第13話 最高だな、異世界!!
総隊長室のある建物から、さっきの広場に出る。
さっきはさっさと移動しちゃったから気付かなかったが、巨大噴水が中央にあり、薄着の女性たちが濡れるのを考えずに遊んでいる。
どうやらここは、非番の女騎士たちがくつろぐ憩いの場になっているみたいだ。
俺に気付いた女性が、キャーキャー言いながら手を振ってくる。うーん、芸能人になった気分。
それとなく手を振り返しつつ、ミューレンさんから離れないようにする。
「にしても、ここって……随分と山奥というか、崖近くに本部があるんですね」
よく見ると、俺たちが入ってきたであろう門以外、険しい崖に囲まれている。広大な土地だから、日差しが遮られることはないけど、かなり特殊な構造だ。
「よく気付きましたね。ここは総隊長の母君が、巨人族の隠れ里として千年程前に切り開いた場所です。今は総隊長が受け継ぎ、私たちもこの場所にいさせて貰っています」
「なるほど……この構造は、敵襲に備えてですか?」
「そう言われています」
どこの世界に、巨人族の集落を襲う馬鹿がいるのかと聞きたいけど、異世界にはそう言った野蛮な種族もいるってことだろうな。
「イブキ様。中央にある噴水から見て一番奥にあるのが、先程総隊長と会った総本部兼総隊長の個宅です。基本開いているので、いつでも入って大丈夫ですが、総隊長の睡眠を邪魔した瞬間に首が消し飛ぶので、おすすめはしません。鍛錬場や温泉は、横の道を通ってください。皆、あそこかは出入りしています」
「ヒェッ」
マジ、気をつけよう。せっかくのハーレム異世界で死にたくない。
総本部を前にして、次は左側。純白で美しい建物だが、マンションみたいに一定の間隔で窓ガラスがある。
「あっちが、一般隊員たちの寮です。夜行性の騎士は4階と5階。1階から3階は、日中行動する種族が住んでいます」
「あぁ、だから分厚いカーテンで日光を遮っているんですね」
「その通りです」
そろそろ日も落ちてくる頃だ。そろそろ、夜行性の亜人たちも行動を始めるんだろうな。俺は寝る方だから、絡みはないと思うけど。
「そして総本部を見て右側。こちらが、各隊長の個宅になります」
振り返ると、等間隔で六つの建物が並んでいた。
それぞれ個性的というか、特徴的というか……かなり大胆にアレンジされている。あの小さい家が、四番隊隊長ラーフさんの家で間違いないだろう。妖精族仕様になっているみたいだ。
「さすが隊長にもなると、家も大きいですね」
「いつか自分も総隊長に。そう思わせる為に、豪勢な作りにしています。完全プライベートルームなので、皆の憧れなんですよ」
確かに、反対側の寮はかなり質素だ。多分部屋もワンルームだろう。そう考えると、二階建ての個宅というのはかなり憧れる部分が大きいのかもしれない。
「後は、寮の中には食堂や購買があります。週に一度キャラバンがやって来て、食材やら日用品を仕入れているんです」
「隊長たちも、三食そこで食べるんですか?」
「ええ。ただ、総隊長だけは体の関係で入らないので、広場で食べていますが」
あぁ……仕方ないだろうな、あの巨体じゃ。
「大体こんな感じですね。休日や非番の日は、この広場で遊んだり温泉を堪能したりしています。たまに曲芸団体が来てくれます」
あ……そっか。この世界にはゲームも漫画もアニメも無いんだ。
……暇過ぎないか? 現代っ子の俺には、だいぶ厳しい世界だ。
内心、ほんの少し絶望していると、目の端に映ったお姉様方が、半裸で投げキッスしてきた。
……最高だな、異世界!!
「あ、そうだ。イブキ様、寮の横にある通路から先は、行かない方が良いですよ」
「え?」
ミューレンさんが指さす先を見る。確かに通路があり、寮の裏側に行けるようになっているみたいだ。
「危険なものでもあるんですか?」
「我々ヒューマン族には関係ないんですが……亜人族の一部には年に数度、凶暴になる日があるんです。その子たちを隔離する施設があるんです」
「凶暴……」
如何に人間と同じ見た目でも、その点は違うんだな。怒らせないようにしないと……覚えておこう。
「それじゃあ、私の家に行きましょうか。ここでは、イブキ様も落ち着けないでしょう」
「は、はは……ありがとうございます」
正直、助かります。だってずっと誘うような目で見てくるんだもん。
俺、どこでなら気が休まるんだろうか。
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