表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/27

第6話 マイスイートファミリー

 なんで、名前の横にカッコ書きで美結の名前が。

 ・・・まさか美結も転生してキャラクターの中に魂が入ってしまった的な?そうだったとしたら、あの後、あの野生の通り魔に殺されちまったのか??

 ・・・いやいや。ヤツのアゴはしっかりと打ち砕いたはず。

 混乱しながら何かの見間違いじゃないかと、エルフの頭上に改めて視線を向けるのだが・・・


名前:フェイ・ウェイ(北御門 美結)

レベル:1


 表示にはなんら変化はない。というか、カッコ書きじゃない方の名前も見覚えがある。

 俺がIO(アイオー)で使ってた1stキャラだ。黒髪のショートヘアに、長身のスラっとしたスレンダーなボディ。ピンと横に張った長い耳。おそらく間違いない。

 俺がゲームの時に使ってたキャラクターに美結が転生したってことなのか?

 そうこう考えている間に美結と思しきエルフとクーマの死闘は続いていた。クーマの攻撃をギリギリでかわしながら、黒髪のエルフは時折反撃を加えていたが、ダメージを与えているようには見えなかった。

 よく見れば美結?の装備は防具はレザーチェスト、武器は長剣のコモンブレイドと、初期装備のままだ。コモンブレイドはたしか攻撃力10くらいだったか。レベル差があり過ぎるのと初期装備では勝負にならないはずなんだが・・・。

 っと、呑気に見てる場合じゃない。あの娘が本当に美結だとしたら、何をしてでも助ける必要がある。そうじゃなかったとしても助けることによって恩を売って、街に連れて行ってもらえたらいいしな。そう思った俺は、攻防がひと段落して睨み合っていたクーマと美結の間に勢いよく飛び出した。

カサカサ!

「か、刀の化け物??・・・うわ、なんか脚が生えてて気持ち悪っ!動きがアレっぽいし。」

 元気そうな美結?の声が俺の繊細なハートにグサグサ刺さりまくる。いやね。そりゃあ、俺もこの見た目についてはどうかと思うよ?けど、好きでなった訳でもないのにそこまで言わんでも。

 シクシクと心の中で大号泣をする俺。日本刀に転生して以来、心の中で大声だすようになったんだよな。そんなどうでもいい補足をしていたら

「・・・え?この刀、泣いてる??」

 美結?がポツリと呟いた。んん?これはもしかして!!


『念話(家族限定)』

 家族とだけ念話が出来ます。無料通話です。


 念話?が通じるって事はこのエルフ、やっぱり美結か!そう判断すると俺は意識を美結へ向けて話しかけてみた。

『美結!俺だ!パパだ!!』

「えっ!パパなの?へんな爺さんからパパが転生してるとは聞いてたけど・・・。」

 美結もあの爺様に会ったのか。という事はあの後やっぱり美結も死んだ?更に話をしようとした時

「ガアァァアア!」

 今まで沈黙していたクーマが急に雄叫びをあげる。クーマには俺の念話は聞こえないはずなので、たぶん美結が急に一人芝居を始めたように見えて、様子を伺ってたのだろう。意外と可愛げがあるやつかもな。

『美結。話はコイツを片付けてからだ。俺を使え!』

「俺を使えって、錆びてボロボロの刀じゃないの。使い慣れてはいるけど。」

『使い慣れてる?まあ、いい。美結。こんなでも、お前が持ってる剣よりは強いからやってみろ。』

「分かった。やってみる!」

 この会話中にもクーマは美結に攻撃を仕掛けているのだが、美結はその攻撃をことごとくかわしていた。なんか、妙に戦い慣れてないか、美結。

カサカサ。

 再び膠着状態に陥ったのを見計らって、俺は美結の正面まで行き、頭の高さまで刀身を持ち上げて、触手を解除する。そして、落下する俺の柄を美結は見事に掴み、右手を振り上げて襲い掛かろうとしていたクーマの横を一足に駆け抜けると同時に胴を斬り払う。

 肉を切り裂く確かな感触を刀身(からだ)に感じる。日本刀に転生して敵を斬ったの初めてだったが、不思議と嫌悪感は感じない。

「凄い!何だか体が軽いし、力が湧いてくるみたい!」

『このまま一気に倒すぞ!』

 その一撃はクーマを倒すには至らなかったが、深手は負わせたらしく、振り向けばヤツはヨロヨロとふらついていた。それを見た美結は一気に接近すると、上段に構えた俺を容赦なく振り下ろし、袈裟斬りにする。

 右肩から腰横までを斬り裂いたところで、クーマは力尽きたらしく、グオォオっと断末魔をあげて地面に崩れ落ちた。

「やった!この刀、まるで錆びていないみたいに斬れる!」

『やったな!』

 勝利の喜びを分かち合っていると、脳内にチャラ〜ララ〜ララ〜っと厳かな音が響き渡る。どうやらレベルアップしたらしい。どうなったかは後で確認するとして、今は確認したいことがある。

「何か変な音がしたんだけど??」

『多分、レベルアップの音だろう。そんな事よりだ、美結。美結はあの通り魔に殺されてここに来たのか?』

「ああ。あの通り魔ならパパが守ってくれたお陰で、私は無事だったよ。」

 それは良かった。だが・・・

『じゃあ、何でこんなところに居るんだ?パパは神様を名乗る爺様にこんな刀に転生させられたから、ここに居るんだが。』

「パパが亡くなったのは、私が中3の時だったから、大体80年前くらいの話かな。神様?が言うには死んだ時はバラバラでもこの世界でパパが()()()()()と会えるように調整が面倒だったとかぶつぶつ言ってたよ。」

 お、俺が死んだのが80年前?ってことは美結は95まで生きたってことか。長生きだな。って、それより


『な、何だって!マイスイートファミリーがみんなこの世界に来てんの!?』

「・・・私のパパはこんな虫みたいな日本刀じゃなかったはずだけど、こんなに恥ずかしいこと言うのは間違いなくパパだわ。」

 叫ぶ俺を気味が悪いものを見るように距離を取りつつ(投げ捨てやがった!)、ゴミを見るような目で見てくる美結であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ