。

「いや。悪い悪い。何かさ。これでやっと、終わったって思うと急に、さ」

その時、環斗は視界に朝七時前を刻んでいる時計が入る。

それは丁度、冬の日の出の時刻で病室の窓から朝日がその身を覗かせていた。

――長かった。本当に長かった。この、たったこれだけの朝日を見るために俺は戦い続けた。

環斗は、本当は死ぬ度に痛くて苦しくて辛くて、何度も諦めたくなった。

だが、その気持ちを押し殺して戦い続けた。

その終局の果てが現在(イマ)

人を殺した。環斗の、記憶に刻まれた何があっても、戻らない過去。

これだけの朝日を見るために戦い、傷つき続けても欲しかった、未来。

「ほら、アリス。宵。見ろよ。明日だ」

首を窓へ向けて、朝日を視界に(とら)えながら環斗は言った。

二人も環斗の視線の先にある太陽をその目にした。



人類を滅ぼす気であったが、それでも実行されなかった上に、そんな事実を預かり知らぬ警察は翌日、環斗に事情聴取をしに環斗の病室に現れた。

とは言っても、あのような人災(じんさい)の真実を知る者は警察にいるハズもない。

何せ、ルッソが殺された現場はいきなり山頂が削られ、クレーターになり、竜巻が起き、木々を()ぎ倒した。しかも、木々は鎌鼬(かまいたち)によって何本も切られたのだ。

警察もこれは天災(てんさい)と認定し、ルッソは憐れで不幸な事故死と判じられた。

つまり環斗は実質、無罪かつ、憐れな被害者の一人となった。

こうして、環斗は晴れて無罪の人殺しとなった。

入院してから三日経ったある日、環斗の病室にはいつも通り、駿太郎、雪子、宵、アリスの四人と病室の一員である環斗の合計五人がいた。

幸運にも、四人部屋である病室には環斗以外の入院患者はおらず、実質、環斗の個室となっていた。

そんな病室に、環斗のよく知る人物、二人が入ってきた。

「よぉ、環斗。お前の親愛なるお父様が見舞いに来てやったぞぉ」

「ふふふ。やだ、もぅ。死にたいんだったらそう言ってよぉ」

自信過剰な登場をした父親に母親がやんわりと殺意を見せる。

それにたじろぐ父親を見て、環斗は一言。

「あぁ。誰かと思えば全然、役に立たなかった父さんか」

「なっ! や、ややや役には立ったわい! ……多分」

 そして環斗たちは話し、そして面会時間の終わりがきた。

 皆はそれに気付くと部屋から出る。その時、環斗は皆に告げた。

「また、明日」


どうもこんなクソ長い文を読んで下さり、ありがとうございました。えぇ。えぇ、仰る通り。届かぬ願いとか、作者の約束じゃねぇか! という皆さんのご指摘、至極もっとも。ですから、本当に申し訳ありません。もし、よろしければ他の作品も作りますので、また読んでいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ