Prologue
――「お前、バッドエンドが好きなの?」
――「なんかお前、ちょっと人とずれてるよな」
――「キモイ、今すぐどっか行って」
そうやって、何度も何度も。
数えきれないくらいに、僕は軽蔑されてきた。
何がおかしいんだろう?と、そのたびに考えたけど...特に、これといった結論がでることはなかった。
逆に、なんでみんなはハッピーエンドを求めるんだろう?って。
そんな疑問さえ抱きながら――世間的には異常らしい、僕のこの性格を隠しながら生きてきた。
最近の時代、〝多様性〟という言葉に重きを置いているような風潮が出ているけれど。
僕のこの性格が認められないように、世界にこの言葉は普及していないと思う。
たしかに、僕が人とは違う考えはしているのかもしれない。
だけど、それでも認めてくれるのことはないのかなって。
そんな、淡い希望は抱きながら生きてきた。
―――けれど、その希望が満たされることはなく。
僕らは、あっけなく事故によって死亡した。
――――だけどまぁ、僕らはこうやって生きているわけなんだけど。
「あら?あなただけかしら。早くスキルを選ばないと、あなただけ死んじゃうわよ?」
「どうせなら――もう死んだっていいかなって」
どこか神聖な雰囲気をまとった女性が声をかけてくる。
見た目だけなら、まるで伝承に出てくるような女神のような風貌をしているけれど。
その中身はたぶん、僕よりもどす黒い性格をしている。
女性に対して、久しく抱かなかった親近感さえ抱いているのだから。
「あら?それはまた...どうして?」
「あなたの説明通りなら―――僕たち、異世界で勇者になるんでしょ?」
女性が言うには、僕らは修学旅行へ向かっている最中に事故で死んだんだとか。
それを見かねたこの女性――女神が僕らを異世界で勇者として転生させてあげるとか言っていたけど――――正直、勇者になるくらいなら死んだほうがましだと思う。
人のために戦え――どうして?
魔王を打ち倒せ――めんどくさい。
その二言を即答できるような人物に、勇者なんて似合わないかなって。
希望を言うなら、もっとこう...魔王とか。
魔王も勇者も邪魔な第三勢力とか。
その方が面白そうだもの。
そもそも、僕がこんな考えになったのは人のせいなのにどうして僕が人のために戦わないといけないの?って。
「めんどくさいし、気に入らない。だから死んだほうがましかなって」
完全なる個人の都合で女神様の御慈悲を無下にした。
キリスト教とか、宗教信者が聞いたらまるで僕を血眼で探して殺しに来るだろう所業。
それを、平然とやってのけたからなのか――
「――あなた、おもしろいわね」
どうやら僕は、女神さまの目にとまってしまったらしい。
「――あなた、神にならない?」
「え、いやだけど」
基本僕は、誰かに目を付けられることがないように滅多に悪い意味の即答なんてしたりしない。
だというのに、あまりにも面倒ごとのにおいがするからこそ口からこぼれてしまったこの返答。
なぜか、それがお気に召してしまったかのように女神さまは笑う。
「そんなこといわず、聞いてみるだけの価値はあると思うわよ?」
寒気は...特にしない。
けれど、めんどくさそうだなぁということは感じる。
神って、あれでしょ?世界を創ったり、管理したり。
とくに宗教を信仰したりしてるわけじゃないからよく知らないけど、そんなめんどくさそうなことをやらなきゃいけないんでしょ?
そんなの、いやだったらありゃしない。
管理するのは面倒だし、娯楽とかも少なそう。
日本じゃラノベとか漫画とかを見てストレス発散ができたけど、そんなこともできなさそうだし。
「――あら?あなた、ラノベが好きなの?なら――第三勢力ムーブとかしてみる?」
聞こえてきたその言葉に、僕は顔を上げた。
「その話、詳しく聞かせてもらえるかな」
清水 彼方、16歳。
自分の性癖ド直球な神のお願いを聞き――神々の遊戯〝勇魔大戦〟の調整役をすることになった。
あとがき――――
某作家さんのプロローグに似せてみた。
パクリといわれたら認めます。許してください。




