第2章:捕食者
惑星の紫色の空が徐々に暗くなっていったが、アストラ・ヘリオンでは夜だからといって活動を止めるわけではなかった。ドリアンは、太陽が沈んだときこそその世界の本性が見えることを知っていた。今回も例外ではなかった。オメガは彼の後ろに浮かび、戦術マップを視界に投影していた。
—「オメガ、周囲の報告」—ドリアンは右手のグローブを調整しながら命じた。
—「生物活動増加。熱変動不規則。高所からの移動信号。推奨:北東の岩場に移動。」
光が失われ始めると、惑星の地形はさらに奇妙に見えた。木の樹皮は赤く微かに光り、中から血のように見える。空気は鉄のような匂いで重く、地面からは蒸気が立ち上るかのようだった。
ドリアンは躊躇せず前進した。感覚は研ぎ澄まされ、アストラ・ヘリオンでの訓練が彼に教えていた。「戦士は環境に支配されず、環境を適応し制する。」
オメガが検知していた峡谷に近づくと、新たな構造が見えた。巨大な有機物の殻が岩壁に埋め込まれているようで、近づくとその亀裂が微かに震えた。
—「内部活動。未分類種。動きは遅い…」—オメガは解析を開始したが、途中で止まった。
裂け目からガサガサと音を立てて生物が現れ、殻を粉々に破壊して出てきた。これまでの敵とは異なり、四本の脚、背中に光る棘、液体のような多層の顎を持っていた。
生物は咆哮し、その音は金属をガラスに擦り付けたように響いた。ドリアンは感覚フィールドを起動し、神経に微弱電流を送り動きを増幅させた。
—「敵性確認」—オメガが告げる—「一時分類:プレデター」
プレデターは驚異的な速度で突進してきた。ドリアンは横に素早く避け、攻撃が一瞬前に自分がいた岩に当たるようにした。壁は粉々に砕け、峡谷全体が揺れた。
ドリアンは足で地面を蹴り、跳躍して高い岩に登った。モンスターは凶暴に追いかけ、爪を刃物のように打ち込んだ。ドリアンは背中の円筒状の剣に手を伸ばし、作動させた。
カチッという音とともに、青白い光を放つ剣が伸びた。
—「戦闘モード:白兵戦。エネルギー安定。」—オメガが告げた。
プレデターは再び跳躍した。ドリアンは前腕で顎を受け止め、腕に伝わる衝撃を金属の棒に打たれるように感じた。もう片方の肘で攻撃してきた前脚を払い、脇腹に触れるか触れないかでかわし、一歩下がって背後からの攻撃を回避した。すべてが瞬時に行われた。
—(強い…体が衝撃を吸収している)—ドリアンは次の一撃に全身のエネルギーを集中させた。
リズムを崩さず、体を回転させ、モンスターの下に滑り込み、斜めに剣を振り下ろす。腹部から首までを切り裂き、プレデターは倒れた。黒い血は空気に触れると蒸発し、化学的な臭いが漂った。
オメガがスキャンを近づけた。
—「プレデター排除。内部構造不明。生物学的データ抽出推奨。」
ドリアンは外骨格の一部を切り取り、保持した。これまでにも様々な惑星で未知の生物を採取していたが、ここまで攻撃的で適応力のある生物は初めてだった。
峡谷の奥に進むと、巨大な石の柱が立つ広い空間に出た。中央には予想外の光景があった。
巨大なクレーター、その底には破壊された金属物体。
オメガが上空から光を当てる。
—「素材:ヘリオンナノ合金…古代。劣化推定:数世紀。結論:ヘリオン船の残骸。」
ドリアンはクレーターへと降下した。目を見開き、驚きと敬意を抱く。
—「どうして…ヘリオン船がここに?」—歯を食いしばりつぶやいた。
アストラ・ヘリオンは無作為にミッションを送らない。もし船がここにあったなら、それには理由がある。オメガが横に浮かび、リアルタイムでデータを投影した。
—「推定識別:ユニットSigma-12。『行方不明』として記録され、147ヘリオン周期経過。」
147周期…人間換算で百年以上。
ドリアンは船内に入った。そこには戦闘の痕跡が残り、金属には酸や穴、生命体の層が付着していた。
破損した音声記録が再生される。
«—ここはSigma-12…攻撃…生物…未—[ノイズ]—コア故障—[スタティック]—触るな—»
ファイルは破損し終了した。
ドリアンは歯を食いしばった。自分以外のヘリオンがこの危険な惑星に足を踏み入れていたことを理解した。自分は最初ではない。
オメガが光を落とす。
—「推奨:即時撤退。クレーター接近中の生体信号あり。複数プレデター。」
ドリアンは構えた。今回は一匹や二匹ではない。クレーターの壁を這うように信号が降りてくる。
—「剣モード全開。ヘリオンパルス準備。」
剣が共鳴し、コアの音色が変化する。ドリアンは深呼吸し、姿勢を整え、最初のプレデターが跳ぶのを待った。
そして来た瞬間、完璧な一撃で迎えた。
水平なスラッシュ、稲妻のように速く、クレーターを青い光で照らした。
闇から体が次々と落ち始める。
真の夜が今、始まったのだ。




