01 私、モテるんです。
生まれ落ちたその日から私はモテた。とにかく、モテた。老若男女問わずだ。
とは言っても乳幼児期の記憶は定かではないので、家族から聞いた話。
家族から事あるごとに話を聞いてはいたけれど、小学生へ上がる頃にはさすがに自覚した。
私はモテるのだと。
何かそういうフェロモンが出ているのではなかろうか、なんて疑問を通り越して確実に出ているとしかいいようがない。
目の合う距離まで近づくと、相手は必ずストーカーと化す。
自覚が足りなかった頃はマジで怖かった。
自分より小さければまだ平気だったが、小学一年生になりたての女子が成犬の雌セントバーナードにのし掛かられペロペロではなく、ベロンベロンされる恐怖を想像できるだろうか。
口臭は言わずもがな、セントバーナードに滴るほど涎を塗りたくられ、泣きながら粗相したのは良い思い出である。
私のファーストキスは同性の異種族に奪われ、後にも先にも彼女以上に熱烈なキスをしてくれる同族の異性はいない。
そう、私はモテる。
人間以外に、という注釈つきで。
小学生時代はとにかく動物が恐ろしかった。
起床し窓を開ければ雀から鳩から烏と近場に住む野鳥がやってくる。
白雪姫のようにアハハウフフならまだ可愛い。勢いよく飛来してくる恐ろしさは某パニック映画を凌ぐものがあった。
たまたま野良猫生息地帯を通れば、どこの笛吹きですかというくらい野良猫を従えて泣きながら帰宅をし、大型犬を飼う家の前を通れば恐るべき跳躍力によって塀を飛び越えてのし掛かられ、遠足で動物園へ行けば私はスターさながらに檻の中から熱視線を向けられるのである。
中学、高校と歳を経て、さすがに自分の異常性を認めた私は動物達と上手く付き合うために色々と実験を重ねた。
結果、視線が重なる距離、もしくは視線が重なることによって彼らは私のストーカーと化すことが分かった。
目がばっちりと合う距離で、互いに認識しあうと彼らは種別問わず某CMのキャッチコピーのようにまっしぐらでやってくる。
視線の合う距離でもついては来るのだが、視線が合わないと彼らは諦めて後をついてこない事を学んだ。
この発見は私にとってかなり大きく、高校以降の被害は格段に減ったのである。
また、犬猫でしか分からないのだが、生まれたてで視力が乏しいと私が認識できないようなのでストーカーと化すことはなかった。
おそらく、鳥類も同様と思われる。
ちなみに、この訳の分からないフェロモンは残念ながら人間には効かないようである。
実績は二十四年を向かえ未だ更新中である。非常に残念だ。
他、昆虫類にも効かない。
全ての動物と接触を果たした訳ではないので確かとは言い難いが、恐らく人間以外のほ乳類、鳥類、両生類、魚類に効果があると思われる。
そして――――。
そして、恐竜の類にも効果があるようだ。
ただいまワタクシ、立科薫は声よ枯れろとばかりに悲鳴を上げて高い空より地上へ落下しつつ、寄って集ってきたプテラノドンもどきの団体から熱烈にまとわりつかれております。
誰か助けてーっ!!