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挑戦への切符

クロスカントリー走:野外の自然な地形を、スピードを持続させながら走り 続けるトレーニング。レースとしても実施されている。

結果は惨敗であった。

22位中17位。個人順位としても11位。丁度真ん中。最次監督を振り向かせることは諦めた。なぜこんな結果なのか分からない。あんなに練習したのに、あんなに追い込んだのに、ピッチも上げて走ったのに。初めての感情だ。悔しい、憎い、見損なった、そんな感情が入り混じっている。今になって思い返してみれば駅伝レギュラーに選ばれた以来ずっと負けていた。

「良く走り切った。みんなが襷を無事繋げて良かった。」

顧問がそう言う。それだけじゃダメなんだ。勝たないと意味がない。特に今回の駅伝は。

「はい、、、」

不満げに返事をしてしまった。そうしようと思ったわけではなく今感情が不安定なのだ。

「楽しかったな!俺初めてあんなに応援してもらったよ!」

大樹が呑気に喜んでいる。

「良かったね。俺は今悔しいんだ。」

大樹が表情を変えずに

「でも走り切れて良かったじゃん?東谷中学校は三区の子が怪我してゴールできなかったからめっちゃ悔しいと思うぞ。」

確かにそのチームより良かったけれども、狙っていたものが遠のいたのは悔しい。

「あと駅伝の楽しさを教えてくれたからな。こんなに魅力のあるものだとは思わなかったよ!ありがとうな!」

今日の結果のどこでそう思ったのかは分からない。

「なんかテントに弁当あるらしいから食べに行こうぜ!」

そう言って僕の腕を引っ張る。まあ嫌な気にならないな。

「今日は残念だったね。」

聞きたくない声が聞こえる。振り返るとそこには最次監督と部員だろうか若い男性が立っていた。大樹には先にテントに戻ってもらった。

「はい、実力不足です。」

正直に答える。言い訳が一つも思いつかなかった。

「今日の走りはいつもの走りではなかったよ。何かを気にしすぎだ。」

そうだろう。結果を残すことに夢中になってしまっていた。

「自分のだけでなくみんなのために走れと言っただろう?駅伝は個人競技ではないんだ。」

思い返せば、この最次監督を振り向かせるためだけに走っていた。自分のことしか考えていなかった。

「傲慢では絶対に勝てないよ。冷静に判断ができないから。」

確かに今回のミスはペース配分だ。もっと計画的に走れたらマシだったかもしれない。

「すいません。期待に応えられる走りが出来なくて。」

「本当だよ。期待してたのに。これからしっかりしごいてやるから覚悟しときなさい。」

「え?」

最次監督がそう言い放って引き返していく。すると横にいた若い男性が

「あんなこと言っているけど君は成長の余地があるって思ってるんだよ。一緒に走れるの楽しみにしてるよ。」

そう言って最次監督の後を追う。どっちなんだ。勝ち取れたのか?不確実過ぎてモヤモヤする。いったん忘れて弁当食べよう。お腹がすいた。

「隼!遅かったな。誰やあのおばさん。」

白米を頬張りながら大樹が聞いてくる。

「色々あるんよ。」

大変だなと大樹が頷く。自分も弁当を開けて白米を口に運ぼうとするとまたもや食事の邪魔者。

「おいおい、佐藤!」

顧問だ。

「最次監督から正式に推薦されたぞ。どうする呑むか?」

あんな分かり辛い推薦の仕方があるのか?でもこれは人生を変える一歩だ。


「呑みます」


この一言から26.2マイルの挑戦の幕が上がったのだ


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