第8話 達人?いいえ。ジャンキーでした
スキル:北神一刀流・極、威圧、見切、俊敏、瞬歩、超反応、気配察知、幻刃、逆境、気功、百戦錬磨、血祭、戦闘狂、暴走、家族愛
美結のスキル一覧を眺めながら、記憶に中にある漫画や小説を読み漁り、毎期毎にアニメをチェックしていたオタッキーな我が愛娘は一体どこにいったのだろうと現実逃避をしたくなる。
だが、今後生き延びていくためにも戦力の把握は必須であり、また物騒なスキルについては父親の責任として確認しなければならないだろうと思い、取り敢えず順番に内容を確認していく。
『北神一刀流・極』
北神一刀流を極めており、流派における全ての剣技を扱うことができます。日本刀を扱った攻撃に極大のプラス補正あり。
北神一刀流か。どんな剣術なんだろうなぁ。なんか鉄を斬れるとか美結が言ってたけど、細かく聞くのが怖いわ。
『威圧』
圧倒的強者の殺気で敵を怯ませます。実力差がある程に効果は大きくなります。
『見切』
敵の予備動作から攻撃を予測することで、攻撃を見切ります。回避能力が劇的に向上します。
『俊敏』
効率的な身体の動かし方を理解しており、常人より遥かに素早く動く事が出来ます。
『瞬歩』
圧倒的な瞬発力と敵の虚をつく挙動で一瞬にして距離をつめる高等技能です。
『超反応』
激闘を潜り抜けてきた事によって会得した能力です。危機に陥るほどに反応速度が上昇します。
『気配察知』
戦いの場に身を置き続ける事で研ぎ澄まされた感覚です。広い範囲の気配を察知することが可能ですが、敵意がある者に対しては特に敏感に反応します。
『幻刃』
強烈な殺気と予備動作によって敵に幻の刃を見せる高等技能です。攻撃の命中精度が向上します。
この達人感が溢れるスキル群。激闘を潜り抜けてきた、とか、戦いの場に身を置き続ける、とか、俺の知ってる美結とは変わりすぎてるだろ。何があったのか聞くのが恐ろしいんだが。
『美結さんや。激闘を潜り抜けてきたとか、戦いの場に身を置き続けるとか書いてるんだけど、なんぞあったのかね?』
「戦わないと強くならないから、色んなところで死合いしただけよ。大した事はしてないわ。」
試合の意味が違う気がする!何したんだ、この娘!
『逆境』
何度も生命の危機を経験する事で会得した能力です。危機に陥るほどに戦闘に関する能力が劇的に向上します。
『気功』
何度も生命の危機を経験する事で会得した能力です。体内の生命力を活性化させる事によって、魔力がない世界でも身体能力の向上に成功していました。
美結は頻繁に生命の危機を経験してたみたいだな。日本って世界一安全な国じゃなかったっけ。戦争にでもなったんだろうか。
『なあなあ、美結さんや。なんか生命の危機に頻繁に遭遇してるみたいだけど、日本ってそんなに危険になったん?世界が核の炎につつまれて、モヒカンスタイルの蛮族がヒャッハーしてたりするん?』
「まあ、戦っていれば生命の危機くらいはあるよ、パパ。でも日本は世界的に割と平和な方だよ。都市部にはそんな蛮族いないし。」
都市部にはって事は、それ以外にはいるのかよ!!日本はいつから修羅の国になったんだ・・・。
「ところで、パパのステータスも見せてくれる?パパばっかり見てずるいし。」
『分かった分かった。』
生返事をしながら美結にステータスを見せることを意識すると、あっさりとステータス画面は表示された。
『百戦錬磨』
あらゆる戦いを経験している為、どんな状況でも動揺する事なく全力を出すことができます。精神系状態異常耐性に大きなプラス補正あり。便宜上百戦と書いたが彼女の経験した戦いの数は百どころではない。
一体どれくらい戦ってきたんですかね?この娘は。もう何も言うまい。・・・さて、いよいよヤバそうなスキルだが。
『血祭』
手に伝わる命を断つ感触と流れ出る血潮に酔ってしまいます。敵を倒す毎に精神が高揚し身体能力が向上します。
『戦闘狂』
一度戦闘を開始するとなかなか止めることができません。戦いそのものに喜びを感じます。
『暴走』
戦闘により極度に興奮したり、または、何らかの理由で激怒することで、戦闘に関するありとあらゆる能力が劇的なほどに向上します。但し、気配察知の範囲で動く者が居なくならない限り止まりません。
いやいや。このバトルジャンキーっぷりはなんなの。さっきのクーマもコモンブレイドで倒せたんじゃないか、コレ。
血祭とか字面からしてヤバいとは思ってたが、酔っちゃダメなモノに酔ってるし。
暴走も碌でもない。動く者が居なくならない限り止まりません、って絶対発動させたらダメなやつだ。
美結はどうやら修羅の人になったみたいだが、父親として矯正しないと。・・・いや、出来んのか、これ。
『家族愛』
固い絆で結ばれた家族の愛は全ての逆境を覆す。彼女にとって家族は全てに優先されます。
ん。俺のと少しコメントが違うな。家族は全てに優先される、か。例え暴走状態になったとしても、家族である俺の言う事なら少しは聞いてくれるのかね。
「パパ。装備者弱体化極大とか、不運極大とか、呪われてるのかってくらいデバフがついてるのね。・・・あれ?私がさっき熊を斬った時は、むしろそれまでより身体が軽く感じたけど??」
『それは多分、『家族愛』ってスキルの影響だと思うぞ。家族の愛は全ての逆境を覆す、と書いてあるからな。多分デバフの効果が反転してバフになるんだと思うぞ。家族限定でだけどな。』
そう。コレが多分爺様が言ってた抜け道のうちの一つだ。俺が家族に出会わないと何の意味もないスキルなんだが、ひょっとして日本刀の扱いに慣れすぎている美結とすぐ出会えたのも爺様の差し金のような気がするな。
「・・・なるほど。家族限定か。いいわね。」
そう言って美結は優しい手つきで俺の刀身を撫でてくる。俺が死んだ時って、美結はちょうど反抗期だったから、優しくされるとなんか感慨深いな。
『それはそうとこれからの事だが、ちょっといいか?』
「これから?」
『出会いが衝撃的だったから忘れてるかもしれないが、俺たちは森の奥深くに放り出された状態だ。日本刀の俺はともかく、食料の問題もあるし、美結は特に不味いだろう?俺も耐久力が少ないから鍛治士に修理を頼まないといけないし。だからピオニアの街を目指す。』
「さっきアイテムボックスに収納した熊の肉とか食えそうだけどね?まあ、街を目指すのには異論はないわ。ママと智樹も探したいし。」
クーマの死体はどうしようかと思っていたら、アイテムとしてアイテムボックスに収納できたの既に回収済みだったりする。
『お腹を壊しそうだし、クーマの肉は最終手段にしとけ。じゃあ、行くぞ。』
こうして、俺と美結はIOの世界で数少ない街であるピオニアの街を目指してデネブリスの森を征く事になったのだった。