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心に誓う

ランナー:走種目の競技者のこと。特に、中距離・長距離の競技者を指して使われることが多い。

遂に、地区予選駅伝大会の日がやってきた。区間はアンカー。様々な中学校から選手が勢揃いである。今までは見えてなかったけれど推薦するためか高校の監督らしき人が大勢居る。アップのジョグをしていると号砲が空を裂いた。女子の部が始まったみたいだ。雷管から火薬の香りがする。変かもしれないが僕はこの香りが好きだ。三十人の地面を掻く音が後方から聞こえてくる。

「ファイトー!」「剝がされるなよ!」

応援が聞こえる。駅伝では走っている選手に一番フォーカスが当たり、The主役なのである。走っている選手が勝てばチーム全員の勝利。負ければチーム全員の敗北。個人種目ではない。スポーツ界の中で類を見ない大きなチーム競技なのだ。そのプレッシャーに耐えながらジョグをする。山頂にあるグランドでたくさんの選手がアップをしている。もちろん急遽組んだチームメイトも。

「駅伝のルールってあんまりわかんないんだけどとりあえず走ったら良いんだよね?」

サッカー部の大樹がそう言う。

「うん、襷をしっかり持ってコースを間違えなければいいよ。」

他部からするとそれくらいのモチベーションだろう。なんだって人数が足りなくて埋め合わせで持久走が早かった子たちをスカウトしたのだから。

「でも、わかんねーな。このグランドにいる人たちみんな走ることが好きなんだもんな。俺にはさっぱりわかんない」

確かに陸上競技はただ「走る」だけの単純な競技だから。でもこの当たり前のことを真剣に取り組むから魅力がある。

「まあ、大樹には一生わかんないだろうな」

そういうと大樹が

「なんだよー、寂しいじゃねーか!陸上の魅力ってやつを教えてくれよー」

「気が向いたらね」

えーって言いながら頭を垂れた。

「大樹、今日勝つぞ。」

大樹の顔が一瞬何かに恐れている表情になった。

「お、おう。もちろんだ!」――

いつものようにアップを終え、招集を受ける準備をしていると見覚えのある声が聞こえる。

「今日は頑張ってよね。自分の為だけでなくみんなの為にも。」

最次監督だった。

「ありがとうございます。推薦を勝ち取れるように全力で走ります。」

少し沈黙があった。

「楽しみにしてるー」

そう言いながらスタート地点の方へと歩いて行った。絶対に振り向かせてやると心に誓った。

一二時三十分。キンと冷えた晴天の下に二十二校の選手がスタートラインに並んだ。

――――

号砲がなり一斉に選手が飛び出す。静寂に包まれていたスタート地点が応援で騒がしくなる。


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