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第4話 日本刀、大地に立つ!

 俺が日本刀に転生してから、どれくらいの時間が流れたのだろうか。無機物の身体なせいか、どうも時間の感覚が鈍い気がする。薄っすら森の中が明るくなって、真っ暗になってを何回か繰り返しているから、何日かは経っていると思うんだけどな。


 俺がいるらしき『デネブリスの森』はIO(アイオー)でプレイヤーが最初に訪れるステージになるんだが、そのクセに広大なフィールドが用意されていた。

 どれくらい凄いかというと、初心者なら迷子になって遭難するのが当たり前なレベルで、『デネブリスの森』=『迷いの森』と呼ばれていた程だった。

 迷いの森って、よく色んなRPGで登場するイメージがあるが、最序盤のダンジョンがそれというのは中々ないのではないだろうか。

 過去から現在までのあらゆるRPGの最初のダンジョンの中で、1番難易度が高いのではないかと噂をされていた『デネブリスの森』。そんな森の、どうもだいぶ奥地に俺という日本刀は転がっているようでしてね。つまり何が言いたいかというと・・・

 人っ子ひとりも来ませんがな!それどころか、この森の原生生物すら通りかかりませんがな!

 自力じゃ動けないので、俺は転生から数日経った今でも1ミリも移動していないわけで。そんな異世界転生物って世の中にないんじゃないだろうか。

 あまりにも暇なため、その辺に生えている草の葉っぱの数や、視界に映る限りの地面に落ちている石を数え始めた俺は精神的にだいぶ病んでいるのかもしれない。

 気を紛らわせようと久しぶりにステータス画面を開いた俺は、目を疑う事になる。


『ステータス』

名前:北御門 智

種族:日本刀

レベル:1

武器名:錆びた刀

銘:天暦981年 ムラクモ作

状態:錆(重度)

攻撃力:200

強化値:10

耐久力:49/250


 んん?耐久力が、50から49になってる!?何故に?

 耐久力が無くなる=2度目の死だと思われるため、耐久力の減少は死活問題だ。で、まあ。原因を考えてみたんだが・・・

 アレだ。特に言ってなかったかもしれないが、俺は鞘に入っていない。抜き身の状態でジメッとした森の中、湿った草の上にゴロンと転がってるわけだが、それが良くなかったのではないだろうか。

 昔聞いた事がある。金属にも環境次第ではカビが生える事があると。カビが生えた金属は腐食して、その金属そのものがダメになってしまうそうだ。

 つまり、このまま湿った草の上で転がったままになれば、俺は緩やかに死への階段を登ることになる。


 前世では愛娘美結を守ってナイフで刺されて死亡。これはまあ分かる。別な死にたくはなかったが、子供の命を守れたって意味じゃ、意義はある人生だったと思う。

 今世では森の奥深くで1ミリも動けず、カビによる腐食でボロボロになって人知れずに朽ち果てる。いやいや、悲惨な刀生だな。予算(ポイント)はともかく、転生後の場所を街中に出来なかったのかよ。爺様よ。


 いくら愚痴を言っても現実は変わらないわけで。俺はダメ元で気合いを入れて祈ることにしてみた。

 実はこの間,スキル解説欄で爺様と会話した後、こんなスキルが追加されていたのだ。

『祈り』

 心からの祈りは次元すら越えて神界にすら届くことがあります。

【ワシと念話できるようにしたかったが、止められてしもうたので、何とか捻り出したスキルがこれじゃ。ワシからの返事はできないし、必ずしも声が届くわけではないが、無いよりはマシじゃろう。そういえば、この間言い掛けたが、お主のかぞ・・・】


・・・いや、爺様よ。何故気になるところで途切れるし。


『お願いします。爺様以外の神様方。私は前世で娘を守って死んだところを爺様に転生させてもらいました。

 しかし、爺様の手違いで無機物である日本刀に転生してしまい、転生して数日たった今でも1ミリも動くことすらできず、今誰も居ない森林の奥地で朽ち果てようとしています。

 どんなモノでも構いません。恵まれない日本刀である私に移動手段という愛の手を下さい。よろしくお願いします。』


 何しろ葉っぱの数とか、石の数を数えていたくらいには暇なので、ただひたすらに祈りを捧げていく。恵まれない日本刀とかいう訳のわからない言葉はあるけれど。

 これでどこかの神様が憐れむか、爺様が焦ってどうにかしてくれないかなぁと、俺は前世も含めて初めて真剣に神頼みに勤しむのであった。


 そうしてまた数日が経ち、耐久力が49から48になったころ。祈り続けるのにも飽きて、どうにか動けないかともがいていたその時。それは突然訪れる。

 俺の刀身の根元辺りが急にムズムズし出したのだ。日本刀に転生してから初めての感覚に戸惑っていると、ポンっという音がすると共に、ナニカが俺の刀身(からだ)から這い出るの感じた。

 俺は恐る恐るさっきムズムズしていた辺りに視線を向ける。そこにあったのは・・・

 右側に3本、左側に3本、合計6本の白くて細長い脚が刀身の根元から生えていたのだ。

 これ、動くのか?

 前世が人間だった俺は当然6本脚を動かした経験など無い。・・・はずなのだが、何故か動かし方が分かるような気がする。立ちあがろうとするイメージを脚に送るとイメージ通りに脚が動き出す。

 そして、転生以来尻に敷いていた草から刀身がようやく離れた。歓喜!日本刀、大地に立つ!・・・ただし、6本脚で。


 もはや訳の分からない事になった自分の姿には一回意識のフタをして、俺はスキル一覧を覗きこんだ。


スキル一覧

脆弱(錆)、なまくら(錆)、耐久力減少極大(錆)、鑑定、念話(家族限定)、装備者弱体化極大、不運極大、疲労、魂喰い、魅了、全力全壊、食いしばり、家族愛、祈り、触手new、6本脚歩行new


 触手?6本脚歩行?なんか変なの増えてるんですけど!!

 日本刀に触手が生えました。書き始めた時はこんな予定無かったんですけどねぇ?

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